伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

オリーブによる町おこしを小豆島で学ぶ

2013年02月06日 | 視察
 1月22日から25日の文教経済常任委員会の視察のうち、24日に行われた視察をまとめていなかったので、まとめておきたいと思います。

 姫路港からフェリーに乗船し、1時間40分程で小豆島の福田港に着きます。乗船した船は「あずき丸」。女優の仲里依紗さんが「あずき島」と看板の文字を読むと、少年達が「小豆島じゃがな」と答えるテレビのCMが頭に浮かび、思わず頬が緩みました。

 小豆島は今回の視察で実は3度目。今から30年ほど前、当時の運輸省関連の労働組合青年部の交流集会の関係で2度訪ねています。全日本港湾建設労働組合(略称は日港建)青年部の中央執行委員会の役員だったことから、実行委員の一人として現地実行委員会に参加したのが1回目(最もこの時は前日の集合時間に遅れ、翌日の新幹線で追いかけて、岡山港から高速船に乗って現地着は午後3時頃。その時には目的の用事はほどんと終えていましたが…)。そして2回目は本番の交流集会。現地での実行委員会ニュース担当の一人として活動していたため取材以外はホテルの部屋に缶詰だったことを思い出します。

 同島からは大阪城の石垣の石を切り出していたと言います。目的地の「道の駅 小豆島オリーブ公園」に向かう436号線の途上には、切り出した際に8人の工夫が犠牲になったという「八人石」という史跡が残されているとタクシーの運転手さんが案内してくれました。その石の背には四角い穴が直線状に並んでいます。その穴にくさびを打ち込んで石を割るのだそうです。やはり運転手さんの説明です。

 視察目的の「道の駅 小豆島オリーブ公園」では、小豆島町の塩田幸雄町長、町議会の秋長正幸議長、オリーブ課の担当者が説明に当たりました。

 小豆島のオリーブ作りには戦争が影響しました。日露戦争の結果漁場が拡大し、漁獲した魚を缶詰にする油が必要になりました。1908(明治41)年、明治政府が三重、香川、鹿児島の3県で栽培に取り組み、小豆島(香川県)だけで成功しました。オリーブ栽培は国策として進められたわけです。オリーブにさした戦争の影は驚きでした。

 小豆島での栽培は、1964(昭和39)年には130haまで拡大します。その後減少に転じました。輸入が拡大したことが原因です。1985年には34haまで減少しました。そして近年、構造改革特区によるオリーブ振興特区の認定などを経て2011(平成23)年末には栽培面積約120haまで回復しました。収穫量約120tで売上額は約60億円となっています。

 さて、このオリーブを活用した町づくりを小豆島町ではどうすすめていこうというのか。現在、九州地方を中心にオリーブの新たな産地化の動きがあるといい、このことをきっかけに町は「オンリーワン」から「トップワン」をめざすことにしました。生産者、加工・販売業者、試験研究機関、行政が連携して「オリーブトップワンプロジェク」を設立し、①歴史あるオリーブ産地を守り育て、②「小豆島」のブランド力を高める――ことを目標とし、研究開発、人材育成、品質の差別化、広報・宣伝に取り組むというのです。

 具体的な取り組みとしては小豆島産オリーブの成分分析を行い、鮮度面での優位性があることを確認しました。また人材育成で、栽培初心者研修会を年1回、リーダー候補者研修会を年2回行い、また品質面ではオイルブレンド講習会やオイル品評会を開催しているそうです。

 広報・宣伝の分野で、オリーブに関する試験で一定の成績があれば認定されるビギナー検定やマイスター検定の実施、大阪マラソンなど主要マラソン大会にオリーブの冠を提供する事業などを展開。さらにオリーブに親しむ取り組みとして、学校給食や病院でのオリーブオイルの使用をすすめていると言います。

 町長の説明は印象的でした。小豆島のオリーブは日本産オリーブの大きな部分を占めますが、それでも輸入量全体から見れば、わずかに0.02%程度にすぎません。外国とシェアを争っても、量の面から見ても、価格の面からみても太刀打ちできないとみられます。このためオリーブオイルの持つ健康のイメージを最大限に引き出し、このことを通じて医療費・介護費を抑えるとともに、オリーブを通して活性化する小豆島のイメージアップを図り産業の発展につなげていこうという戦略を打ち立てたというのです。

 2012(平成24)年度は、トップワンプロジェクトの一環として「オリーブを用いた健康長寿の島づくり事業」を展開、前述のように学校給食や病院・老人保健施設でのオリーブオイルの使用とともに、「健康レシピ」など新しい料理の募集、公民館事業として料理教室などの取り組みを展開してきたといいます。

 こうした小豆島の取り組みがどう結んで行くのかは、これからの推移を見守る必要がありますが、小豆島の取り組みにどう学ぶのか考えてみたいと思います。

 町のオリーブ担当者の説明では、オリーブ栽培には日照、風通し、そして水はけの良い土地が大切で、気候的には仙台辺りが北限になります。実際いわき市内では小川町でオリーブ栽培が取り組まれていますが、条件が整えば十分に栽培可能な地区ということです。しかし、栽培したオリーブを製品化し収入に結び付けていくかは、特別の努力や工夫が求められることになりそうです。一般的イメージとしては、レストラン等と契約しての販売、観光施設と結んで食事等での使用――などがあげられるでしょうか。

 同時に小豆島町でオリーブを活用した健康づくりというお話を聞いた時、思い出したのが徳島県上勝町で「葉っぱビジネス」での視察です。

 葉っぱを売るビジネスは「彩」というブランドとなり、木の葉などを採取・商品化し、そして全国に流通させるルートを作り上げられています。生産者は町の女性やお年寄りたちで、確実に収益をあげています。このため生産に生きがいを持って一生懸命取り組み、その結果、医療費が抑制されているというお話をしていたのです。

 生きがいづくり、働く場づくりは、健康で長生きする地域になっていくためにも大切。ここに着目した取り組みが小豆島町でも行われていました。小豆島も、上勝町もいわき市に比べればはるかに小規模な自治体です。それだけに行政と生きがいづくり・働く場づくりの現場には距離感が付きまといますが、その精神は、学ぶことが様々あるでしょう。いわき市は大きいといっても、小さな地域の集合体です。そして支所毎に地域振興担当員を配置し、それぞれの地区の住民などと協同しながら、まちづくり、地域振興に取り組んでいます。この分野にさらに力を入れていき、地域発の本格的な商品開発などの取り組みをすすめることが大切だということを、あらためて感じた視察となりました。

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 番外編。「道の駅」で見つけた面白そうなサイダーです。オリーブサイダーは、オリーブを絞る過程で生じた水分を添加したものだそうです。一本づつしか購入しなかったために、開栓すればそれでおしまい。それが心残りになりそうなので、いまだに冷蔵庫の中で冷やしたまま。ビンを見つめどんな味か想像して楽しんでいます。
 




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