『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1164

2017-11-16 12:08:39 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『エドモン浜頭殿、テムノス浜頭殿、皆さん、ご苦労でした。無事にマリアに着港しました。今日のこれからをどのようにするかを打ち合わせいたしたく思います』
 エドモン浜頭が応じてくる。
 『イリオネス殿、ご苦労でした。なかなか乗り心地のいい船でした。考えさせられることが多々ありますな。操船もしやすく、いい走りの船です。今日のこれからの予定ですが、集散所のほうも昼食どきです。我々も昼といきませんか、船に乗り組んでいた漕ぎかた連中も一緒に昼としましょう。私らの特別は考えられないでよろしいです。一同でやりましょう』
 『そうですか、それでいいですかな。心遣いいただいてありがとうございます』
 『それでいいのです。昼食の準備は、私が案内いたします。全員一緒に行きましょう。そのように手配りしてください』
 『解りました』
 イリオネスはオキテスのほうへ体を向ける。
 『オキテス隊長、話は聞いていたな。そういうことだ。全員一緒に集散所へ行く。一同の引率はスダヌス浜頭に頼むとして、オキテス、ギアス、ゴッカス、そして、俺、ほかに四、五人を連れてエドモン浜頭と一緒に行くとする。そのように手配を頼む』
 『エドモン浜頭、少々待ってください』
 『おう、承知!ところでだな。新舵の構造についての説明を昼食の折にでも聞きたいと考えている』
 『了解いたしました。操船担当のゴッカスに説明させます』
 『おう、そうしてくれるか、ありがとう』
 イリオネスは傍らにいるゴッカスに耳打ちをする。
 『おう、ゴッカス、頼みだ。昼食を済ませたらエドモン浜頭殿に、そして、浜頭の皆さんに新舵の構造とその期待効果について説明してくれ』
 『はい、解りました』
 ゴッカスは指示されたことを二つ返事で引き受けた。
 エドモン浜頭は、イリオネスらの仕事を成功させてやりたいとイラクリオンからの船の走りを体感して感じた。そこでまずそれにはと考えた。
 エドモン浜頭は、テムノス浜頭と計って、集散所との折衝の有利な展開計画を練りあげようとしている。
 集散所で話を進める前に知っておくべきことを知っておきたいと心を固めたのである。
 
 船の留守役を残して漕ぎかたら全員が集まる、エドモン浜頭に準備が整ったことを伝える。
 『イリオネス殿、行きましょう』
 一行が集散所へと歩を向ける、浜頭連中とイリオネスが先頭にたって話を交わしながら歩を進めた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FRIM TROY   第7章  築砦  1163

2017-11-15 15:17:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスが操船を担当した者と漕ぎかた一同に向けて声をかける。 
 『おう、諸君!ご苦労であった。無事、マリアの港に到着した。今日と明日、この係留岸壁での停泊となる。係留中は指示待機態勢でいてくれ。ゴッカス、この旨をギアスに伝えておいてくれ』
 『はい、解りました』
 ゴッカスが応える、イリオネスが話を続ける。
 『このあとは、オキテス隊長と俺とは、集散所との挨拶、折衝業務にあたる。それから、ゴッカス、昼食の件についてはオキテス隊長の指示に従ってくれ。なお、この件についてはギアスとともにあたってくれ、以上だ』
 『解りました』
 ゴッカスは、イリオネスの言葉にうなずき、オキテスに歩みよる。
 『オキテス隊長、このあとの段取りはどのように?』
 『おう、そうだな、軍団長とはまだ具体的な段取りをしていない。とりあえず、ギアスとカイクスを呼んできてくれ。グッダスも打ち合わせに同席させろ』
 『はい!解りました』
 『俺は軍団長と浜頭連中との打ち合わせに行く。そのあとに君ら四人と段取りを打ち合わせる。いいな』
 オキテスはゴッカスにそのように言い渡して場を離れていく。イリオネスが待っていた。
 『おう、オキテス、浜頭連中とこれからについて打ち合わせる。行くぞ』
 浜頭連中は、イラクリオンから速い船足でマリアの港についた試作戦闘艇を綿密に視ている、スダヌスが説明している。2本の帆柱、2段帆については詳しく説明に及んでいるが、新舵構造の説明についてはできないでいる。
 『新舵については、私はお手上げです。あとからゴッカスに説明させます』
 エドモン浜頭が口を開いて聞いてくる。
 『俺が頭をかしげたひとつにだな、これまでの船に比べて疑問視しているのは、波割りと船が引く航跡が、これまでの船と少々違っているように思われることだ。また、2本の帆柱、4枚の帆、あれは操船作業がやりやすいと思ったな。また、あれが走行の安定性に関係していると感じた。テムノス、買い求めた船はどうだ?』
 『2本帆柱、4枚帆については、言われる通り、操船作業はやりやすいとウチの水夫らは言っています』
 『そうか。しかしだな新舵なるもの、あれはいい、俺の感じた使用感は感動ものだったな』
 『そうですか。俺も一度あれを使っての操船を見たが、手にとっての操舵は、まだやっていない。明日にでも、あの後続してきた船でやってみる』
 彼らは、いろいろ言い交わしながら艇より浜に降り立つ、浜にいるイリオネスとオキテスのところに歩み寄る。
 イリオネスが声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1162

2017-11-14 08:25:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ゴッカス、了解した』
 オキテスが応じる、イリオネスに伝える、イリオネスがエドモン、テムノスの両浜頭にその旨を伝える。
 エドモン浜頭が口を開く。
 『おう、予定していたよりも早くマリアに到着するか、それは重畳!イリオネス殿』
 『そうですな、浜頭!』
 テムノスが応じる。艇は転進して東南に向かって、風に押されて波を蹴立てている。
 彼らは右手方向に見えるアニッサラスの岬を眺める、あらためて、目を進行方向に移す。
 はるかにマリアの街邑を視野に入れた。アニッサラスの岬からマリアへは、35スタジオンくらい(7キロ余り)である。
 ゴッカスが空模様、風の具合、海上状況を確かめる、艇は東南方向に進んでいる、風は右手斜め後方からに変わっている、帆に受ける風力の衰えは少ないように感じられる。
 艇は速度を落とすことなく進んでいる、舳先の波割り状態をチエックする、櫂漕ぎはどのあたりからと思案する、その答えを出さぬまま、艇の進み具合の感知に神経をとがらせた。
 艇は快調に進みマリアに近づいていく、マリアへあと5スタジオンくらいまでに到達した。
 ゴッカスがグッダスを呼ぶ、操舵しているイグデスに伝える連絡事項を述べる。
 『艇は、帆を下ろして、櫂漕ぎをする。急いで伝えてくれ!』
 ゴッカスの指示が飛ぶ。
 『帆を下ろせ!半帆航走開始!』『漕ぎかた開始!』
 『おうっ!』と返事が返って艇は漕走に移行する。
 ゴッカスが艇尾の操舵席に移る、イグデスと係留岸壁までの船速について打ち合わせる。
 続けて距離、船速、タイミングを計りながら指示を出していく、係留岸壁に残すところ1スタジオンくらいに接近する。
 『帆を下ろせ!』『漕ぎかた!そのまま漕ぎ続けよ!』
 慎重走行に注意を集中させている、漕ぎかたに櫂を操作しての船速制御の指示をする。
 操舵するイグデスとは、互いの呼吸があっている、櫂操作で係留岸壁に無事に着けた。傍らにいるスダヌスにゴッカスが声をかける。
 『スダヌス浜頭、何とかうまくいったようです』
 『そのようだ。重畳!』
 イグデスは操舵棒をグッダスに引き継いだ。グッダスがイグデスに声をかける。
 『イグデス殿、この新舵、はじめてにしては、うまく操舵してくれました。上々でした、ありがとう』
 『そうでしたか、ありがとう』
 二人は言葉を交わして手を握り合った。
 ゴッカスは後続していたギアスのヘルメス艇も係留岸壁にうまくつけていることを確認した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1161

2017-11-13 08:29:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテス、そして、エドモン浜頭、スダヌス、グッダスらは、イグデスの舵操作を見つめる。
 操舵棒を握ったイグデスは、ゆっくりスローペースで大きく、ジグザグ走行の操舵を行う。操作感覚をつかむイグデス、艇は、左右に舳先を振って波を割って進んだ。
 イグデスが父親のエドモン浜頭に声をかける。
 『おうっ!親父!これはなかなかいい具合だ。この舵は、操作に的確に応じてくれる。櫂舵の操作効果を超えている』
 『そうか、イグデス!俺も操舵をやってみる。交替する』
 エドモン浜頭が帆柱を仰ぎ見る。風と帆の風ハラミ具合、艇の走行速度を確かめる。
 『いい風ハラミ、いい走りだ』とひとりごちて、操舵棒を操作し始める。
 まず、小さなジグザグ走行である、速度に合致させる操作で走り具合、操舵感覚を認識する。
 イグデスが試みたジグザグよりさらに大きく遊弋するといった感じで艇を走らせる、走行フイリングを確かめた。
 意識せずして喉をついて出てくる声。
 『おうっ!これは感動もんだ!遊弋が楽しめる!』
 彼は、沿岸の風景に目を移し走行の東進を確かめる。
 『おう、イグデス。充分に操舵の感覚と走りを確かめた。操舵を変わるぞ!このあとマリアの係留岸壁まで、お前が操舵していけ。いいな』と言って、再び帆柱を仰ぎ見て、帆の風ハラミ具合と船速を確かめた。
 エドモン浜頭が操舵席を離れる、オキテスに言葉をかける。
 『おう、オキテス隊長、この船は、いいフイリングで遊弋が楽しめる。いい乗り心地であった。いい船にできている。お前と俺がここにいたのでは艇尾が重い、前席に行こう』
 二人は、スダヌスとイグデスを操舵席に残して前席に戻った。
 ゴッカスが艇尾に来る。
 『スダヌス浜頭、イラクリオンを出て、まだ、一刻は経ちませんが、あの岬の向こうに陸地が見えませんが』
 『おう、イグデス!お前、気がついているのか?』
 『あっ!アニッサラスの岬ですな。スダヌス浜頭、転進地点です。もう、ここまで来たのか、船速が速い!ゴッカス殿、スダヌス浜頭、転進します』
 『了解!』『解った』と二人が応える。
 『通常の船ならばあと半刻というところですが、この船の速さなら、半刻かからずにマリアの係留岸壁に着きます。前席の皆さんにそのことを伝えていただけませんか。私は転進と航走に注力します』
 『おう、ゴッカス、まもなく転進する。ここから終着地点まで俺とイグデスに任せておいてくれ。ゴッカス一同にイグデスの言ったことを伝えてくれ。転進は、きっちり東南に向かう、マリアへ直行する。以上だ』
 『では、スダヌス浜頭、よろしく頼みます』
 『おうっ!』
 ゴッカスはとってかえして前席へ向かう、艇が東南方向に転進してマリアへ直行する旨をオキテスに伝えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1160

2017-11-10 08:41:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭は、そのように結論する、振り向いてイリオネスに声をかけた。
 『イリオネス殿、船が転進して快調な走りでマリアを目指しています。よくできた船といえますな、感心しています。この風具合にしては船足が速い、走りの安定性もいいように感じますな。テムノス浜頭が話した事実を体感しています』
 『そうですか。ちょっと褒められたと受けてよろしいですかな』
 『そうです、その通りです。テムノス浜頭から聞いているのですが、この船は、これまでの櫂舵に代わる新しい舵構造となっていると耳にしています。ぜひ操舵してみたい、よろしいですかな』
 『それは、ぜひ試みてみてもらいたいと思っています』
 『そうですか、その手配りよろしく願います。ところで、マリアにおける、この二艇の係留の件ですが、同乗しているイグデスが案内します。それでよろしいですかな。当方のイグデスの操舵によって係留岸壁につけます。その操船の許可を願いたいのですが、よろしいですかな?』
 『そうですか、それは願ってもないことです。そのように取り計らっていただけますか、ありがとうございます。その件、了解いたしました』
 二人は目を合わせて、手を握り合った。
 イリオネスは、この件をオキテスと打ち合わせる。
 エドモン浜頭は、テムノス、スダヌスに伝え、イグデスとこの件を打ち合わせた。
 一行の乗る二艇は、クレタ海をいい風を帆にはらみ、順調に東へと航走している。
 オキテスがこの件の実行のタイミングを計って対処する。
 艇尾の操舵席にエドモン浜頭、イグデス、スダヌス浜頭を先導していく、操舵担当のグッダスの五人が艇尾で顔を合わせる。
 オキテスがエドモン浜頭に声をかける。
 『エドモン浜頭殿、当方の操舵を担当しているグッダスが操舵をやります。それを見てください!舵の切れ具合が櫂舵とは少しばかり違います。水切りの効果の切れが向上しています。その感覚を感じ取ってください』
 『おうっ!』
 オキテスがグッダスに指示する。
 『グッダス、やや大きくジグザグ走行をやってみてくれ』
 『解りました』
 グッダスが姿勢を改めて操舵棒を握る、右方向へ振っていく、艇尾の右舷が少しばかりせりあがる、左舷が少し沈む、艇尾が右方向へ振れていく、艇首が左方向に向かって切れていく。
 エドモン浜頭が声をあげる。
 『ほっほう!』
 艇の進行方向を舵操作でまっすぐに戻す。
 『次は、艇首を右方向へ向けます』と言って、グッダスは操舵棒を左に振る、艇尾が左に振れる、艇首が右方向へと向かう。
 エドモン浜頭がイグデスに声をかける。
 『おう、理解した。イグデス、解ったな!』
 『はい!理解しました。オキテス隊長、操舵を変わります。よろしく願います』
 『はい、操舵よろしく願います。また、係留の件よろしく願います』
 オキテスは、グッダスに声をかける。グッダスは操舵をイグデスに託す。
 『グッダス、お前は操舵席にいてくれ、係留のことがある』
 『はい、解りました』
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1159

2017-11-09 08:40:22 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今日の凪が終わろうとしている、風が立ってきている、海も波立ってきている。
 風に艇を押す力は?オキテスがゴッカスと目でもって話し合う。
 一行が乗っている二艇は、沿岸を離れること4スタジオンくらいの洋上を北東に向かって進んでいる。
 ゴッカスは、オキテスと方向転換地点と帆張りの打ち合わせをする。
 『オキテス隊長、あと1スタジオンくらい沖に出ます。その地点で艇をを東に向けて進めようと考えていますが』
 『おう、いいだろう!』
 ゴッカスは、操舵担当のグッダスに操船の段取りを伝える。
 『その地点で東へ転進、帆張りして帆走に移る!いいな』
 『了解しました』
 程なく転進地点に到達する。迷うことなく艇は転進する、いい風がき始めている、ゴッカスは断を下す、指示する。
 『帆張りせよ!』
 2本の帆柱に帆が広がる、すかさず風をはらむ、艇が加速する、波を割る、しぶきが風に舞った。
 ゴッカスが帆の風のはらみ具合を確かめる、うなずく。
 『漕ぎかた、やめっ!櫂を上げっ!』
 ゴッカスが後続のヘルメス艇に目をやる、ヘルメスの帆走状態を見て取る、二艇が波を蹴立てて走る、いい風景がそこにあった。
 艇の前席に座しているエドモン浜頭が、乗り組んでいる者らの操船を注意深く観察している。それに伴う船の走りに並みならぬ関心を以って見ている、また、乗り組んでいる者らの操船の練度も感じ取っていた。
 大きい横帆1枚の船と2本帆柱4枚帆の船の走りがどう違うのかを感じ取ろうと努めている。エドモン自身が有する船なるものの知識でもって、これらの状況を解析している。
 今、自分の乗っているこの船には、2本の帆柱に4枚の梯形の帆、それも上段の帆が下段の帆に比べてやや小さい。それに比べ従来の船は、1本の帆柱に1枚の四角のでっかい横帆、風をはらむと逆さ梯形を呈する、エドモンの考える大きな課題である。
 彼は考える、難題である。
 それが船体の船幅と関係して、いきつくところは船速ではないかと考えた。また、船の走行安定性に関するであろうと判断して、これらの構造の向かう先の未来を頭中に考え浮かべた。
 エドモンは内心で思った、『彼らは、確実に先を行っている』であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1158

2017-11-08 07:54:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『実物を、いま、お前の言った視点といおうか、観点からよく観察する。これで彼らが造っている船の事、彼らの将来を見ての方向性、使用者の方から見ての船の有為性について考える。あとは取り扱い集散所から見た価格の件、この船を求める使用者側から見た価格、この両者側にスタンスして妥当な価格はどうあるべきかかだな』
 『そうですね。言われる通りです』
 『それらについて話し合う。その時と場を作って討議、検討することにする。それでその必要性、要求性に適合させなければ、多くの人にその船の存在を知られるようにはならない。また、売れもしない。売れなければ船を造る事業が成り立たない。以上だ。これで話は一段落とする』
 『よく解りました。話を進める場つくりと段取りをします』
 『テムノス、その件よろしく手配を頼む。もうそろそろ、出航の頃合いだ。イリオネス殿らも待っていると思う。イグデス、お前も一緒に来い!』
 エドモンは、場を見廻す。
 『イグデス、みんなの杯に酒を注いでくれ!』
 彼ら四人は、話の締めくくりと出立ちの意志きめの一杯をあおり飲んで立ちあがる。テムノスは、半年後に的中する予感を胸の奥に秘して立ちあがった。
 エドモンが一同に声をかける。
 『行こう!』
 彼らは、イリオネスらが出航の準備を整えて待っている浜へと歩を進める。イリオネスはオキテスと今日の諸事の打ち合わせを終えて、エドモンらの姿の見えるのを待っている。
 太陽の位置は、まだ高みには至ってはいない。今様時間で9時ごろかなと思われる。四人が浜に姿を見せる。
 エドモン浜頭が声をかけてくる。
 『やあ~、イリオネス殿、待たせましたな。もう、よろしいですかな?』
 『はい!出航の準備はできています。すぐ、出航できます。どうぞ、艇へ案内いたします』
 彼ら四人を試作戦闘艇へと先導していく、乗艇する四人、四人はイリオネスに導かれて、艇にしつらえられている乗艇者用の席に座す。イリオネスは、前席の間の場に身を置き指示待機の体制でいる。 
 漕ぎ座には、漕ぎかた全員がすでに座に就き、操舵位置には担当のグッダス、全部帆柱部にはゴッカスが就いている。
 オキテスがイリオネスと出航を打ち合わせる。イリオネスがエドモン浜頭に出航を告げる。
 『エドモン浜頭殿、出航します』
 『おうっ!』
 返事を受けて、オキテスに告げる。
 『おう、オキテス、出航してくれ!』
 オキテスがゴッカスに出航のサインを送る。
 漕ぎかた全員を見廻す、声をあげるゴッカス。
 『漕ぎかたいいか!漕ぎかたはじめ!』
 試作戦闘艇が凪いでいる海を泡立てる、ギアスが指揮するヘルメス艇が続いて泡立てる、2艇が海面を割って進む、沖へと進んでいく。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1157

2017-11-07 07:07:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『よし、心得た!テムノス、君と俺だが、彼らに手を貸す、手伝ってやるとすればだが、集散所側の事情も聴いたうえで、どのようなスタンスで手伝ってやるかを話し合おう』
 『解りました』
 『君とスダヌス、両人の話を聞いて、彼らが造った船の事、そして、彼らの営業姿勢を知ることができた。それが実像であるかないかはほぼ察しがつく。テムノス浜頭、君の考えを話してくれ』
 『私の考えとしては、レテムノンからこちらへ来るとき、船上でスダヌスと話し合ったことについて話します』
 『おう、いいだろう。二人のまとめた意見として聞き止める。それでよいな』
 『はい、それでいいです。こちらへ向かう途上で話し合った件は、これから話す三点です。まず一番目は、彼らが建造している船舶は、中型船であり、これを取り扱う集散所がどこが最適かについて話し合いました。状況、条件等を検討した結果、浜頭と私が関係しているマリアの集散所、然り、スダヌスが関係しているキドニアの集散所が、いいのではないかと結論しています。もちろん、私らがかかわる将来を展望したうえでです』
 『おう、お前の言うことにうなずける。クノッソスの集散所を含めて他の集散所はふさわしいとは考えられない』
 『二番目に話し合ったことは、建造している船の船種といいますか、船の大きさの件です。スダヌスの言う、アエネアス方の建造技術とその規模から考えて、中型の船舶を造るところであると船種を限定して建造に注力したほうがいいと結論付けています。これについては、エドモン浜頭から、造船するところとして、アエネアス方に方向付けをしていただきたい件です』
 『ほう、そういったところまで、二人で話し合ったのか、お前らも大したもんだ』
 三人は、目を合わせてうなずき合った。
 『次に話し合ったのが、彼らの持っている技術力とその将来性です。今日、浜頭が乗ってマリアに向かう船ですが、その点についてよく観察していただければいいと考えています。その船は中型船であり、2本の帆柱に2段帆4枚構成の構造となっています。それから、従来の櫂舵に代わる新しい舵構造としているところです。また、中型船としては他にみられない船体構造としています。私も目からウロコがはがれる思いでこれを見て、操船をやり、その走りを体感したわけです』
 『テムノス、お前、なかなかの説得力だな。船についての話、よく解った』
 エドモン浜頭は、テムノスの話を聞いて、うなずき、納得した態度を示した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1156

2017-11-06 06:46:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 その頃、エドモン浜頭の館では、エドモン、テムノス、スダヌスの三人の浜頭が朝食のパンをほおばりながら話し合っている。
 エドモン浜頭が口を開いて言う。
 『テムノス浜頭、スダヌス浜頭、こういってなんだが、俺は、この話に皆目 通じていない。順序立てて聞いていく。まず、スダヌス浜頭に聞きたい』と言って、スダヌスと目を合わせる。
 『おう、スダヌス、お前はキドニアにいるわけだ。この件に関してのことを解りやすく話してほしい』
 一瞬の間をおいて、言葉を継ぐ。
 『イリオネス殿、いや、アエネアス殿方の船舶の建造の状況に詳しいと思う。話してみてくれ』
 『解りました』
 スダヌスは、アエネアス、イリオネス、そして、船舶の建造に詳しいパリヌルス、ドックスらが建造した新艇5艇の営業を担当したオキテス、オロンテスらとの関わり合いとその結果について話した。
 建造した新艇5艇の売り先について話し、その5艇のウチの2艇の販売先である、テムノス殿、パキオテ殿の件について話した。
 その詳細を聞いたエドモン浜頭は、大きくうなずいて、テムノス浜頭に話しかけた。
 『テムノス浜頭、いま、スダヌスから聞いた、その船の使い勝手は、いいかどうか、どのような具合かな?聞かせてほしい。なぜなら、船を建造する技術、要するにだ、建造するについての考え方の先進性、船の頑丈さがいかがなもんか。また、使用するについて、船の操船性、海上における走行性については、安定性、船足の速さといったところかな。それらについて、同格の船と比較して話してほしい』
 『解りました』とうなずいて、テムノスはそれらの点について購入の意思決定から、使用しての状況、取引に関するアエネアス方の対応に到るまでを購入者として、そして、使用者としての見地から話した。
 『はう、そうか。船を造る者として、また、造った船を納める者としての姿勢、態度として、ほぼ満点に近い評価が、テムノス浜頭としてできるかな?』
 『それについては、これからといった分もありますが、まずまずといった評価ができるのではないかと考えられます』
 『そういった評価か。アエネアス方もテムノス浜頭から、いい評価をもらったというわけだ』
 『エドモン浜頭、今日、その船に乗ってマリアへ行かれるわけです。船をよ~く観察してください』
 『おう、よく解った。俺たちが船の買い手に推薦できるか、どうかをだな、それを考える。そして、この仕事をするか、しないかの心ぎめを話し合おう』
 エドモン浜頭は、二人の顔を覗き込むような目つきでじい~っと見つめた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1155

2017-11-03 08:57:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 朝行事を終えた者らが海からあがってくる、射しかける陽の光、ささやかな風に肌の乾かしをゆだねる。
 イリオネスが浜に立っている、彼らが寄ってくる、顔が合う、朝の挨拶言葉を交わす。
 『おはようございます。いい朝です!』
 目を合わせて返事を返す。
 『おう、おはよう。いい朝だ!』
 イリオネスに朝挨拶を声掛けして囲んで立つ、彼は、彼らの健康状態をそれとなくチエックする。
 『おう、お前ら、なんだ、起っていないで座れ!朝めしにするか』
 『オキテス、朝めしにする。手配を頼む』
 『ギアス、ゴッカス、朝めしにする!支度を頼む』
 『はいっ!』
 ニューキドニアの浜を出て、三日目の朝である。朝食用のパンは、オロンテスの気配りで固めに焼かれているパンである。
 一同に配られる、受け取る、噛みつく、固いパンには、しっとり感がない、パサつく、ぶどう酒で胃に流し込む、彼らは腹が減っている、空腹には何を食べてもうまく感じる、空腹は、パンの味の引き立て役をかっている。
 『おい、オキテス、これは致し方ないか』
 『そういうことですな』
 『ギアスとゴッカスからパンの保有状況を聴きとって、昼めしと夕食、そして、明朝の朝めしの対策を考える。いいな』
 『解りました』
 オキテスは、ギアスとゴッカスを呼び、パンの保有状況を聴きとりイリオネスと打ち合わせる。
 『軍団長、二人からパンの保有状況を聴きとりました。場所を変えて打ち合わせましょう』
 『おうっ!』
 二人は場を離れて波打ち際に立つ。
 『パン及び堅パンの総数ですが、2艇に積んでいる総数です。パンが50個あまり、堅パンが60ケースくらいです。堅パンは手土産分を含めての数です』
 『あらかじめ予定通りというところか。昼と夕食は集散所でということにする。昼めしは、オキテス、お前が配慮してくれ。客人も我々も同一で考えてくれ。夕食はスダヌスに相談して客人用は考えるとして、我々の分はそれに準じて配慮する。明日の朝めしについては、平常の朝めしの要領で調達してくれ。これは、お前とギアス、ゴッカスと相談して決める。それから、今夜の宿営のことだが、マリアの集散所に聞いて手配を考える。以上だ』
 『了解いたしました。相談事がある場合は、その都度たずねるということでいいですね』
 『おう、それでいい』
 『私は、ギアスとゴッカスに出航準備の指示をしてきます』
 『それをしたら、今日の集散所での作業要領の打ち合わせをする』
 『解りました』
 オキテスは、ギアスとゴッカスに声をかけて、艇を係留している波打ち際に向けて歩を進めた。