伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

2月定例会閉会・討論に立ちました

2013年03月22日 | 市議会
 いわき市議会2月定例会が終了しました。日本共産党は退職金に関わる議案と被保険者資格証明書が発行されることが前提の国民健康保険に係る議案、全部で5議案に以下の通り反対し(ほぼ原文通りで長いです。興味のある方はどうぞ読んでください)討論を行いましたが、提案された議案73議案は全て可決されています。また、この日、原発で起こった停電事故に関して仮設設備の本設化を求める決議の採択を各会はに呼びかけ、全会派の賛成で可決をしています。この内容は後でアップします。

■討論

  10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。

 議案第10号、議案第37号、議案第38号、議案第53号、議案第54号、以上5議案に反対する立場から討論いたします。

 まず、議案第10号、いわき市職員の退職手当に関する条例等の改正について、これに関連する議案第37号 平成25年度 いわき市一般会計予算、議案第53号 平成25年度いわき市水道事業会計予算、議案第54号 平成25年度いわき市病院事業会計予算、以上4議案について一括して討論いたします。

 平成25年度一般会計予算案は、震災、原発事故からの復興に向けて、目に見える復興を予算化するものとして提案をされ、防災集団移転促進事業や災害公営住宅整備事業、面的除染をすすめるなど復興にかかわる予算約675億円をはじめ、小中学校校舎等の耐震化をすすめ原子力エネルギーに依存しない社会づくりに資する再生可能エネルギー活用まちづくり、さらに平成25年度いわき市病院事業会計予算には、新病院建設に向けて、建築基本設計や実施設計を委託するための予算が計上されるなど、震災後のいわき市の復興をすすめ、安全で安心して暮らすことが出来るいわき市の再生に向けた予算が計上されています。

 震災から暮らしを建て直そうとする市民のみなさんには歓迎されることであると同時に、いわき市の被害の特徴の一つともいえる5万棟にも及ぶ一部損壊住宅への支援を被災者が強く求めている中で、また、市もその必要を認識し国にその支援策の創設を求めている中で、こうした声に応えていくための、引き続く市の取り組みの強化が求められており、多くの市民もそのことに強い関心を持っているに違いありません。

 こうして地方自治体が復旧・復興をすすめようと努力している中で、安倍首相は環太平洋経済連携協定いわゆるTPP交渉への参加を表明しました。本会議場で市長及び農業委員会会長は、TPP交渉参加は農林水産業をはじめとしたあらゆる産業分野や地域経済に影響を及ぼしかねず、詳細な情報開示と十分な議論を、交渉参加の前提と考えているとされました。

 参加表明と合わせて政府が公表したTPP参加による国内産業への影響の試算でも、GDPで見ると農業では3兆円のマイナスの影響を与える一方工業や輸入で3兆2000億円の経済押し上げ効果があるとしております。仮にこの試算のとおりでも、工業品などの輸出の引き換えに日本の農業を関係国に明け渡して、日本で生産される大切な食糧という資源、そして非関税障壁の撤廃という枠組みの中では、日本の商業慣行などをアメリカ化させ、日本の医療・国民皆保険制度などに大打撃を与えかねないものであることが浮き彫りになりました。

 農業委員会会長は、TPP交渉参加について、「多くの農業者が東日本大震災及び原発事故で苦しんでいる状況で交渉に参加することは、復興に向けた努力と意欲に逆行するものであることから、反対すべき立場」と明確に答弁されましたが、被災地での市民の暮らしの復興という視点からとらえてみれば、来年4月1日に予定される消費税の増税と同じく、このTPP交渉参加も重大な影響を与えるものとして問題があります。

 被災地を踏みつけにするようなこうした国の施策は、さらに地方公務員のあり方にも様々な形で介入しています。国家公務員に準じて地方公務員の賃金を7.8%引き下げることを反映して地方交付税を減額しました。同時に、今回の議案に提出された退職金の削減も同様の問題を含んでいます。

 今回提案された議案第10号、いわき市職員の退職手当に関する条例等の改正については、国会公務員の退職手当の支給水準が引き下げられたことに伴い本市職員の退職手当も引き下げるもので、現行で100分の104となっている調整率を本年4月1日から11月30日までの間に退職する者で100分の98、同12月1日から平成26年6月30日までの者で100分の92、平成26年7月1日以降を100分の87に引き下げるようとし、合わせて現行で勤続20年以上となっていた対象者を、すべての退職者に拡大するものとなっています。このことにより削減される平均額は、それぞれの調整率で見ますと約136万円、約272万円、そして最終的には約385万円の減額になるとされています。

 もともとこの提案のもととなった国家公務員退職手当法は、昨年の臨時国会に提出されたものの、2週間にわたって提案理由の説明もされなかったものでした。ところが会期末の解散のどさくさの中で、衆議院総務委員会でわずかに1時間、また、参議院の総務委員会でも45分の審議で採決が強行されました。公務員の生活にかかわり、ひいては国民の経済活動に影響をするにも関わらず十分に審議が尽くされた状況で採択されたものとはとても言えない状況です。

 そしてその削減の持つ問題点を見れば、一つには、退職金が退職後の重要な生活資金になっていることから考えても、職員の退職後の生活の打撃となりかねないという問題があります。

 本会議の質疑で総務部長は、この退職金の削減が職員の生活設計に与える影響について「今回の削減幅がこれまでの改定と比べて大きいものであることから、この措置を受けた生活設計の見直しは、それぞれ対応して行かざるを得ないもの」と答弁しました。「それぞれ対応して行かざるを得ない」という答弁は、退職金の減額にあたって何の対応もしないということは考えられないことから、ごくごく当たり前のことではあります。しかし同時に「削減幅がこれまでと比べて大きい」という答弁には、今回の改定が退職後の生活設計に重大な影響を与えかねないという深い認識と憂慮が含まれていることが示唆されていると感じざるを得ませんでした。

 二つには、国家公務員と地方公務員の退職金引き下げが民間労働者の退職金引下げに連動し、労働者全体から見れば生涯賃金の引き下げとなり、消費を手控えさせる結果、国の経済にも、地域の経済にも否定的な影響を与えかねないものとなっているという点です。

 そして三つ目に、本会議の質疑で、本市と本市職員労働組合とが2月8日及び2月15日と2回の交渉を行ったものの合意ができていないという問題です。総務常任委員会の質疑では、今回の退職金引下げは国が強制できるものではなく、本市独自に決定できる内容であることが明らかになっています。そのことを考えれば、最低限の問題として職員労働組合との合意をもって提案すべきであり、今回の提案は拙速のそしりを免れることはできません。

 議案第37号 平成25年度いわき市一般会計予算、議案第53号 平成25年度いわき市水道事業会計予算、及び議案第54号 平成25年度いわき市病院事業会計予算の3案は、こういう問題がある条例改定案を予算措置して、退職金の減額を反映させた編成となっており、議案第10号と同様の問題点をもっていると言わざるを得ません。

 また議案第53号 平成25年度いわき市水道事業会計予算には、この退職金の削減の他に窓口業務の民間委託を拡大する問題が含まれています。

 この民間委託は水道事業の経営環境が厳しいという認識のもと、従来の検針業務、再検針業務に加え、窓口、受付、収納の各業務まで含めて料金徴収部門を包括的に民間委託しようとするもので、その目的は経費の削減にあります。

 この民間委託の最たる問題は、不安定雇用の労働者を増やし、低賃金を固定化するという点にあります。

 最近、ある委託事業で勤務した経験のある方のお話を聞きました。それによると委託事業の問題の一つは、競争入札によって受注業者が変わることにあります。これまでの業者が受託できないことは労働者から見れば職場の喪失を意味し、業者が変わることが直ちに失業に結びつくということです。何らかの技術を持っている労働者は、再就職できる可能性が比較的高く、まだましだと言います。しかし、特別の技術あるいは技能・資格のない労働者は、新たな職場をなかなか見つけることができず、路頭に迷い、生活の破綻につながりかねない重大な問題が発生してくると言います。

 二つ目に、競争入札での受注はより低い金額で入札をした業者が落札することを意味します。委託される業務は清掃業務にしろ、各種施設の運転・管理業務にしろ、また警備業務にしろ、その業務の委託費の多くは人件費が占めています。このことから考えれば入札額を低く抑えるということは、人員を削減するか、賃金を抑えるか、いずれにせよ労働条件を厳しいものにしたり人件費を抑えることにつながっていきます。

 その結果、地域最賃ぎりぎりの時給で働くことになり、そもそも地域最賃は低額ですから何年務めても安い賃金のまま働かなければならない状況に置かれることになってしまいます。話を聞いた方は、ある時、賃金単価が引き上げされて喜んだのもつかの間、勤務日が減らされてしまって月収は全然変わらなかったと嘆いていました。

 今回委託を行うことによって水道局職員は26人減り、その必要な業務は委託事業に移ることになります。今回の委託はプロポーザル方式で委託業者を決めておりますが、この契約期間は3年間であり、3年間ごとに委託業者を決め直すことになります。低賃金と不安定雇用を拡大しかねない委託というあり方が良いのかどうか。このことが問われています。

 一方では委託事業を作り出すことによって、これまで仕事につけなかった市民の雇用機会の確保につながるという議論もありますが、仮にそのメリットがあったにもしても、低賃金と不安定雇用の拡大につながるような委託業務の拡大には問題があると言わざるを得ません。

 また、今回の委托は、料金徴収に関わる業務を包括的に委託する内容です。このうち特に窓口等の業務委託を考えた場合、これが偽装請負的な状況を生み出しかねない問題もあるものと思われます。

 偽装請負とは契約上などでは請負という形をとっているものの、その実態は労働者を発注者の管理下へ常駐させ、発注側の指揮命令の下に業務をさせる行為をいうわけです。もちろん局側としては、こうした状態にならないような対応をとるものとは思われますが、受託業者側の労働者が何らかの問題解決のために、局職員に相談し、その結果として局職員が労働者に何らかのアドバイスを行い、窓口対応を行うようなことになれば、偽装請負とされる状況になってしまいます。職員同士で行われる業務では、こうした連携は当然のことですが、委托が職場の中に持ち込まれる結果、同じ職場で働く労働者が連携できない不自由な職場環境が出来上がっていくわけです。

 さらに、今回の包括的委托は、市民の生活に欠かせない給水に関わるものです。このため給水停止の措置をどのようにするかは、市民の生活を支える上で大きな問題になります。このことに関する対応を、溝口民子議員が一般質問でただしました。水道事業管理者は「機械的な給水停止は行わない」と答弁されました。当然の措置です。

 同時に、滞納や給水停止などといった個人情報は、その市民にとって他人に知られたくない最も重要な情報になると考えられます。このような方が問題の解決のために議員等に相談することがあるわけですが、こうした折にも清水の舞台から飛び降りるような思いで相談に来ている現実があります。こうしたプライバシー保護の観点からも、受託業者がコロコロ変わりかねない委托には問題があると言わざるをえません。

 以上述べて来ましたように、議案第10号いわき市職員の退職手当に関する条例等の改正についてと、これに関連する議案第37号、議案第53号及び議案第54号の各予算には問題がありますので否決とし、執行部に是正を求めるべきと考えます。

 次に議案第38号 平成25年度いわき市国民健康保険事業特別会計予算について申し上げます。

 この予算は、国民健康保険被保険者資格証明書、いわゆる資格証の発行を前提に編成されています。

 この資格証についても、本議場で繰り返し議論をされてきました。資格証は国民健康保険に加入していることを証明するに過ぎません。これを医療機関の窓口で提示しても、窓口では医療費を全額負担することになってしまいます。ここから心配されるのは、資格証を交付された世帯の医療控えです。窓口で全額負担することが困難なことから、体調不良があっても医者にかからず、症状を悪化させてしまいかねない問題があるのです。

 もちろん、資格証を交付された加入者が具合が悪くなった際の市の対応は、その旨相談があれば、短期保険証を交付し、通院できるように措置することになっています。しかし、滞納者の心理は、その相談さえためらう状況にあるわけで、私も相談を受けたことがありますが、結局窓口に足を運ぶことができませんでした。

 こうした状況の中で不幸な事態を招くこともあり、民主医療機関連合会、略称民医連が傘下の医療機関等を通じて行った調査では、正規の保険証と区別される資格証あるいは短期保険証を交付されたことが原因とみられる死亡者が、2011年度、平成23年度に全国的には17人にのぼっております。ここには資格証交付などの措置の撤廃が、一刻の猶予もできない事態になっていることが示されているのです。

 資格証の交付は震災直後に一時中断されたものの、他の時期は一貫して続いており、本年度は交付が再開されております。その件数は昨年交付を再開した8月1日時点では635件本年2月1日時点で1085件となっています。震災前の水準よりは少なくなっているものの、再開後、新規の交付件数が増え続けていることにみられるように、加入者が国保税の支払いをできないでいる現状が浮き彫りになっています。これを解決するためには、市民の所得水準に比べて高すぎる国保税を引き下げることが求められていると思います。

 本市ではかつて一人暮らしの男性が、保険証を窓口に留め置かれてしまい、窓口に相談に来ることが出きなかったために保険証を受け取る事ができないまま自宅で病死をして発見されたという不幸な事件がおきたことがあります。また資格証を交付された加入者が、病院にかかった時には手遅れで死亡するという事態もおこっております。こうした不幸な事態を防止するためにも、その原因となりかねない資格証の交付はやめ、納税相談の態勢を強化しながら、滞納者の実情にあった滞納の解決を図るよう方向を切り替えるべきと考えます。

 このようなことから資格証の交付を前提とした議案第38号には問題があります。否決をして、是正を求めるべきと考えます。

 以上議案第10号、議案第37号、議案第38号、議案第53号及び議案第54号について反対の立場から討論して参りましたが、満場のみな様のご賛同を心からお願いして討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。



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