職親会視察に参加
きめ細かい対応で精神障がい者の雇用継続
本格出荷から3年半のDIB
きめ細かい対応で精神障がい者の雇用継続
本格出荷から3年半のDIB
障がい者の雇用拡大をめざして活動を続けている「いわき市障がい者職親会」(職親会)が主催する市議会議員との視察・懇談会のご案内をいただき、会派からも参加しました。視察をレポートします。
職親会は、市内の事業所や障がい者の保護者、教育機関等が参加する団体。21年前に旗揚げし、昨年、特定非営利活動法人となり、障がい者雇用の拡大をめざして活動を継続しています。
視察・懇談会は毎年開かれ、今年はドームいわきベース(DIB)で、障がい者雇用の状況を伺いました。
DIBは、スポーツ用品・アンダーアーマの製品を扱う株式会社ドームの流通拠点で、2016年5月から本格的な出荷を始めています。運営会社は、ドームが100%出資する株式会社ドームユナイテッドです。
いわき市進出のきっかけは震災でした。被災地への継続的な支援をしたいという希望を持ち、既存の物流拠点が手狭になっていたことが重なり、いわき市進出を決めました。
従業員は正社員が318名、うち正社員は153名(2019年4月現在)で、市内・県内出身者はほぼ半数。平均年齢22才の若い職場です。
このうち障がい者は23名で、勤務年数は1年から3年。17名は精神障がい者といいます。
DIBは、4階建てで、3階、4階が倉庫、2階が店舗等に出荷する製品の仕分け、1階が出荷と返品の処理を担当するフロアです。
返品の作業は、売れ残りや、季節による入れ替え時に戻された製品を、色やサイズ別にそろえ、アウトレットの商品などに回す作業だといいます。
障がい者の多くがこの部門に所属しており、他に清掃などの業務に就いています。
希望する障がい者が、所属を現状に置きながら別の業務を担当する「チャレンジ」という仕組みもあり、より作業が複雑な仕分けの業務に2人が就いているといいます。
障がい者就労を支え
職親会に参加する他事業所は、安定的な就労の観点から身体障がい者を中心に雇用しているといい、精神障がい者を多数雇用する同社に驚きを語っていました。
同社の担当者は、「障がい者にとって会社に来ること自体が闘い。起床し、家を出る時など何段階も出社への葛藤がある。もし、本人が休もうとする時には、担当主任が電話を受けるルールになっており、『休みますか』『はい、そうですか』で終わらず、できるだけ詳しく話を聞き、出社できると判断できれば、『遅刻してもいい』『だめだと分かったら早退してもいい』と、とにかく出社を促すようにして、出社の習慣を身に付けられるようにしています」と、会社の対応を説明していました。
また、今後は、障がい者の雇用継続のために、当人、家族、会社による三者面談の実施を検討していると説明します。何か問題が起きた時に、当人が言い訳の気持ちを持ったままだと、感情的なすれ違い蓄積して離職につながる恐れがあるため、家族も含めて話し合うこれを改善することを期待してのことです。
就業確保に支援を
懇談では、本市の障がい者の雇用率が改善し、福島県や全国平均を上回り2・20%になっている一方、いまだ雇用できない事業所も多いと報告がありました。
また、職親会が旗揚げした頃に、障がい者の年齢や、加齢に伴う能力の変化に応じて職場を移りながら働き続けることができる社会をめざし、多くの職場が障がい者雇用に取り組むことを求めてきたとの発言もありました。
その実現に向けた、現時点での問題点も発言されました。
一つは、「障害者雇用調整金」が適用されない事業者に対する、何らかの助成制度を作ること。
二つ目に、精神障がい者の雇用の前提となる本人の特性やコミュニケーション能力を確認する機会となる実習の受け入れ企業を増やすために助成制度を設けること。
三つに、就業の障がいになる通勤手段を確保すること。
障がい者が働きやすい環境は、健常者が働きやすい環境を作ることとなることは間違いありません。障がい者雇用から見た問題点を克服しながら、健常者も働きやすい環境を創設するために、これらの要望に向きあっていく必要を実感する視察となりました。
文=伊藤浩之
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