『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第6章 クレタ ４６

　『パリヌルス、島の様子はどんな具合だ。船が４，５隻見えているが、、、。ギアス、もっと島へ近づけろ！それから、島の裏側も見てみたい、いいな』
　ギアスは、イリオネスの指示どうりに舟艇を走らせた。
　船が舫っている浜辺に人影が見える、その者たちがこちらの船に目を凝らしている様が見受けられた。
　ギアスは、島の裏側をも確かめるために島を通り過ぎてから舳先を浜方向へと向けた。島の裏側にも船が舫っていた。こちらは3隻である、人影は見当たらなかった。今日のような穏やかな日の日中には海賊は活動しない。するとすれば荒れた日が活動の日なのである。彼らの狙いは交易船であって漁船は稼ぎの対象ではない。だが、彼らはときには浜辺の集落を襲うのである。狙いは、穀物、畑の作物、羊、そして、女性である。
　ギアスは上陸すべく舟艇を島の対岸に位置する浜に向けた。彼は舟艇のセンターのボードをひきぬき、指示を飛ばした。
　『艇を浜へ乗り上げるのだ！者ども、きばれっ！』
　『次っ！飛び降りて配置につけっ！』　
　『おうっ！』『おうっ！』
　彼らは、づぶとい返事を残して飛び降りた。舟艇の周りに立つ、すかさず、攻撃に対応できるように身構え、右手を帯剣の柄にかけて立った。
　ギアスがアヱネアスに声をかけた。
　『統領、大丈夫です』
　余分な言葉はない、イリオネス、パリヌルス、オキテスが降りる、、三人もそれぞれに目を配る、辺り一帯の安全を確かめた。