『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1154

2017-11-02 07:58:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭が穏やかに笑みを湛えながら一同と目を合わせ声をかける。
 『皆さん!杯をお待ちください。今日は、皆さんをお客様としてお迎えしました。皆さんの達者と元気に、乾杯っ!』
 一同がそろって、酒が満たされた杯をさしあげる、口へと運ぶ一気に飲み干す。
 テムノスがイグデスに声をかける。
 『イグデス殿、皆さんの杯に酒を注いでくださらぬかな』
 イグデスが一同の杯に酒を注ぐ。
 テムノスが口を開く。
 『エドモン浜頭殿の達者と元気に、乾杯っ!』
 『乾杯っ!』
 一同が唱和する。杯の酒を一気に飲み干す。
 『お~お、テムノス、そして、皆さん、ありがとう』
 エドモンが礼を述べる、夕食会が始まる、言葉を継ぐ。
 『肴が程よく焼けています。どうぞ、召し上がってください』
 焼きあがった串刺しの羊肉を手に取る、適当に塩を振る、口に運ぶ、動作が同調している、一斉に言葉がほとばしる。
 『お~っ!うまいっ!』
 舌つづみを打ちながら、肴を口に運ぶ、酒を飲む、一同が飲む食べるに専念する。
 エドモン浜頭が最近のクノッソスについて話す、テムノスがレテムノンの近況を話す、スダヌスが商売事情を話す、イリオネスは、ただひたすらに耳を傾けて聞き手となる。
 イリオネスの頭中には、明日の状況想像と対処のことが駆け巡っている。
 夕食会の時はゆったりと過ぎて終わろうとしている。夕食会の終了を乾杯で締めくくる。
 テムノスが客代表として、エドモン浜頭に礼を述べる。 
 『エドモン浜頭殿、おいしい酒肴、たいへん馳走になりました。ありがとうございました』
 三人がテムノスに続いて丁寧に低頭をする。
 テムノスとスダヌスがエドモンの館に残り、イリオネスとオキテスは、彼らの一行が宿営する浜小屋へと引きあげていった。

 イリオネスらの一行がイラクリオンの朝を迎える。
 天気は晴朗、東の水平線が金色に輝く、昇陽の時となる。
 北の方角にディア島をのぞみ、水平線を破って昇る太陽との間にはさえぎる何物もない、朝行事で海中に身をおく彼ら全員が大日輪を目にする。
 彼らは、大日輪を遥拝する、大きく手を広げ目を大きく開け見つめる者、目を半眼に閉じてか~るく低頭する者、太陽に向かって目を軽く閉じている者。
 太陽に対峙する姿カタチはさまざまながら、祈りの力を信じる者らがいる、イリオネスの姿もそこにあった。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1153

2017-11-01 08:20:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テムノスは、エドモン浜頭の館にとどまる、イリオネスら三人は艇を係留している浜に戻る。
 『軍団長、話がうまくまとまったといった感じですが、あれでよかったのですか?』
 『そうだな、予期していなかった状況に話がまとまった。俺も、今、考え中だ』
 スダヌスが話しかけてくる。
 『軍団長、話はいい状況にまとまったと考えてよろしいですな。あの二人の立場で事を運ぶ、集散所での話はうまくいきます。安心されて大丈夫です』
 『なあ~、オキテス、俺の懸念だ。このような話、結果を見るまでは不安はつきものだ』
 『軍団長、局面、局面で最善を尽くす、そして、結果を待つ。心中では、事は成ったと確信する、信じて疑わない。これでいきましょう』
 『おう、解った。オキテス、一同を集めてくれ。明日のスケジュールを話しておく』
 『ギアス、ゴッカス、一同、招集だ』
 『はいっ!』
 一同がこの時を待っていたように間をおくことなく瞬時に集まる。イリオネスを中に全員が円陣を組む、一同を見回す、目を合わせる、口を開く。
 『おう、一同!今日はご苦労であった。長途の航海を無事に乗り切った。それにしても、いい天候、いい風に恵まれて、艇の走りが快調であった』
 イリオネスが航海感想を述べる。言葉を継ぐ。、
 『ところで、明日の予定を一同に伝えておく。明日はマリアの集散所へ向かう。このイラクリオンの浜から一刻余りの航走で昼前に目的地に着く予定の出航である。マリアにおける係留は、スダヌス案内担当の指示に従うこと』
 一同から『おうっ!』の返事が返る。
 『それから、今夜、こちらでの宿営は、エドモン浜頭の厚意により浜小屋での宿営となる。夕食については、おなじくエドモン浜頭から火を通した干魚がいただける。馳走になろう。以上だ』
 瞬く間に時が経つ、エドモン浜頭からの連絡が来る。
 『イリオネス殿、オキテス殿、スダヌス殿、同道で館のほうへおいで下さい』
 『おう、ありがとう。直ちに伺います』
 『私が案内いたします』
 言葉のやり取りを終えて、三人がエドモン浜頭の館へと歩を運んだ。
 エドモン浜頭の館の中庭には、浜焼きの炉が造られている。炉中には火が燃え、食事の支度が出来あがっている。エドモンとテムノスの手で整えられた夕食の場である。
 『エドモン浜頭、遠慮することなく、夕食の場に参りました。ありがとうございます』
 イリオネスが三人を代表して礼を述べ席につく、エドモンが歓迎の言葉を述べる。
 『お~お、ようこそ、おいで下された。みんなで夕食を楽しみましょうや』
 炉の火にかざされた食材が程よく焼けて、いい香りを漂わせている、イグデスが一同の酒杯に酒を満たした。