第２章 トラキアへ ３７５

　大歓声がおさまり、本題の打ち合わせにはいった。このことについてはオロンテスが、詳しく話し手順を説明した。それに基づいて、イリオネスが責任者を決めて役務の説明をした。
　『おい、皆、理解したな。以上だ。しっかりやってくれ！なお仕事は、昼を終えたら早速取り掛かってくれ。倉庫に積み込んだアーモンドの真ん中が煮えるのではないかと思われるほどに熱くなっている。いいな、判ったか』
　『おうっ！』　全員しっかり返事を返した。
　『それから、ひとつ、申し伝えておく。明日、昼には、アーモンド収穫の慰労会を開く。いいな。浜、集落、砦の者たち全員が参加して行う。総責任者は、浜頭のトリタス、そして、この俺だ。アレテス、ギアス、そして、浜衆のダナンが現場の責任者だ、頼むぞ。皆が腹の底から喜んでもらえるように気を配ってやってくれ、以上だ。皆、ご苦労であった。解散する』
　このあと、イリオネス、パリヌルス、アレテス、そして浜衆三人で話し合って、収穫したアーモンドを分けた。トリタスは思ったより多い自分たちの取り分に感謝した。
　北部エーゲ海を照らす晩夏の太陽は、まだ陽射しの強さを緩めることなく大地を焼いていた。