第２章 トラキアへ ６０

　ラミドトスは、出航前に打ち合わせておきたい用件について、前置き無しでテラキスに話しかけた。
　『テラキス、敵の兵数、誰が指揮しているか、名のある奴か。また、ポリメストルの持っている兵数はどれだけか。』
　『敵の兵数は、２００ぐらいの筈です。上陸戦でかなりの兵を失っています。その残りの兵です。また、統率している者については不明です。いずれにしても、トロイの落ち武者どもです。名のある武将ではないと思います。上陸戦では、敵の兵数が我々の兵数より多くほぼ全滅のに近い損害で負けました。我々が現在持っている兵に加勢してくれる兵を加えて、２００と言ったところです。ラミドトス領主様の兵数は如何ほどでしょうか。』
　『我々の兵数は、２００余りだ。すると、兵の総数は４００か。２対１だな、ひともみすれば終わるな。我々にとって、帰りがけの駄賃か。まあ～、いいだろう。では出航するとするか。テラキス、同伴している者たちを呼べ、直ぐ出るぞ！風は南から来ている、そよ風だ。夕方までに、お前らの浜に着く。浜のどこにつけるか、水先案内をしてくれ。細かな作戦は、向こうに着いてから、お前の領主と打ち合わせよう。では急ごう。』