
Sくん
お手紙、ありがとう。
Sくんの書いてくれた手紙はツイッターやブログでとしまえんが大好きだった日本中(※後日注:実際にはある方が英訳してハリー・ポッターの原作者J.K.ローリング宛にツイートしてくださったものがTwitter上で拡散しているので「世界中」)の人に読んでもらって、東京都や練馬区のえらい人にも送ったけど、なかなかすぐには返事が来ないかもしれないので、おじさんがみんなに代わって返事を書きました。
おじさんの仕事は「べんごし」という、みんなの代わりに何かを伝えたり、なやんでいるみんなのお話を聞いたりする仕事なので、みんなの代わりにSくんに返事を書いてもいいかなぁ、と思います。
最後にフライング・パイレーツに乗れたんだ。フライング・パイレーツはとしまえんのぜっきょう系の王様だから、もう、Sくんは「ぜっきょう系としまえん」を完全せいはしたようなもんだね。
おじさんの所にもSくんより2つ上の小学校6年生の子どもがいます。でも、おじさんの所の子どもは小学校4年生の時にはフライング・パイレーツなんて乗れなかったように思う。Sくんはすごい。
オートスクーター、ざんねんだったよね。乗りたかったよね。
サッカーのコーチにはさよならも言えなかったんだ。くやしいね。
おじさんのところの子どもも小さいころ、としまえんでサッカーの練習してたんだ。大好きなサッカーのコーチに、さよならも言えずに会えなくなったら、おじさんなら泣いちゃうと思う。
でもさ、Sくんがサッカー続けてれば、ぜったい、いつかまたどっかでコーチには会えるはず。おじさんが保証する。だから、としまえんが閉園したからって、サッカー止めないで。
Sくんがサッカー止めちゃったら、コーチも、としまえんも、エルちゃんもカルちゃんもみんながっかりすると思う。
としまえんだけじゃなくサッカーまでSくんの毎日からなくさないでください。
おじさんたち大人は、それがいちばん悲しいです。
プール、楽しかったよね。
おじさんも子どもと何回、としまえんのプールに遊びに行ったか、数え切れません。
「みんなの思い出の一部」というSくんの言葉がいちばんぴったりだとおじさんは思います。
としまえんのプールは、「ぼくの思い出」でも「わたしの思い出」でもなくて、「みんなの思い出」なんだよね。
Sくんやおじさんと同じ気持ちの大人たちが、いま、いっしょうけんめい、東京都や練馬区のえらい人たちに「プールだけでも残してください」ってお願いする活動をしてます。
もし、Sくんがどこかでそういう大人たちを見たら、心の中だけでもいいので「がんばれ」って応援してあげてください。
「プールを残してください」ってがんばっている大人たちは、きっと、自分の思い出のためじゃなくて、Sくんたち子どもたちがこの先、何年も、もっともっと素敵な思い出を作れるように、と思ってがんばっているはずだから。
としまえんはえいえんにある物だと思っていたんだ。
じつは、恥ずかしいけど、おじさんも大人のくせにそう思っていました。
だから、いつのまにかとしまえんに行く回数が少なくなってきてても、気にしませんでした。
「えいえんにあるから、いつでも行ける」と思っていたから。
でも、えいえんにある物なんて、本当はこの世には一つもないんだ。
どんな物でもいつかはなくなってしまう。
だから、それが今あるうちに、せいいっぱいそれを大切にして、愛してあげなきゃいけないんだ。
おじさんたち大人は、いつの間にかそんな当たり前のことを忘れて、としまえんがなくなるまでそのことに気づかなかった。
だから今、おじさんだけでなく、数えきれないくらいの大人たちが、「もう一度だけ、としまえんに会えるように」と色んな活動をしています。
だから、これは、おじさんたち大人たちの、Sくんたち子どもたちへの「ごめんなさい」の活動でもあります。
としまえんにはもう二度と会えないかもしれないけど、おじさんもSくんも、としまえんから山もりの思い出をもらいました。
としまえんはね、94年間もえいぎょうしていたけど、その間、一度も誰かの悪口を言わなかった。
どんなに辛くて苦しいときも下を向いたりしなかった。笑顔でSくんやおじさんたちをむかえてくれた。
閉園しちゃうと決まってからも、ぜったいにいいかげんなたいどでお客さんにせっしなかった。
最後の最後の本当に最後のいっしゅんまで、お客さんを楽しませようとしていました。
としまえんは、Sくんにもおじさんにも、みんなに大切なことをたくさん教えてくれました。
人の悪口を言わない大人になってください。
辛いときでも笑顔を人に見せてあげられる大人になってください。
だめだと思っても、最後まであきらめない、最後までいっしょうけんめいがんばる、そんな大人になってください。
そして、Sくんがそんなおとなになって、もし、だれかが「Sってすごくいいやつだな」ってほめてくれたら、「だっておれはとしまえんで育ったからね」と言って、としまえんがどんなにすてきな遊園地だったか、みんなに教えてあげてください。
おじさんはとしまえんが閉園してしまってから、子どもたちとの楽しかった思い出を思い出してはめそめそ泣いていました。男のくせに変だよね。
でも、Sくんの手紙を読んで、「泣いてる場合じゃないな。おじさんたち大人は、まだ、やらなきゃいけないこと、できることが残ってる。」と思い、元気が出ました。
ありがとう。
Sくんが、とびきりのカッコいい大人になって、たくさんの人にとしまえんのじまんをしてくれる日が来るのを楽しみにしています。
2020年9月11日
弁護士 平岩利文
追伸 おじさんはべんごしのくせに字が汚いので、もし読めない字があったらお母さんかお父さんに読んでもらってください。
最後まで読んでくれてありがとう。

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