『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1279

2018-05-03 13:56:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜に立つオキテス、ヘルメス艇が姿を見せるであろう方角の海を眺める。
 姿はまだ見えない、太陽の位置が南中するにはまだ間がある。
 そのオキテスの姿を見とめたパリヌルスがオキテスの傍らに立つ。
 『おう、オキテス、ガリダの到着を待っているのか』
 『ということだ。パリヌルス、お前もガリダ歓迎の昼めしに一緒してくれ』
 『了解!』
 『考えてみるとだな、人を自分の思うつぼに誘導するということは結構難儀なことだな』
 『それはそうだ、簡単なことではない。買おうか買うまいかと迷っている客に船を買わせる決心をさせる。それと同じだ。あまり良くない言葉で言うならば人たらしだ。商いの場にのぞんだ人間が、まず考えることはというと 『利』だ。次が『義』だ。『義』が先になることもある』
 『そうか、お前の言うことにうなずける』
 二人は話ながら海のかなたを見つめる。遠い彼方にヘルメス艇らしき船影を見とめる。
 『おっ!来た来た!待ち人来たるだ』
 ヘルメス艇がまたたく間に近づいてくる、艇上でガリダが手を振っている、オキテスもパリヌルスもこれに応えて大きく手を振る、ヘルメス艇が浜に近づいて停まる。
 オキテスが海に飛び込んでガリダを迎えに海中を走る、ガリダが艇から海に飛び降りる、ガリダが飛ばした飛沫を浴びながら二人は肩を抱き合う、目を合わせる、再び肩を抱く。
 『ガリダ頭領、ようこそ、来てくれた!』
 『おう、オキテス、浜に出て、俺の到着を待っていてくれたのか、ありがとう、ありがとう!』
 二人は身を胸のあたりまで海に浸して浜に歩き着く。
 パリヌルスが波打ち際に立ってガリダを迎える。
 『お~、ガリダ頭領、遠いところをようこそ来てくれました。大歓迎です』
 『おう、パリヌルス隊長、久しぶりの再会、元気そうで何よりだ。大歓迎してくれて、ありがとう』
 ここでも互いに肩を抱いて、再会を喜び合う。
 ガリダ頭領に同伴のタブタが浜にあがってくる、これを迎えるオキテス、オキテスがタブタの肩を抱く、再会を喜ぶ二人。
 パリヌルスと目を合わせるタブタ。
 『おう、タブタ、ようこそ来てくれました。ありがとう』
 『久しぶりです、パリヌルス隊長!元気そうで何よりです』と肩を抱いて再会を喜ぶ。
 浜に繰り広げているガリダ一行の歓迎風景を目にした浜にいる連中が歓声をあげ、盛大に拍手をして、オキテスとパリヌルスに同調して二人を歓迎する。
 ガリダとタブタの二人が会釈して応える。二人が思いもかけない歓迎光景に照れている。
 『おう、オキテス隊長、このように俺らを迎えてくれるとは感激だな。一肌も二肌も抜いて、これに応えなきゃならんな』
 オキテスとパリヌルスがガリダとタブタの二人を建造の場へと誘って行く。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1278

2018-05-02 09:20:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスとドックスは、建造用材調達計画書を念査をする。
 『おう、いいだろう!ドックス、そのまとめを木板に書いてくれ。木板は2枚だ。日付を書き入れることを忘れるなよ』
 『解りました』
 『ドックス、ガリダとの打ち合わせの場での詳細説明はお前に任せる』
 『承知しました』
 『あとは、9月からの建造体制に備えて建造の場の整備を今月末までに仕上げる。それから、建造の作業にかかわる人事計画をパリヌルスを加えて三人でやる』
 『はい、解りました』
 オキテスはドックスとの打ち合わせを終える。
 アエネアスとイリオネスが建造の場に姿を見せる。オキテスが今日の予定を二人に伝える。
 『ガリダが来るのか、久しぶりだな。歓迎してやるのだな』
 オキテスは、どのように歓迎してやろうかと思案する、段取りを決める。
 空を仰ぐ、太陽の位置を確かめる、頃合いを計る。パン工房に足を運ぶ、セレストスと打ち合わせる。
 『おう、セレストス、急の頼みだ、引き受けてくれ!ドロナワ式の頼みだ』
 『オキテス隊長、どのような用件です?』
 『今日の昼だが来客がある。ガリダが来る、相手は、二、三人の予定だ。歓待してやりたい』
 『解りました。引きうけます。場所は?出席予定人員は?それを聞かせてください』
 『当方が~』と言って指を折る。
 『8人だ。場は、統領の宿舎の前庭だ。酒、肴、パン、品数は多くなくていい。ガリダの好物は肉だ。肉を場で焼いて食べるようにしてくれればいい』
 『解りました。万事任せておいてください』
 『おう、頼む!これで安心、安心』
 オキテスは、伝えておこうか、どうするかについて一瞬迷う、意を決する。
 『おう、セレストス、それからだが、今夕の夕食だが頼んでおく。ガリダを囲んで浜焼きスタイルで夕食会をやりたい。これは広場でやる。特別の配慮は不要だ。このことも頼んでおく』
 オキテスは、詳細を伝える。
 『了解しました』
 打ち合わせを終えて建造の場に戻ったオキテスは、ガリダを迎えての昼食の件をイリオネスと打ち合わせる。
 『オキテス、解った、統領にも伝えておく。ガリダの歓迎か、言い方がいいとは言えないが、人たらしの歓迎をするということだな、心得た』
 『我々がこの事業に懸命にとり組んでいます。ガリダにもその気になって建造用材の納入をやってもらう。そういう心情です』
 『オキテス、了解した』
 イリオネスとの打ち合わせを終える。次いで、ガリダ歓迎の演出を考える。
 そのフアストステップとして、ガリダを浜で待ってやることにした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1277

2018-05-01 09:06:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、諸君!今日は大変にごくろうであった。テスト航走の評価、意見交換も終えている。その結果を総括してまとめておきたい。その意図をもって一同に集まってもらったというわけだ』
 パリヌルスは一同と目を合わせる。
 『戦闘艇の機能、その機能が性能化する。それをここに集まった我々が共有して、今後、船舶の建造、販売、そして、派生する諸事に対応していく。では始める』
 戦闘艇の機能、テスト航走で知り得たその効果、性能を話し合ってまとめあげる、そのまとめを一同に伝える。
 彼らが理解する、総括の話し合いが終わる、『このようにまとめておくと解りやすい』と彼らは言い交わす、場を解いて散会する。
 パリヌルスがギアスに声をかける。
 『おう、ギアス、明日は、お前がキドニアに行くことになっているのだな』
 『はい、そうです』
 『オキテス隊長から要請が来ている。オロンテス隊長の用務を終えたら、ガリダ頭領の一行、一行と言っても二人か三人だと考えられる。彼らを乗せて浜へ戻ってくれ。それを終えたらキドニアへ戻り通常の業務だ。以上だ』
 『解りました』
 パリヌルスは、会議、テスト航走、テスト航走の評価、意見聴取、そして、その総括と一連の作業を終えて今日を終わった。

 朝が来る、オキテスの多忙の一日が明ける。
 建造の場では、9月の建造計画に基づいて、オキテスとドックスが建造用材の調達計画を練っている。
 『オキテス隊長、あれですね、明確な建造計画があるということはいいことですね。計画から推し測る諸計画と立案手配、段取りして実行がやりやすくなります』
 『そうだな、ムダな思考、懸念が少なくなる』
 オキテスがそのように答えて、ハッとする。
 『だがだ。計画と実際、結果に差が生じると、そこにムダが発生する。しかし、その先の計画を修正することでそのムダに対処する。速やかにムダを解消することができる。計画を好循環させるのだ』
 ここで言葉をきってドックスの顔を見るオキテス。
 『その計画の循環を悪循環させると結果が支離滅裂となる』
 『そうですか』とうなずくドックス。
 『俺は、そんな悪い結果にはならないと考えている。そのような事態に対処するためにアエネアス統領以下俺たちがいる』
 『そうですか、そこに安心があるか。自分の役務の確実実行ですね!』
 『そういうことだ!話がそれたな。ドックス計画ができたのか?』
 『はい、出来ました。オキテス隊長、念査確認しましょう』
 二人は、建造用材の調達計画をまとめあげた。