伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

彦根学習支援・富山型デイサービズ視察を議員だよりにまとめました

2016年01月26日 | 福祉・医療
 今朝の寒さはピカ一でした。玄関先の温度計で午前6時30分頃の温度はマイナス4度。おそらく今シーズンで一番の寒さになっていたものと思います。

 さて31日付けの議員だよりは、先週の市議会視察をテーマにすることにしました。これまでのブログではふれなかった部分も含めて原稿にしました。ご覧ください。




市議会常任委員機が先進自治体に視察/市民福祉・建設水道の報告


 いわき市議会の各常任委員会は、この1月、各地の先進事例を学ぶための視察に出かけました。17日の週には市民福祉常任員会と建設水道常任委員会が、24日の週には文教教育常任委員会と総務常任委員会が、それぞれ2泊3日の日程で出かけました。今号は市民福祉の視察内容を紹介します。

貧困家庭の学習支援を彦根市で/富山型デイサービスを富山市で

 市民福祉常任委員会は1月19日から21日の2泊3日で、滋賀県彦根市で貧困家庭の子どもへの学習支援、富山市で富山型デイサービスについて学んできました。

■学習支援・彦根市

 彦根市の貧困家庭に対する学習支援は、当初、貧困世帯の親から子への貧困の連鎖を防ぐため生活保護世帯の中学生を対象にスタートしました。



 元教員や教員免許所持者を「正規サポーター」として非常勤職員で雇用し、生活保護世帯(現在は生活困窮世帯も)の中学生を対象に学習支援を行います。

 現在は、4名の正規サポーターと臨時的に雇用するスポット支援員(時給が1,000円)で、生活保護世帯の中学生28人(対象者は38人)、生活困窮世帯の中学生や高校生など8人(昨年12月の実績)を支援しています。

 実施している自治体では、対象となる生徒たちが集る居場所を設置し支援するケースが多い中で、個人情報の保護等も考慮して、対象生徒に問題のプリントを郵送で配り、集めた回答を添削して、個別に指導する形をとったことが同市の特徴です。

 ところが始めて見ると、対象となる生徒には回答を提出することさえ困難な場合が多いことが分かり、生徒たちを訪問する方法も取り入れたといいます。

 訪問して見えてきたことは、これらの世帯には学習以前の問題として、学習をする環境がない場合もあるということでした。

 環境を整えるために、片づけなど生活の改善をはかることを支援したり、他の福祉サービスと連携して環境改善の課題に対応する場合もあるといいます。

 また、親の理解をえられないなど、どうしても家庭に環境が整わない場合には、窓口に来所して学習する機会も提供したといいます。

 学習支援はあくまでも個別に行います。家庭にプリントを届けた際に学習支援をしたり、窓口に来所した場合には、個別に場所を確保し、1時間ほどの支援を行うといいます。

 成果は上がっており、学習に意欲を持ったり、学習の習慣化に結びつくケースもあります。また、昨年度は14名の中学校卒業生のうち、希望する13名全員が定時制高校への進学を実現したといいます。



 本市は、学習支援について「何ができるか検討」としているだけで、具体的な支援の方向は打ち出していません。

 また、本市で実施する場合には、全国的な事例と同様に学習支援のボランティア確保が課題としています。

 彦根式の支援活動は、家庭の実情に合わせて支援ができるメリットがある一方、対象となる生徒が多人数になると対応すが困難になってくるようにも思われます。

 生徒を集める一般的な居場所づくりの方式と、個別指導で家庭も含めて支援する彦根方式。その良さを両方取り入れた仕組みで、多くの子ども達に、広く厚く学習支援ができるように検討をすすめることが必要なように思われます。


■高齢者も障がい児・者も子どももいっしょ/富山型デイサービス

 富山型デイサービスは、一口でいうと、一つの施設で高齢者、障がい児、障がい者、幼児など障がいのあるなしにかかわらず誰でも利用できる施設です。


デイケアハウスにぎやか。2階で視察を受け入れ中で、1階で介護を受けているお年よりが見えます


 こうした形でのサービスが生まれたのは1993年のことでした。

 日赤に勤めていた看護師3人が、「自宅に帰りたい」と退院するお年よりが泣いている姿を多数見ていることから、家庭的な雰囲気のもとで、ケアを必要とする人たちの在宅を支えるサービスを提供したいと考えて、開設されました。

 当初はこのような複合的サービスを提供する施設に該当する行政上の制度はなく、まったく支援がない中でスタートしました。

 やがて利用者等の声に押されて富山県が運営費等への補助制度と作り、介護保険の給付や障害者自立支援法による措置費が収入となるようになってから、この補助制度は廃止されました。

 一方、施設を新築・民家等の改装をする場合に県と市で3分の2を助成する(基準額は新築で1,200万円、住宅改修で600万円)補助制度があり、富山市は、現在43施設から、将来的には小学校区に1カ所の64施設にしたいといいます。

 1日の利用定数は15人から20人程度の小規模施設で、この定数は介護保険のデイケアの基準で決定されます。この枠内で、高齢者、障がい者、障がい児などを受け入れることが可能となっています。

 ただここには問題があって、障がい者等の措置費は介護保険による給付よりも少額となるために、介護保険利用者が多い方が施設の収入が大きくなるため、障がい児・者もいっしょに支援を受けるという理念とのかねあいが難しいということです。

 そこは施設開設者と職員の働きがいとのバランスを取りながら施設の運営をすすめているといいます。

 富山型デイサービスでは、こどもから高齢者まで様々な状態の方々がいっしょにサービスを受けるため、高齢者が子どもの面倒を見たり、障がい者がスタッフの手伝いをするケースも出てきて、症状の改善や生きがいにつながるという側面があるようです。

 視察は、富山市で担当者の説明を聞いたのち、特定非営利法人にぎやかが運営する「デイケアハウスにぎやか」を訪ね、活動状況等について説明を受けました。

 住宅地の中に新築で設置された民家風の施設で、定数は22人です。

 対応したのは、スタッフと脳性まひのやまちゃんと呼ばれる施設利用者、そして介護保険で施設を利用することになったれいこさんと呼ばれる80歳の女性でした。

 やまちゃんは説明要員で、スタッフといっしょに施設の説明や利用者の気もちなどを語り、れいこさんはコーヒー入れの名人と呼ばれ視察者にコーヒーを出す係りを担っていました。

 れいこさんは入所時は要介護5で、ほとんど動くことができなかったといいます。この日の動きにはそんなことはみじんも感じませんでした。

 富山型デイサービスの利用が、機能回復を促進したものと思われました。


視察の様子。右端で背中姿の女性が障がいを持つやまちゃん。説明を担当しています


 さて、法人にぎやかは、デイケアハウスとともに、認知症対応のデイケア「かっぱ庵」、日中のデイケア利用者が夜宿泊できる「にぎやか荘」(家賃は3万800円から4万円のアパートと思ってください)を運営しています。「にぎやか荘」の夜のケアは当直者が当たります。

 デイケアに定まった日課はなく、「きょうは天気が良いから公園で食事」など家庭での日常生活に近づけるようにし、また、最後まで面倒を見ることを理念に、看取りまで行っているといいます。

 施設開設から10年程は病院に送っていたものの、施設に帰りたいという利用者を引き取り看取ることを決意意、それ以降10人程を看取ってきたといいます。

こうした体験を通じて、病院に行かない選択もあるとともに、死は赤ちゃんの誕生と同じく自然のもので、利用者たちは「日常の生活に老いと死を取り戻さなければならない」と思ったといいます。

 にぎやかのお話を聞いていて、この施設は、こうしてスタッフと利用者とボランティアたちが交わりあいながら、自分たちの可能性を広げながら歩んでいくのだろう、そんな思いが湧いてきました。

 とても理想的な施設に感じますが、こうした施設は基本的には迷惑施設ととらわれがちです。隣近所が少しでも理解してくれるまでには時間もかかったようです。

 お話の最後はこう締めくくられました。

 「大きな夢も野望もありません。スタッフが変わっても、制度が変わっても、行政にいじめられても(“今はそんなことありませんよ”と合いの手が入りました)、近所に後ろ指をさされても、自分たちの味を守り続ける」

 おそらくそんなバイタリティーを持って、今後も施設は運営されていくのでしょう。そんな印象を持ちました。



 富山型デイサービスはとても良い施設だと思います。

 いわき市でこういう施設ができるかどうかは、まず、施設開設者がどのような考えを持つかが問題になります。そしてこのような施設を持とうと思った時に、行政が縦割りの思考から抜け出して、複合的な使い方を許すのかどうか、ここも問題になります。

 利用者の自由を最大限尊重するような運営は、スタッフにとっては労働の強化につながるでしょう。逆にだからこそ小規模でなければできないということもあるのでしょう。

 理想的な施設が現実になるように、本市にどんな課題があるのか、整理していきたいと思います。


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