伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

いわき職親かいの視察懇談会でドームいわきベースを訪ねた

2020年01月17日 | 視察
 ドームいわきベース(DIB)は、株式会社ドームが扱うスポーツ用品のアンダーアーマー製品の物流拠点として、いわき市常磐上湯長谷地内に整備され、2016年5月から本格的な出荷を始めている。

 もともと、DIBは東日本大震災をきっかけに整備されることになったという。
 震災後、株式会社ドームは被災者支援の活動をはじめ、物資等を届け被災者支援をするために、調達したトラックに東京でガソリンを詰め、行ける所まで行こうと出発し、到達できたのがいわき市だったという。そのいわき市でアンダーアーマー製品の無償提供や義援金の提供などの活動をすすめたものの、この一時的な支援から恒常的な支援に切り替えたいという希望と、それまでのドームの物流拠点が手狭になり整備が必要になっていたという事情が重なり、新たにいわき市に物流拠点を整備したのだという。事業所を立ち上げることで、被災地で雇用を確保し、経済循環の確保を通じて、被災地を恒常的に支援しようというのだ。

 DIBは、ドームが100%出資する株式会社ドームユナイテッドが運営している。視察はこのユナイテッドが担当し、DIBと併設するIWAKI FC パークを見学し、説明を受けた。

 施設の概略を見ると、DIBは4階建て約54,900㎡(16,315坪)。3階、4階が倉庫で、2階が製品を各販売店に仕分けする作業スペース、そして1階が、出荷と返品の仕分け等を行うスペースとして活用されているという。


4階の倉庫スペース。棚は高さ10mで、耐震性を持たせ、震度5の地震でも、箱が1個落ちただけで済んだという。




2階の仕分けスペース。製品を各店舗別に仕分けし箱詰めをする。下の機械は、店舗別に製品を仕分けするラインだが、自動化を抑制し、人の作業を確保したという



1階の返品部門。返品を色やサイズ別に仕分けし、アウトレット商品などに振り分ける作業を進める。この部門に障がい者の多くが働いている


 また、IWAKI FCパークは、背後に人工芝のグラウンド「いわきFCフィールド」を配置し、いわきFCを運営する株式会社いわきスポーツクラブのオフィスやレストラン・ショップなどが入る複合施設となっており、このような形態は全国的にもこの施設しかないという。

 三階のレストランスペースでは、3月までの期間限定で、災害支援の観点からいわき産の作物を利用した食を提供する「夜明け・キッチン&マルシェ」が営業しており、地域貢献を強く意識した事業展開を感じる事ができた。

 1階の販売店では、アンダーアーマー製品の格安のアウトレット商品も購入できるようだ。






 さて、本題はここからになる。

 DIBでは318名、うち正社員は153名が働いている。平均年齢は22才。若い会社だ。うち70名は市内や県内出身だという。
 このうち23名が障がい者で、勤務歴は3年から1年以上になるという。雇用はハロワークや支援学校の協力をいただき進めているというが、本格操業当初から障がい者雇用に取り組んできたということになる。うち17名が精神障がい者だという。職親会に参加する他事業所では、肢体障がいが中心で、精しん障害への対応が困難と考える傾向があるという。これだけの精神障がいの雇用を確保していることには驚きを感じているようだ。

 障がい者は、作業シフトのうち2つのシフトで、主に1階の返品コーナーで返品製品を色やサイズで仕分けする作業に従事している。他には清掃や事務作業に従事する者もいる。待遇は健常のパート職員と同じという。 それぞれのグループには正社員が配置され、仕事の仕方を指導すると同時に、作業の様子を見ていて、様子がおかしい人には、休憩をとったり、場合によっては面談に導くことで、安定し手仕事ができるように工夫しているという。様子がおかしい場合、場合によっては、ちょっと散歩に出ようと誘い出し、敷地内を話しながら周回することもあるという。すると気持ちが落ち着いて、自ら「仕事に戻ります」と作業に復帰するという。

 本人にやる気がある場合は、その希望によって「チャレンジ」することも可能で、2名が2階で機械を使用する業務に就いているという。その業務に適応できるならば、配置転換を行い、もし適応できない場合は、返品の作業に戻らせる。そのために「チャレンジ」では、所属はもとの返品の部署に置いたままにするという。

 また、今後は、障がい者が安定して働くことができるよう、当人、家族、会社による三者面談を実施することを検討しているという。何か問題が起きた時に、障がい者が言い訳の気持ちを持ったままだと感情的なすれ違いを残し、この蓄積で離職につながる恐れがあるために、顔族も含めて話し合うことで、気持ちの改善につなげる期待を持っているという。

 ユナイテッドの担当者は、こう話した。
 「障がい者にとって会社に来ること自体が闘い。起床し、家を出る時など何段階も出社への葛藤がある。もし、本人が休もうとする時には、担当主任が電話を受けるルールになっており、『休みますか』『はい、そうですか』で終わらず、できるだけ詳しく話を聞き、出社できると判断できれば、『遅刻してもいい』『だめだと分かったら早退してもいい』と、とにかく出社することを促すようにして、出社の習慣を身に付けられるようにしています。」

 障がい者雇用に向けて企業は企業なりに努力しているということだ。


 職親会の参加企業等からは、本市の障がい者の雇用率が改善し、福島県や全国平均を上回り2.20%になっている一方、未だ雇用できていない企業も多く、より多くの企業が雇用する状況を作ることが必要だと報告があった。また、先進的に雇用してきた事業者は、職場の障がい者は10代から70代まで幅広く、職親会が組織された頃に、その障がい者の年齢や能力に応じて、職場を移りながら働き続けることができる環境となるよう夢見ていて、そのために多くの職場が障がい者雇用に取り組むことを希望していることを語った。

 また、
常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で障害者雇用率(2.2%)を超えて障害者を雇用している場合は、その超えて雇用している障害者数に応じて1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金を支給する「障害者雇用調整金」と、
常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合に、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に21,000円を乗じて得た額を支給する「報奨金」の制度があるものの、
さらに障がい者雇用を進める観点から小規模な事業者に対する助成金の制度が必要という意見があった。

 さらに、精神障がい者の雇用を促進するためには、就業を希望する者の発達程度やコミュケーション能力などを現場で確認するために企業等での実習が大切になるが、この実習先の確保に困難な状況があり、市独自に実習受け入れに対する助成制度の創設の検討を求める意見があった。合わせて、障がい者の就労を困難にする要件の一つに、通勤手段の確保があり、公共交通機関に劣る本市では、深刻な問題でもある。何らかの交通手段の確保も必要との意見があった。


 事業者の取り組み等を聞いていると、障がい者雇用は様々な職場で可能という印象が強まる。近年、発達障がい等が問題になる中で、こうした人々も含めて安心して働ける環境を整えるためにも、障がい者雇用の拡大の取り組みは大切な意義を持っていると思う。

 だされた意見を参考に、市議階の活動に活かしていきたい。


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