伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

いわき市議会10月臨時会をネット中継で視聴した

2020年10月07日 | 市議会
 10時に開会した臨時会は、議会事務局長の進行のもと始まり、地方自治法の規定により年長議員が臨時議長に選出され、本会議が始まった。

 会議は冒頭に議長選出のための休憩に入った。

 この休憩は、いわき市議会が改革に向けて制定した条例「市民とともに未来をひらくいわき市議会基本条例」の第7条で「議会は、議長及び副議長の選挙に関し、市民への説明責任を果たすとともに、その選出過程の透明性を確保するため、議長及び副議長を志す議員が議会運営に係る所信を表明する機会を設けるものとする」とした規定を受けて、立候補の受付と引き続く所信表明会を実施するために設けられたものだ。

 今日、議会中継を視聴しようと考えたのも、この所信表明会が初めて実施されるからだ。私が委員長を務めた時の議会改革推進検討委員会でまとめられ、制定された議会改革推進条例の初めての適用となる所信表明会だった。いったい、どのようなものになるのか、確認しておきたいと考えたのだった。

 本会議の休憩中に行われた所信表明会では、志帥会の大峯英之議員、自民党一誠会の赤津一夫議員、共産党の菅野宗長議員がそれぞれ所信を表明した。



 大峰議員と赤津議員は、一層の議会改革を促進するとし、菅野議員は民主的運営に尽くすと述べた。議会の民主的運営は当然のことで、そのためにこれまで各議員が力を尽くしてきたと考えられる。私が市議の時代にも、そのための努力は続けられてきた。当たり前のことなのだ。このため、より共感を覚えたのは、市民の信頼醸成を目的にいわき市議会が議会改革を推進してきた経緯を踏まえて今後の議会改革の促進にふれた所信だった。共産党議員の所信は、この間の議会改革の取り組みを理解できていないためか、時代をさかのぼった古い見識に基づく所信にしか聞こえなかった。いわき市議会の取り組みをしっかり勉強する必要を感じるものだった。

 選挙の結果は大峯議員が18票、赤津議員が17票、菅野議員が2票となり、大峰議員が議長に就任することになった。



 議長候補が複数となり投票で選出されたことから、各派が合意したルールをに基づく指名推薦によって役職を決めるのではなく、投票による力対力で役職を取り合う形の議会づくりが進められることになったと類推できた。後にしこりが残らないことを願うばかりだ。

 続く副議長選挙でも、所信表明後に選挙が行われたが、立候補した創世会の佐藤和良議員が18票、つつじの会の安田成一議員が17票、無効票が2票となり、佐藤議員が副議長を務めることになった。

 ここで、疑問が湧く。今朝の新聞では副議長に安田議員に多数が賛同し選出されるという見通しが報道されていた。

 議長選の結果を見れば安田議員の当選は確実と見られた。大峰議員に投票したのは志帥会の11名、公明党の4名、つつじの会の3名と考えられる。合計18名となるので、おそらく間違いないだろう。

 一方、赤津議員には、一世会の9名、創世会の7名、清政会の1名で合計17名が投票したものと思われる。
 菅野議員には共産党の2名だ。

 議長選と同じ投票が行われていれば、安田議員が副議長に就任していたはずだ。

 ところが、つつじの会の安田議員が17票にとどまった。一方、佐藤議員が18票を獲得している。議長選では大峯議員に投票しながら、副議長では別の会派の人物に投票した議員がいたと考えられる結果だ。無効票は共産党の2名だろう。

 そう考えていた。しかし、違ったようだ。副議長選挙で共産党が佐藤議員に投票した可能性があるというのだ。

 漏れ伝わるところによると、共産党は臨時会当日になって、協定に同意できるなら議長選出に協力すると志帥会に申し出てきたという。志帥会側が会派内で協議の時間がないと伝えると独自候補を立て投票したようなのだ。共産党は、一方では、副議長については原則は第2会派からの選出だが、第2会派が立てないなら第3会派だとして、第3会派に協定を持ち込み、協定が了承されたので第3会派出身の佐藤議員を支持したというのだ。

 不思議な行動だ。
 1つは、ポスト配分を決めるルール作りを話し合う拡大各派代表者会議は、第1回目が9月28日に開かれている。臨時会まで10日ほどの期間があったのだ。協定について協議をしたいと考えるのなら、相手方が対応に要する時間を考慮して早い時期に申し出る必要がある。当日になって、協議の申し出をする行為には、相手方と話し合おうという姿勢は見られない。何らかの思惑があったとしか考えられないのだ。共産党は、どうしてこういう対応をしたのだろうか。

 それはともかく、この共産党の対応が事実なら、副議長選の無効票は共産党以外の議員ということになる。

 投票の結果を見た時に、無効票となった2票は共産党議員の投票だと考えたことは先に書いた。議長に独自候補を立て投票したのだから、副議長選でも候補を自ら立てるのが筋だが、候補を立てなかったことを踏まえれば当然にして白紙投票で無効票にすると考えたからだ。

 しかし、現実にとった行動は違ったようだ。この現実にとられた行動には矛盾がはらまれていると思う。それが2つ目の不思議だ。

 議長選挙で独自候補を擁立するなら、副議長選挙でも独自候補を擁立するのは自然な流れだ。そのそも、独自のルールに基づく役職分担がない以上、法の原則である投票によって選出することになるので、最も信頼できる会派のメンバーに投票することが議会運営上のリスクを最小限にできるからだ。

 ところが情報によると、共産党は議長選と副議長選で別の対応をとっている。議長選では議会独自のルールがないため独自候補に投票、副議長選ではかねてから共産党として求めてきた議長は第1会派、副議長は第2会派のルールの延長線上に、第2会派が候補を出さないなら第3会派とする独特のルールを新たに設定し、第3会派の候補者に投票することにしたのだ。協定を条件にしているが、そもそも臨時会当日に持ち出したもので、とってつけたものにすぎないと思う。

 この第3会派のルールは一見妥当なように見える。しかし、実際には、ルールを作りながらルール無用となる仕組みを作り出すものとなっている。

 第1会派から議長、第2会派から副議長というルールは、所属議員数によりその役職が決まってしまうので、その他の要素が入り込み、解釈する余地がないという点で明瞭なルールとなっている。多数派工作が意味をなさないのだ。

 ところが、共産党が主張したように、第2会派が候補を立てないなら第3会派からとするならば、第3会派が立てなければ第4会派、第4会派が立てなければ第5会派と無限に候補を擁立できる対象を拡大することになる。つまりどの会派でもいい、何でもありとなるのだ。その結果、多数派工作による会派間の取り引きをする余地が生じてしまうのだ。

 実際、今回の議長選挙の得票数から、会派間で合意する独自のルールを決められなかったことで、志帥会と公明党・つつじの会というグループと一世会と創世会・清政会というグループで多数派の形成を目指した争いとなったことが類推できる。ここで、共産党のいう議長第1、副議長第2、第2が出さないなら第3からという独自のルールは、第2会派と第3会派がグループとなって役職を狙った場合、そのグループの多数派工作を後押しするものとなることは明らかだ。つまり第2、第3会派の多数派工作に加担するためのルールになってしまうのだ。実際、今回の投票行動を見れば、その通りとなっている。

 4年前、私が団長を務めていた共産党市議団は、当初のルール作りにおいて議長第1、副議長第2をルールとすることを主張していた。ところが、ルールを決める拡大各派代表者会議の席上、第2会派の副議長候補とされていた者が、「監査委員は一般質問をしないことを旨とする」という与党会派内で慣例とされていたらしい古いルールを持ち出し、これを議会全体のルールとして確認しようとした。このことがきっかけとなり、議長等の選出のルール作りが破綻した。議員の発言する権利を抑制するようなルールには問題があり、その考えを持っているものを副議長することはできないからだ。その観点から会議の場ではくだんの者に発言撤回を求めたのだが、この求めは入れられず、この結果、第1、第2というルール作りが破綻し、指名推薦による役職配分のルールの確立が断念され、投票で選出することになったのだ。

 投票の際、共産党市議団としては、第1会派から議長、第2会派から副議長のルールに基づく投票行動をとることにし、が問題発言をした議員以外の副議長候補を出すなら第2会派の副議長候補に投票することを第2会派に伝えていた。しかし、第2会派からふさわしい候補の打診がなかった。やむをえず、議長選では独自の投票ルールに従い第1会派の候補に投票し、副議長候補では会派独自の候補である会派代表、すなわち私に投票した。この結果、議長、副議長共に、第1会派の志帥会から選出されることになったのだった。

 議長第1、副議長第2、第2が出さなかったら第3というルールに似たような主張したこともある。それは委員会の正副委員長等を決定する際のルールにおいてだった。

 正副委員長の会派への配分は、会派所属議員数によるドント方式で決定されることが常だった。すなわち、会派所属議員数を1から順繰り正数で除して得られた数字の大きさで役職の獲得数を決め、大会派から獲得数に応じて希望するポストを順繰りに総取りする方式でポスト配分を進めていたのだ。この結果、大会派は希望する主要ポストを独占し、獲得したポストから自らのグループとなっていた少数会派にポストを配分するという行為が見受けられていたのだ。

 こうした大きい会派の行為を排するために、私が主張したのが、委員会等のポスト配分は、ドント方式で決まった役職数を総取りする方式ではなく、ドント方式によって得られる順位に基づいて希望するポストを順繰りに獲得するようにすべきであるというものだった。この際、ポスト獲得の順位は決まるものの、会派の所属数の状況から、配分されたポストを担うことができなくなる会派が発生することも考えられた。その際には次の順位の会派にポストの確保権が移ることになる。この最後の部分だけが、今回副議長選にあたって共産党が持ち出した第2が出さないなら第3からに似ている部分となる。しかし、今回、共産党が主張したという、副議長選における副議長第2で、第2が出さなかったら第3からというルールとは明らかに異なるものだった。

 共産党が求めた議長や副議長の候補に求めた協定がどのような内容かは分からない。議長選挙の所信で発言していた、市民の暮らしや営業を支える施策の実行を一丸となって進めるであるとか、国や県に意見をあげる、あるいは、公正・公平な民主的な議会運営であるとするものならば、これまでの議会運営で到達した地平と全く変わらない。

 一方、今回、当選した副議長候補が、議長や副議長のポストは2年交代制にする議会改革の議論をすすめる必要があると所信表明をしている。にも関わらず、その候補に投票したとするなら、共産党としても議長・副議長は2年交代とすることに賛意を示したことになる。前期までの共産党議員を含む共産党市議団、あるいはこれを引き継いだ共産党・市民共同の中で、こうした考えに賛意を示したことはない。なぜなら、議長・副議長には、ふさわしい人物が就任することが必要で、その任期は法に基づく4年が原則と考えていた。仮に、2年で交代にしようとするなら、議長等を排出した会派内で調整すればいいだけで、議会全体として2年の任期に責任を負う必要はないと考えていたのだ。

 いずれにせよ、今回の議長・副議長選挙から、共産党も含め思惑ばかりが先行するような事態が垣間見えたし、市議会が、これまで以上に大いなる困難を抱えたことを理解できた。車の両輪として議会が一丸となり執行部に対峙する状況を作り出すにあたり、それぞれの会派の思惑優先の事態を克服して前に進む議会を作り出すことが課題になっているとも思えた。

 新しく議会を担う議員のみなさんは、それぞれの会派の思惑を乗り越えた議会運営を確保するために、多くの労力を消費せざる得なくなるだろう。議会一丸となって執行部や国・県に市民の声を伝えることができるようにするためには、その努力は非常に重要な意味を持つことになりそうだ。新しい議会のみなさんに、そのための奮闘を期待したい。そのように思う臨時会だった。 


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