上がり続けて下りてこない状態。それを「遭難」という。
(株式相場の格言)
半年前の話題かよ!と突っ込まれそうだが、いやいや、そうではないぞよ。半年先の話題じゃ。
梅雨真っ只中のこの時期に、何故、正月の「箱根駅伝」の話題かというと、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」(新潮社)を読了したからだ。
「風が強く吹いている」は、箱根駅伝を目指す10人だけの寛政大学陸上部の1年を描いた小説だ。
以前からこのブログで「三浦しをんさんはいい!」とベタ褒めしてきたのだが、「風が強く吹いている」を読んで、「うわっ! この作家、やっぱり天才!」と心底、確信した私である。
ちなみに、もし、私が息子たちに1冊だけ、三浦しをんさんの作品を薦めるとするなら、迷わずこの「風が強く吹いている」を手渡す。
とか言いつつ、実はこれまで私、「箱根駅伝」に特に熱い思い入れなぞございませんでした。
毎年、正月は苗場のゲレンデにいるか、そうでなければカミさんの実家に挨拶に行っているかなので、TVでゆっくり箱根駅伝を観戦したことなどなかったからだ。
ところが今年は義弟の子供たちが年末からオタフク風邪にかかり、毎年恒例の「正月のカミさんの実家詣で」が中止になった。
「そういうことなら」と遊びに行った先の苗場のマンションで、コタツに入ってぬくぬくしながら窓の外の雪景色を見て、持参した日本酒でベロベロになって、たまたまTVをつけたら箱根駅伝の中継をやっていた。
箱根駅伝の熱烈なファンの方に襷(たすき)で首を絞められそうな、この上なくダラケきった観戦態度。
まぁ、とにかく、そういう様々な偶然と必然の果て(?)に、今年の正月は生まれて初めてじっくり箱根駅伝の中継を見る機会を得たのだ。
「箱根駅伝ファン超初心者の私的には」という前提がつくが、今年の見どころは5区だった。
青山学院大・神野大地の走りはまさに神憑(かみがか)り的だったが、それより私が涙したのは同じ5区を走った駒澤大学の馬場翔大だ。
馬場は、首位で襷を受けて小田原中継所を出たが、10キロ過ぎに同じ3年生の青学・神野に逆転された。
その後は低体温症に陥り、意識もほとんどない状態でフラフラになりながらも残り2キロを走り抜いた。
往路のゴール前直線に入る最後のコーナーを曲がってきたときの馬場は、もはや走ることはおろか、まっすぐ歩くこともできなかった。
なんども転倒し、そのたびに立ち上がってゴールを目指す。
競技中の選手に手を触れることはルール上禁止されているから、チームメイトも、沿道でサポートしている仲間も、誰も馬場に手を差し伸べられない。
ゴールで声を枯らしながら馬場の名前を呼び続けるチームメイトと、とっくに意識などすっ飛んでしまっているはずなのに、「仲間から受け取った襷を次の仲間に渡す」という、ただそれだけのために、棄権することなく足を前に進め続ける馬場の姿を見て私は不覚にも大泣きした。
このやろー、若造ども。正月早々、俺様のハートを鷲掴みにしやがって!
最終的に優勝は青学。駒大は2位だった。5区で馬場が体調を崩さなければ、もしかしたら青学を破って駒大が優勝していたかもしれない。
けれど、たぶん、駒大のチームメイトは誰一人、馬場を責めてはいないと私は信じている。
理由は特にない。駅伝というのはそういうスポーツだから、としか言えない。
「そうなのか? 駅伝とはそういうスポーツなのか?」と思われる方はぜひ、「風が強く吹いている」を一読されたい。
中学校時代。実は私も駅伝の学校代表選手だった。
「風が強く吹いている」を読みながら、今年の箱根駅伝5区の馬場を、馬場を呼び続ける駒大のチームメイトを、中学校時代の駅伝の仲間の顔を、校庭のトラックの砂埃と練習コースの枯草の香りを、思い出した。
「走る」という、人間の最も基本的で原始的な身体の動き。
どこまでも孤独で、それでいて、仲間とたった一本の襷でしっかり繋がっているという絶妙のバランス。
「駅伝」というスポーツは不思議に人を魅了する。
馬場も神野も今年は4年生。来年の箱根駅伝が最後の出場になる。
おそらく、二人ともまた、5区を走るだろう。
「箱根の借りは箱根でしか返せない」という。
馬場が借りを返すのか、神野がさらに神憑(かみがか)った走りで未知のゾーンに到達するのか。
いまだに自宅のDVDレコーダーの録画予約を使いこなせない私としては、できれば、来年はカミさんの実家詣でも苗場もパスして自宅で箱根駅伝を見たいと切に願う今日この頃である。(半年あるんだから録画予約の仕方を覚えろよ、俺!)
昨年の7月1日にアップした「Dの意思」という記事の中で、仕事をしながらコツコツ独学で司法書士の資格取得を目指して勉強しているD君のことを書いた。
その後、何人かの方から、
「そういえば平岩先生がブログで応援していたD君。司法書士の試験合格したんですか~?」
と尋ねられた。
おぉ、我が「つれ弁」もなかなかに読者の興味を喚起しておるではないか。
って、そんなこたどうでもいい。
いや、その、なんというか、試験の結果より、それに向かって努力する過程の尊さの方に目を向けてほしいというか・・・・(ごにょごにょごにょ)
落ちたよ、落ちた。落ちました!(三段活用)
てか、あそこまでD君を応援しておきながら、このブログでその後の顛末を公表してないんだからその辺は察してくれよ。武士の情けでよ!
人生ってのは、そうそう、テレビや映画みたいに簡単にハッピーエンドにはならねーんだよ!(逆ギレ)
その後、D君はしばらく落ち込んでいたが、すぐにN社長のところの仕事が忙しくなり、今年に入ってからはほとんど会う機会もなくなった。
N社長からは、
「Dのボケもようやく仕事を覚えくさって、結構バリバリ稼ぐようになりましたわ(関西弁)」
と聞いていたので、
「そういう状況なら司法書士の試験はもう断念かな」
と(勝手に)推測していた。
で、今日。
久しぶりにT社長と豚しゃぶを食べた。
めちゃ旨だったぜ!
いやぁ、毎度毎度のことですが、ご馳走さまでございました。次は牛肉もいいですなぁ、T社長。
あ、T社長というのは「10 Antsの会」の名誉顧問だったか名誉総裁だったか名誉総帥だったか、とにかく、そんな感じのお方である。
「10Antsの会」というのは私がK氏と結成した、敬愛する高橋いさをさんも褒めてくれた・・・
え~い、いちいち説明してると話が前に進まん。正確に知りたい人は過去の記事を探しくれ。
こういう手間を省くためにも、みなさん、「つれ弁」はちゃんと毎回読みましょう(ステマ?)。
って、何の話だっけ?
あ、D君の話だ。
T社長もD君を可愛がっている一人である。
D君の住んでいるマンションはT社長の会社から徒歩3分のところにある。
T社長から伺った話では、D君は今年も司法書士の試験を受けるために、毎朝、子供を保育所に送り届けた後、N社長から
「仕事やでぇ、D。早よ来んかい、ぼけぇ!(関西弁)」
とお呼びがかかるまで、T社長の会社の会議室を借りて勉強をしているという。
「今年も合格できるかどうかはわからないけど、とにかく頑張る」
と毎朝、D君はT社長の会社の会議室にやって来る。
「Dの意思」は健在だ。
よし、わかった。安心しろ、D。
こうなったら俺がドラゴンボールを7個集めて、神龍(シェンロン)に
「D君を司法書士の試験に合格させてやってください」
と頼んでやる。
神龍に叶えてもらえるは願いは3つだ。
2つ目の願いは
「親父の癌を治してやってください」
にしとく。
いつのまにか話のテーマが「ONE PIECE」(Dの意思)から「ドラゴン・ボール」に変わっているが、この際、細かいことは言いっこなしだ。
D君は何度転んでも起き上がる。
馬鹿にされても笑われても呆れられても絶対に諦めない。
いつも上を見ている。
次のステージに這い上がるために努力を続けている。
綺麗ごとばかりほざきながら、確たる努力もせず、何一つ成し遂げず、仕事が苦しくなりそうだと知った途端に逃げ出す上げ底のハッタリ野郎とは大違いだ。
私は自分の子供たちにはD君のような青年になって欲しいと思う。
これが神龍への3つ目の願いだな。
PS:ブルマ様。
来月の司法書士試験に間に合うように、至急、「ドラゴン・レーダー」をネクスト法律事務所(@東京・四谷三丁目)宛にお送りくださいませ。
着払い不可。