トロイの船舶の係留地に向かうヘレノス、カピュスの率いる一団は、イーダ山の山裾の道を、暗闇を見透かしながら速足で歩を進めていた。歩速がおそくなる、それに気付く、歩速を速める、また、おそくなる、気付く、速めるを繰り返しながらの速足であった。
道は、10年も続いた戦いによって、踏みならされた林の中の小道を、彼らは、二列で進んでいる。灌木が繁り、アーモンドの木も葉を繁らしている、木々の間から見上げる空には、星がまたたき、燃え盛るトロイは、その上天を真っ赤に焼いていた。
闇の道をたどる市民たちの心情は、脱出の心意気とは、うらはらに、落人としての切なさが渦を巻き、追われる恐怖にもおののく心中の葛藤にさいなまれていた。
道は、10年も続いた戦いによって、踏みならされた林の中の小道を、彼らは、二列で進んでいる。灌木が繁り、アーモンドの木も葉を繁らしている、木々の間から見上げる空には、星がまたたき、燃え盛るトロイは、その上天を真っ赤に焼いていた。
闇の道をたどる市民たちの心情は、脱出の心意気とは、うらはらに、落人としての切なさが渦を巻き、追われる恐怖にもおののく心中の葛藤にさいなまれていた。
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