三流読書人

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ドングリ小屋住人 

この国の仕打ち「老老介護」

2006年05月11日 12時42分14秒 | 教育 
老老介護
 《家族の介護を在宅で担っている高齢者の3割が「死にたい」と思ったことがある。厚生労働省研究班の調査結果を紹介したこの記事に、東京都板橋区の原田嘉代子さん(70)から投書が届いた。
 93歳の母親を在宅介護して3年目になる。
 母親は骨折がきっかけで寝たきりになった。一人娘の原田さんは、仕事と介護をなんとか両立してきたが、2年前に仕事を辞めた。母親が脳梗塞、さらに原田さん自身も股関節の病気で歩行が難しくなった。
 日中は毎日4時間、ヘルパーが交代で母親を見てくれる。が、食事の用意や深夜の世話は原田さんの役目だ。介護しようにも身動きがままならない。主治医は股関節の手術を勧めるが、入院が必要なのでためらっている。高齢者が高齢者を介護する、いわゆる「老老介護」の現実だ。「月に一度でも自分の時間が持てればいいのです」と原田さんは言う。身体が疲れてくると、心も乾いてくる。発作的に死にたくなる時がある。せめて半日、家を空けて大好きなコンサートに行きたい。しかし長時間外出すれば、超過分の介護費用は自己負担になる。
 4月の介護保険法改定でヘルパーの家事援助も制限された。食器洗いを頼んだら「お母さんの使ったものだけ洗います」と言われた。ほこりで汚れた窓から差し込む日差しの中、「介護の社会化」とはどこの話かと原田さんは思う。
 まさか政府は、介護者が永遠に若々しく元気であるという前提で制度を組み立てたわけではあるまい。老老介護がもっと当たり前になる時代は確実にやってくるのだ。》            元村有希子氏(環境科学部)
 『毎日新聞』5月11日付 コラム「発信箱」より