『それにしては、たいそうな奉献物だな。アンテノール、どうだ。どうするかは、皆にはかって決めよう。』
プリアモスについてきた預言者のラオコーンが口を開いた。
『王、この木馬は、トロイにとんでもない災厄を及ぼすと思われます。市内への引き入れは決してなりませんぞ。ギリシア人は奸智にたけた者どもですぞ。油断はいけません!即刻、打ち壊すことが上策と思われます。』 と、言葉を吐いたラオコーンは、手にしていた杖を木馬の胴に向かって投げつけた。木馬の胴はうつろな音を響かせた。これを見ていた王女カッサンドラもラオコーンに同調したのだが、このカッサンドラの言うことには、市民たちは誰も耳を貸さない。彼女の言うことを、あたまから信じないのである。そのようなわけでラオコーンの言うことも、市民たちは、いいかげんに聞いていただけであった。
王をはじめ市民も、この木馬をいぶかしい目で見ていた。
腹胴の中のオデッセウスは、いっときも早いシノンの登場を念じた。
そんなとき一隊の将兵に捕らわれて、引き立てられて来る一人の男がいた。
プリアモスについてきた預言者のラオコーンが口を開いた。
『王、この木馬は、トロイにとんでもない災厄を及ぼすと思われます。市内への引き入れは決してなりませんぞ。ギリシア人は奸智にたけた者どもですぞ。油断はいけません!即刻、打ち壊すことが上策と思われます。』 と、言葉を吐いたラオコーンは、手にしていた杖を木馬の胴に向かって投げつけた。木馬の胴はうつろな音を響かせた。これを見ていた王女カッサンドラもラオコーンに同調したのだが、このカッサンドラの言うことには、市民たちは誰も耳を貸さない。彼女の言うことを、あたまから信じないのである。そのようなわけでラオコーンの言うことも、市民たちは、いいかげんに聞いていただけであった。
王をはじめ市民も、この木馬をいぶかしい目で見ていた。
腹胴の中のオデッセウスは、いっときも早いシノンの登場を念じた。
そんなとき一隊の将兵に捕らわれて、引き立てられて来る一人の男がいた。
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