『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1289

2018-05-17 07:50:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスが乾杯の声がけをする。
 一同が酒を飲みほす、肴の焼ける香ばしいにおいが鼻を突く、接待サービス担当が一同に程よく焼けた肴を手渡す、塩が振られる、口に運ぶ。
 『おう、焼け具合がちょうどいい!』『おう、旨い!』
 一同の昼食が始まる。
 オキテスがパキオテ頭領に声をかける。
 『パキオテ頭領、新舵構造の造作の件ですが、夕刻の早い頃合いに出来あがります。試乗航走していただけるように段取りしています』
 『おう、そうか。ありがとう。感謝する』
 『それまで間があります。私らが建造していた新船、戦闘艇が2日前に完成いたしました。試乗していただくように段取りしていますが、いかがでしょうか?』
 『ほう、新しい船か?乗せてくれるのか?』
 『はい、そうです。水夫頭殿も、そして、ほかに三、四人くらい同乗いただいて結構です』
 『そうか、いいときにこちらの浜へ来たな。オキテス殿、それは願ってもないことだ。ぜひ乗せてくれ』
 『解りました』
 昼食が進む、頃合いを計って、パンを手渡す、客人らがパンをちぎる、口に運ぶ。
 パキオテ頭領が首をかしげる。
 『ほっほう、このパン、いい香り、いい風味だな』
 水夫頭がパキオテ頭領と目を合わせる。パキオテ頭領が声をあげる。
 『おう、オキテス殿、このパン、旨いっ!初めて口にする、いい香り、いい味だ!感動、感動!』と言って水夫頭に声をかける。
 『おい頭、お前の舌の具合はどうだ?』
 『このいい味のパンに驚いています』
 『おう、オキテス殿、このパン、どこに行けば買える?』
 『このパンは、私ら自前の窯で焼いているパンです』
 『なに!ここで焼いている?』
 『はい、そうです』
 『このパンを自前の窯で焼いているとはな、驚きだな』
 『はい、キドニアの集散所にパン売り場を持っています』
 『ほっほう、そうか。それは大したもんだ。恐れ入った』
 パキオテ頭領は、感動あらたに驚く。
 一同はパンを味わって昼食を終える。
 『アエネアス統領殿、言葉に甘えて昼食を馳走になりました。ありがとうございました。そのうえ。水夫ら一同にいたるまで昼食の配慮、ありがとうございました。重ねて礼を言います』
 『いえいえ、気にしないでください。遠路を遠しともせずおいでいただいた。我々、感謝の気持ちでいっぱいです』
 パキオテ頭領はアエネアス、イリオネスらと握手を交わす、オキテスは水夫頭と手を握り合う、パキオテ頭領がオキテスと接待サービスを担当した者に感謝の言葉を告げて場を去っていく。
 オキテスが加わって三人が建造の場へと歩を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1288

2018-05-16 13:26:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パキオテ方の新艇が建造の浜に陸揚げされる。オキテスとドックスが打ち合わせる。
 『ドックス、作業具合はどのように展開する?』
 『はい、夕刻、早い時刻に仕あがります』
 『ほう、そうか。試乗航走が出来るな』
 『はい、それはできます』
 『よしっ!了解した。その段取りで仕事を進める』
 ギアスが姿を見せる。
 『おう、お前、いいところに来た。今、何している?』
 『今、ヘルメスの点検整備を終えたところです』
 『ほう、そうか、それなら都合がいい。お前、部下を2人連れて、客人と昼食を共にしろ!パムテキオから客人が見えている。パキオテ頭領殿は、俺が接待するが、お前、客人の水夫の皆さんと昼食を共にして世話を頼む』
 『解りました』
 『もう、場ができていると思う。一緒に来い!』
 オキテスは、ギアスら三人を連れて浜にしつらえた昼食の場へと向かう、
 『おう、漕ぎかた水夫の皆さん、長途の航海ごくろでした。昼食の場が整いました。水夫頭殿一同を場に方へ、こちらへどうぞ』
 『オキテス殿、このように気遣いいただいてありがとう。遠慮せず馳走になります』
 『はい!どうぞどうぞ。特別はありませんが、召し上がっていただければ幸いです。ここにいるのが当方のギアスとその部下です。皆さんと食事を共にして世話をいたします。用事がありましたら何なりと申し付けてください』
 ギアスが自己紹介をし、二人の部下を手伝わせて一同の食事の世話をする。
 オキテスが水夫頭に声をかける。
 『ここはこのギアスに任せて、一緒に行きましょう。当方の統領がパキオテ頭領殿を昼食の席に招待しております。水夫頭殿もいっしょしていただくようになっています。私も同席いたします』
 『私ごときも招待していただけるとは、それはかたじけないと思います』
 二人は歩き始める、パキオテ頭領は、アエネアス、イリオネスと話し合っている。
 『統領、宿舎の前庭に昼食の準備ができました。パキオテ頭領殿と水夫頭殿を昼食の席に招いています。軍団長よろしく願います。私も同席します』とオキテスが声をかける。
 『パキオテ頭領殿、心づくしの昼食です。特別はありませんが、昼食に行きましょう』
 『そうですか、突然にこちらの浜へ来て昼食を馳走になるとはありがとう。礼を言います。言葉に甘えます』
 一行が昼食の場へと歩を進める。
 昼食の場には、接待サービス担当の者が焚火を燃やし食材を焼いている。
 全員が席に就く、酒杯を手渡す、酒を注ぐ、アエネアスが立ちあがった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1287

2018-05-15 06:16:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがパキオテ頭領に話しかける。
 『頭領、恥ずかしい話ですが、この浜に船舶の係留岸壁がありません。碇石を海に入れて係留です』
 『おう、解った。そのようにして水夫らを浜にあげる』
 パキオテ頭領が波打ち際に立って水夫頭を手で招く、船の係留方法を伝えて、水夫ら一同を浜で休ませるよう指示をする。
 アエネアスとイリオネスが浜に姿を見せる。二人とパキオテ頭領とは新艇試乗のための来浜以来の邂逅である。
 オキテスがパキオテ頭領を二人に引き合わせる。
 『パキオテ頭領殿、ようこそ、久しぶりです。この浜へ新艇の試乗に見えた折に会いました。あれ以来ですな、変わりなく過ごしていらっしゃいますかな。そのうえ、当方の新艇を使用していただき誠にありがとうございます。厚く礼を申し上げます』
 『アエネアス統領殿、丁寧な言葉がけありがとうございます。このように元気に過ごしおります』
 次いでイリオネスがアエネアスに代わって言葉をかける。
 『パキオテ頭領殿、ようこそ私どもの浜を訪ねてくださいました。浜をあげて頭領殿一行を歓迎いたします』と述べて手を差し出す。その手を力強く握るパキオテ頭領。
 『求めていただいた新艇の具合はいかがでしょうか?気にかけております』
 『よう、たずねてくれました。重宝しています。これまで遠いと思っていたところが少しばかり近くに感じています』
 『そうですか、そのように言っていただいく、私らに取ってありがたい言葉です。ありがとうございます』
 三人が交わす挨拶が終わる。
 オキテスがイリオネスに諸手配について報告する。
 『昼食の件ですが、パキオテ頭領を囲んで昼食をしようと、統領宿舎の前庭に準備するようにセレストスに指示しました。また、水夫連の昼食の場を浜に整えるように指示してあります』
 『了解!それでいいが、パキオテ頭領の来訪の用向きを確かめて手配のほどを頼む』
 『承知しました』
 オキテスがパキオテ頭領に声をかける。
 『パキオテ頭領殿、今日、こちらへ見えたのには、何か用向きがあったのではとないかと思いますが?』
 『おう、オキテス殿、ようわかるな、かゆいところを掻いてくれるような察しようではないか。テムノスのところで新艇に乗った。あの舵構造なかなかだ!切れがいい。俺の新艇にも取り付けたい。それをやってほしい』
 『解りました』
 『造作の手間ヒマは、日にちか?時間か?一晩の滞在でできるか?どうかな』
 『今日中に仕あげます。造作に関する技術はできています。お任せください』
 『よし!やってくれ』
 『解りました。直ちに取り掛かるよう手配いたします』
 オキテスは、ドックスを呼んで事の次第を告げ、直ちに態勢を整えるよう指示をした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1286

2018-05-14 08:21:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『肩の凝るような話は避ける。奇想天外、笑える話をしようではないか』
 『おう、それでいこう』
 彼らの雑談は、小さな穴を穿ち、その穴から船舶の未来を覗き見るといった風な話である。壮大な夢ではなく、ささやかな構想に尾ひれつけて笑い合う。
 山の尾根道を用心して歩く、足にからまる大石小石が歩みを阻む、細く長く荒れた崩れそうな獣みち、風雨にさらされた道、越すに難儀するきれっと、行く手をさえぎる大岩、のりこえるか迂回するかに迷う、前面にはだかる岸壁、オーバーハング、進もうか、戻ろうか、話が終わる。
 『まあ~、ここらが話の終点か。昼を終えたらここに来る』と言って、パリヌルスが立ちあがる、場を去っていく。
 『オキテス隊長、では、昼を終えたらこちらへ来ます』
 『おう!』
 二人はうなずき合う、ドックスが場をあとにする。
 二人が去った場でオキテスは考える、時が流れる、考えている、それでいて何も考えていない自分に気づく、思考の道中で立ち止まっている。
 身の回りを眺める、眺める空間が広がっていく、どことなく彼方を見つめる、道は見えていない、海へ視線を転じる、伸びている水平線、たなびく雲。
 『何だ雲か!?』と思ったとたんに風景が変わる、風が吹き渡っていく草原、先へと続く一筋の道、森に突き当たって消えている、風景が変わる、大勢の人影が歓喜している。
 オキテスは、背中に人の気配を感じる、我に返る、振り向く。
 『オキテス隊長、客人が見えています。同行しています』
 客人に目線を移すオキテスが驚く。
 『ああ~っ!パキオテ頭領殿!ようこそ!』
 『オキテス殿、久しぶりだ!達者だったか?』
 二人はガシット肩を抱きあう、顔を見合わす、再び肩を抱き合う。二人はまじまじと見つめ合う、声がけを待つ風情、オキテスが声をかける。
 『パキオテ頭領殿、遠いところにようこそ来られました。道中いかがでしたか?海路はどちらからですか?』
 『おう、東からだ。テムノスのところで朝、目が覚めたら東から風が来ているではないか、お前を訪ねることを思い立ったてわけだ』
 『そうでしたか、ようこそおいでいただきました。大歓迎です!ゆっくりしてください』
 オキテスは、傍らにいる作業の者にアエネアスとイリオネスを呼びに行かせる。
 空を見上げる、陽の位置を確かめる。
 続けてもう一人、作業者を呼んで指示する。
 『おう、あのな、急いでパン工房へ行ってくれ!セレストスにすぐ、ここへ来るように言ってくれ』
 『解りました』
 指示を携えて走る作業者。
 オキテスは、パキオテ頭領と連れだって浜へと歩みだした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1285

2018-05-11 07:03:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 帰途につく艇上のガリダがオキテスに話しかける。
 『おう、オキテス、昨日はえらく世話をかけた。建造用材の注文はもらうは、世話をかけるは、いろいろとありがとう。建造用材の件、任せておいてくれ!それでだが用材の製材調整の件がある。派遣している五人だが、明日にでも一時帰してくれ。建造用材の納入時に改めて派遣する』
 『解った。明日、朝の第一便で帰す!よろしくな』
 オキテスは、オロンテスにガリダ宛の手土産の件を頼み、彼らを見送る。
 ヘルメス艇が浜を離れていく、ガリダらが艇上で手を振っている、彼らの気持ちが伝わってくる、ヘルメス艇が遠ざかっていく。
 オキテスが傍らに立つドックスに声をかける、二人は建造の場へと足を運ぶ。
 『オキテス隊長、用材の手配も終わり、今日から4日くらいかけて、9月の建造計画に基づく建造の場造り、整備を行います。これが場の整備設計図です。このような配置で造成します』
 オキテスに場の整備設計図を描いた木板を手渡す。
 『建造の場の整備設計図か。作業に従事する人員が増えるぞ。それに対応する余裕をみてあるな?』
 『はい、充分に考慮しました』
 『工具類、必要とする金具類等の準備に集散所の業者に手配しなければならんな』
 『はい、その件についての調達詳細は、今日、仕あがります。明日、アレテスの昼便で集散所へ出向こうと考えています』
 『日にち的にみて、それでいけるか?』
 『いけると考えていますが、特別製の組み立て用金具の件もあります。チョットぎりぎりかなとも思われます』
 『ちょっとだが 心もとないな。何としても、明日、アレテスの昼便で集散所に行け!』
 『解りました。そのように段取りします』
 『朝の打ち合わせ、それでいいな!よし、ドックス、朝めしに行こう』
 二人は立ちあがる、建造の場の者ら一同と過ごす朝めしどき、オキテスは朝めしが旨かった。
 建造の場にパリヌルスが姿を見せる。
 『おう、おはよう!いい朝だ!』
 『建造用材の発注手配も終えた。首尾は上々といったところだ』
 『そうか、それはよかった。両人の奮闘ご苦労であったな。ところで今日、話し合っておきたい用件がある。9月から建造作業に従事する人員の件、もう一件は新艇の構造に関する件だ』
 『おう、そうだな、人員計画については、話し合っておかねばならんな。新艇の構造の件、これは話し合えば即決できるだろう。その段取りでどうだ』
 『いいだろう。人員計画及び新艇の構造改良計画等、ドックスも加えて三人で話し合う。いいな』
 『おう、解った。昼めしを終えたらすぐにやろう』
 パリヌルスは建造の場にとどまり、三人で心の凝りほぐしにいろいろと話し合って過ごした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1284

2018-05-10 08:06:01 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼ら一行の向かう広場に焚火が勢いよく燃えている、案内してきた者がオキテスに場を引き継ぐ。
 『おう、ごくろう!世話をかけたな。あとはこちらでやる』
 一同が焚火を囲んで腰を下ろす。
 『おう、ガリダ頭領。乾杯の声がけをやってほしい!』
 『おう、了解!』
 ガリダが酒杯を手にして立ちあがる、全員が杯を手にして立ちあがる、ドックスとタブタが彼らが手にする酒杯に酒を注ぐ、オキテスがガリダに目配せする、口を開くガリダ。
 『おう、一同!』
 場を見まわすガリダ。
 『いい船は君らによって造り出される!君らの日々に幸いあれ!乾杯!』
 杯の酒を飲みほす、焼きあがった食材に塩を振る、口に運ぶ、夕食会が始まる。
 『おう、頭領!乾杯の声がけ、いいことを言うな!あれは感動の一語だぜ』
 『お前、俺の声がけを誉めてくれるのか。おう、感謝、感謝!』
 『おう、そうだ!さあ~、飲んでくれ』
 オキテスがガリダの杯を酒で満たす、一気に飲みほす、酒ツボを手にしてオキテスの杯に酒を注ぐガリダ、二人は酒を酌み交わす。
 ガリダが派遣の者らに酒を注ぐ、五人がかわるがわる己らの頭領と酒を酌み交わす、主従のコミニュケ―ションツールとして酒が機能している、酒に話が乗っていく、絆が育まれる、五人が統領とタブタと結ぶ交誼、歓喜の情が沸いて渦巻く、熱い交歓光景である。
 それが終われば、建造の場の者らと親交の酒を酌み交わす。
 ガリダとタブタ、オキテスとドックスの四人が目線を交わす。
 『これからも互いの友諠は厚く変わることがない』と目線に込めてうなずき合う。
 一同は旨いパンを口にして夕食会を終える。
 オキテスは、足をよろつかせながら二人を宿舎へ案内した。

 ニューキドニアの朝が明ける。オキテスは朝行事を終える。ガリダらの姿が浜に見当たらない、宿舎に二人を迎えに向かう。
 『おう、ガリダ頭領、おはよう!』戸口から声をかける。
 『おう、おはよう』と返事が返ってくる、『いま、目覚めたところだ』
 『頭領、おはよう、今日もいい朝だ!タブタ、おはよう』
 『おう、オキテス、もう船の出る時間か?』
 『おう、そうだが。よく眠れたか?』
 『おう、ぐっすりだ。寝すぎたな。行こう!』
 三人は浜へと急ぐ。
 『ガリダ頭領、船はこっちだ』
 『そうか、そうか』
 オロンテスとギアスらがガリダら二人に朝の挨拶をする。ヘルメス艇の艇上に案内した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1283

2018-05-09 08:03:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスがタブタと顔を合わせる。
 『タブタ殿、用材の納入の件だが、第一回目の納入の期日だが、今月の最終日までにが当方の要望です。おくれても9月の初日には当方の庭先に納入していただきたい』
 『ドックス殿、承知いたしました。納入が早まることがあってもおくれることはありません。よろしく願います。用材の量の関係もあり、陸路を使って馬車を仕立てての納入です』
 『了解しました』
 『頭領、ドックス殿との用材の仕様と量、納入に関しての打ち合わせ終わりました』
 『おう、そうか。両人ごくろう。オキテス、実務担当両者の打ち合わせが終わった』
 建造用材発注を打ち合わせ終えた四人が握手を交わす。
 オキテスがガリダに声をかける。
 『ところでガリダ頭領、今夕の夕食の件だが、統領と俺、タブタもドックスもだが、派遣で来ている五人、当方からも彼らと一緒に作業をしている者数人が水入らずで夕食会を広場でやる段取りをしている』
 『なに!派遣の者らを呼んで夕食会をやる。そこまで気を使ってくれているのか。オキテス、ありがとう。礼を言う。感謝、感謝だ!』
 『それから、頭領とタブタの今夜の宿泊については宿舎を準備している。また、帰りの件だが、朝の第一便で帰るか、昼の第二便で帰るかどうする?』
 『そのことか。それは朝の第一便で帰る』
 『解った。そのように手配しておく』
 四人は改めて手を握り合った。
 『夕食までに少々時間がある。建造の場で話をしたり、気ままに過ごしてくれ。とにかく建造の場に行こう。パリヌルスもいる』
 四人がそろって建造の場に戻ってくる。
 場に戻ったドックスが建造の場の作業者ら一同を招集する。
 『おう、一同集まってくれたな。戦闘艇2艇を完成させた。一同!大変にごくろうであった。ところでだな、9月の初日より新しい建造計画に基づいて戦闘艇3艇、新艇1艇、合計4艇の建造にとりかかる。工期は一か月を予定している。それに備えて船舶4艇の建造の場づくりに明日よりとりかかる。いいな。以上である』
 ドックスが場を見まわして一同と目を合わせる。言葉を継ぐ。
 『今日はこれにて終業する』
 一同から『おう!』と返事が返る。
 セレストスからの伝言がオキテスに届く。
 『オキテス隊長、広場のほうに夕食の場が整いました。もう頃合いだと思います。私が案内いたします』
 『おう、ありがとう』
 『ドックス、派遣の五人、そして、作業仲間五人くらい連れて広場に行って夕食会をやる』
 『はい、解りました』
 『ガリダ頭領らは、俺が一緒に行く』
 一行が揃う、夕食会の準備が整っている広場へと足を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1282

2018-05-08 08:01:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、ガリダ頭領!』
 オキテスがガリダと目を合わせる。
 『船の建造用材の発注をしたい!』
 『おう、その話か!喜んで引き受ける。了解した』
 『発注、打ち合わせの場を作る。少々待ってくれ』
 『おうっ!』
 オキテスがドックスに声をかける。
 『ドックス、ガリダ頭領と建造用材の発注打ち合わせを始める。いい場所に場を作ってくれ』
 『はい!解りました。準備ができましたら、呼びに来ます』
 ガリダがオキテスに話しかける。
 『なあ~、オキテス、こう言ってなんだが、このクレタの東地区には、船を造る良材が無いといってもいいくらいに無い。俺らがいるこの西地区には船を造る良材がある。船を造る良材の調達のことなら、このガリダに任せろ!決してお前を失望させたりはしない』
 『おっ!ガリダ言ってくれるな。それを聞いて俺は大安心だ!』
 オキテスがガリダの目をジイット見つめる。
 『我々が船を造る建造計画が出来あがった。9月の月初から仕事にとりかかる。よろしく頼む』
 『承知した。任せてくれ』
 ドックスが場を設けて呼びに来る。オキテス、ガリダ、タブタの三人が立ちあがる。
 計画を書いた木板、新しい木板数枚を手にしてドックスが先頭に立つ、話し合いの場へと足を運ぶ。
 『おう、ドックス、いい木陰ではないか。お前、準備ができているのか?』
 『はい、出来ています』
 『よっしゃ!頭領、腰を下ろしてくれ』
 『タブタ、腰を下ろせ!』とガリダが言う。
 『ドックス、建造計画を書いた木板をガリダ頭領に渡してくれ』
 『はい』
 木板を受け取るガリダ、木板に見入るガリダ、タブタが横から木板に見入る。
 『おう、見たところ今年いっぱいの建造予定というか、計画だな』
 『おう、そうだ。11月、12月の建造計画は、予定にして変更ありだが、今日、打ち合わせしたいのは、9月、10月の二か月分の建造用材だ。ドックスがその詳細を説明する。用材の納入をよろしく頼む』
 『了解した』
 『決済については、これまで通り集散所を通して決済する。それでいいか?』
 『決済方法は従来と同じということだな、了解した。建造用材の仕様と量、納入期日はドックス棟梁とその詳細を打ち合わせる』
 『おう、そういうことだ。ドックス、ガリダ頭領とタブタと建造用材の仕様と量、納入期日等の詳細を説明して打ち合わせてくれ。9月の月初には建造がスタートできるように手配をする。いいな』
 『解りました』
 ドックスとタブタが首っ引きで話し合う、細部にわたって真剣に打ち合わせる。
 その光景をオキテスとガリダは注意深く見つめていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1281

2018-05-07 07:48:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ガリダが昼食の礼を述べる。
 『アエネアス統領、イリオネス軍団長、旨いこの上なしの昼食を馳走になりましたな。ありがとうございました。オキテス隊長と打ち合わせがありますのでこれにて失礼します』
 ガリダとタブタ、パリヌルス、オキテスとドックスの五人は、建造の場へと歩を向ける。
 ガリダが話しかける、口調が弾んでいる、受けて応えるオキテスの口調も弾んでいる。
 弾みが弾みをよんで、楽しげに道をたどる。
 パリヌルスは、この光景の中にあって、オキテスのガリダ歓迎の思惑が充分に達成していると感じている。
 今日のガリダの折衝姿勢に『利』より『義』が先んじることを感じとる。結果は当方の思い通りに完結するであろうと読みとっていた。
 一行は建造の場に着く。
 オキテスはガリダに完成した戦闘艇を披露する、出来あがっている戦闘艇に見とれるガリダとタブタ。
 『おう、あの部材の調達に気を配ってできた船がこの船か。カッコよく、勇ましい風体に仕上っているではないか、いい船だ!』
 ガリダら二人は、手で触れる、帆柱を見あげる、『いい船だ!』とうなずきながら見て廻る。
 彼らが新しい舵構造に気づく。
 『オキテス、これはなんだ?!見たことのない装備ではないか』
 『おう、気が付いたか。この船に装備している新舵構造だ。この船には櫂舵を取り付けてはいない。櫂舵にかわる構造だ』
 『おっ!そうか。オキテス、乗ってみたい!』
 『乗ってみたいとな!よし!了解した。準備ができるまで場で作業している五人の仕事ぶりを見ていてくれ』
 オキテスは、ゴッカスを呼び事の次第を告げ、戦闘艇の航走の準備をする。
 程なく準備が整う、ガリダらを乗せて、海に出る、いつものコースを走行する。
 ガリダが船の走行を感じとろうとしている、船の方向転換、操舵効果である艇尾の振れ具合に感動している。
 次いで、帆の風ハラミと船速の速さに驚く。
 『おう、オキテス、この速さ、この走り、驚きだ、素晴らしい!俺が初めて体験する船足の速さだ』
 ガリダが感動の声をあげる、試乗を満喫する、浜に戻る。
 『オキテス、ありがとう!いや驚いた、こんなに船足の速い船、新しい舵構造の船、新しい船の時代のマクアケの船だな。俺は感動したぜ』
 『ガリダ!お前そのように褒めてくれるのか、ありがとう』
 『オキテス、考えてみるとだな。お前らがやっていることは、このクレタに類がない。それくらいに素晴らしいこと事をやっている』
 ガリダがオキテスと目を合わせる、話し続ける。
 『それにこの俺が手伝っている、仕事をしている。心から礼を言う!お前が言っていた、俺が喜ぶ用件というのを聞かせてくれ』
 ガリダが興奮した口調で声をかけてきた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1280

2018-05-04 08:36:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ガリダらが船舶建造の場に姿を見せる。
 『おう、ガリダ頭領、ようこそ!』
 アエネアスとイリオネスがガリダらを迎える。
 『こちらこそ!統領、軍団長、壮健の様子何よりです。先日、集散所において、オキテス隊長と会いました。彼が言うには『ガリダ、お前を喜ばす用件がある』と声をかけられ。こちらへ来た次第です。また、こちらへ派遣している奴らの顔を見てやりたいと思いましてね』
 ガリダの話を聞いてイリオネスが応える。
 『そうですか、統領も私も、ガリダ頭領に久々に会えてうれしい!心からの歓迎です。ゆっくり過ごしてください。オキテスも何かと段取りしています』
 オキテスがアエネアスら、ガリダらに声をかける。
 『ガリダ頭領、挨拶も終わった、昼めしといきましょうや』
 オキテスから声をかけられてドックスも同道する、一行が連れ立って歩み始める、統領の宿舎の前庭へと歩を運んでいく。
 アエネアスの宿舎の前庭には昼めしの準備が整っている。
 セレストスの配慮でサービスをする担当者が準備を整えて待機している。
 一同が席に就く、サービス担当の気配りで酒杯が一同に手渡される、酒が注がれる、アエネアスが乾杯の声がけをする、飲み乾される酒杯の酒、昼食会が始まる。
 『ガリダ頭領、タブタ、特別はないが昼食を楽しんでください』
 『おう、オキテス、敬称略で呼ぶ、許せ。遠慮なく馳走になる』
 一気あいあいで昼食を進める、話が弾む、焼けた肉を口に運ぶ、酒を飲む、ガリダが口を開いて言う。
 『オキテス、先日、集散所で口にした、あのパンが旨かった。舌があの味を思い出させる、あのパンの味は、値千金だ』
 『そうでしたか。頭領があのパンの味をそのように褒めるとは』
 オキテスがサービス担当者に小声でたずねる。
 『あ~、あのパンですね。ここに準備しているパンが、そのパンです』
 『お~、そうか、セレストスの気配りか、ありがたい』
 オキテスがパンを受け取り、ガリダとタブタに手渡す。
 『ガリダ頭領、口にしてみてください』
 ガリダがパンを手でちぎる、口に運ぶ、感動の声をあげる。
 『おう、オキテス、この味!この味!旨い!』
 タブタも顔をほころばせながらパンに噛みついている。
 『アエネアス統領、ここで焼かれているパン、私の大好物でしてな。パンをほおばって、ぶどう酒を飲む!何とも言えませんな』
 『ホッホウ、そうですか。オキテス、俺にもパンをくれ!』
 オキテスが準備されているパンを一同に手渡す、ガリダ頭領が言うようにパンを口にいれる、そして酒を口にする、なるほど旨い、一同は昼食を味わい尽くし、楽しんで終えた。
 オキテスは、サービスを担当してくれた者に声をかける。
 『おう、世話してくれて、ありがとう。お前、ここで昼食を済ませていけばいい』とサービス担当者をねぎらった。