伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

市長とふれあいトークで楮畑へ

2022年10月06日 | 遠野町・地域
 「ふれあいトーク」は内山広之・いわき市長が、市内各地を巡回しながら実施しているようだ。これまで勿来、好間、三和、田人、川前、久之浜・大久の各地区で開催されてきたようだ。遠野は7ヶ所目の開催となる。

 遠野地区では、遠野地区の伝統的産業であった遠野和紙関連の取り組みを視察してもらいながら、その後、遠野町地域づくり振興協議会関連団体の代表らと懇談をしたようだ。私は、遠野和紙・楮保存会の1員として、和紙関連の視察に参加したが、懇談には参加していないので、どのようなお話が交わされたか把握していない。

 視察は、深山田地区の楮畑で説明をした後、遠野和紙工房「学舎」に移動し、卒業証書サイズの和紙のため漉きを体験してもらった。

 視察開始は、事前の連絡では9時30分となっていたが、市長一行は20分も早く現場に到着。メンバーも揃っておらず、少し慌てた。

 私はと言えば、9時15分集合と言われていたのだが、時間に余裕を持ちすぎ9時前には現着。楮畑に入って雨宿りするトンボなど写真に撮ってのんびりしていた。



 トンボはナツアカネ。朝から雨模様だったし、気温も下がっていたので、じっとして温かくなる時を待っているのだろう。
 そんなところに市長が到着してしまったし、説明に立つであろう保存会会長はまだ現場に来ていない。畑に入る市長に途切れ途切れの説明をしていた。

 案内した畑は、閉鎖しなければならなくなった畑から株を掘りあげ、今年3月に植え付けたばかりの新しい畑で、その関係からか枝は十分に成長していない。古い畑の楮に比べて、背丈も、太さも、まだまだ足りない。来年以降に期待をしたい畑だ。



 その畑で、草刈りや芽かきなどの楮育成の取り組みを紹介しながら、これまでの芽かきから逃れていた脇芽をかく体験もしてもらった。

 畑の視察の後、学舎に移動した。
 保存会の作業は、夏場はほぼ畑となるため、学舎周辺の環境整備は日常にされている状況ではなかったのだが、例年、秋に周辺の草刈りなどを実施することにならいながら、市長が訪問してくることもあって、一昨日に作業を実施していた。



 写真の場所は、「学舎」の脇にある空き地で、作業実施時に駐車場などに使わせてもらっている。駐車場確保のためにも、草刈りをしておく必要がある。背丈を超えて伸び、太く育ったセンダンソウ(種が槍先のようで、福などにひっつく草)やススキの類、その根本にはイネ科の草がヒョロヒョロと40cmから50cmに伸び、しかも地面に横たわっている状況。草は重く、振り回す草刈り機にずっしりと重量を感じ、きつい草刈りだった。

 そんな重労働を終えると、学舎周辺はさっぱりした風情になったが、そこに市長を迎えたわけだ。

 「学舎」では、地域おこし協力隊のメンバーが、楮の収穫から和紙漉きにいたる工程を説明した。だいたいこんな感じになる。
①畑で1年目の楮の枝の収穫
②枝を2時間ほどかけて大釜で煮る
③枝から皮を剥ぐ
④剥いだ皮の乾燥
⑤乾燥した皮を水に浸けて戻し、3層(黒皮、甘皮、白皮)になている皮のうち黒皮と甘皮を削り取る
⑥白皮を乾燥し、保存する(和紙の材料となる白皮の製造はここで終了)
 次からは和紙漉きにいたる工程となる。
①保存した白皮を水に浸けて柔らかくする
②柔らかくなった白皮を大釜で炭酸ナトリウムを加えた水で煮る(煮熟というらしい)
③煮熟した白皮を流水等にさらしてごみや汚れを流す
④流水にさらした白皮から丁寧に汚れやごみ(ちり)を取り去る(ちり取り)
⑤ちり取りをした白皮を木槌等を使って石版の上で叩き皮の繊維をほぐす(打解)
⑥打解した白皮をビーター(刃がついた機会)にかけて繊維をばらばらにする
⑦トロロアオイの根を叩いた後に水にさらし、根が含む糊状成分(ネリ)を取り出す
⑧漉き舟に水をはり、繊維とネリを投入して紙料(和紙の材料となる水溶液)を作る

 ここまでして和紙を漉く準備が整う。

⑨いよいよ漉き作業だ。細く裂いた竹ひごを編んだ簀に紙料を汲みあげて水を切り、適当な厚さになるまでこの作業を数回繰り返す。適当な暑さになったら、漉いた紙をそろえて重ねる。
⑩漉いた紙に重しをかけ、水を切る。
⑪最後に板に張り天日で、あるいは乾燥機に張り、乾燥させれば完成。

 和紙漉きには「流し漉き」と「溜め漉き」という手法がある。

 私もそんなに詳しいわけではないが、「流し漉き」は比較的大判の簀に紙料をくみ上げて前後あるいは左右にゆすり、余計な水を簀上から捨てて紙料(繊維)の薄膜を作る。この作業を数回繰り返し、適当な厚みを作り紙とする。
 一方、「溜め漉き」は紙料を簀にくみ上げ、軽くゆすって厚みを均一にした後、水を滴らせてきる。この作業を適当な厚さになるまで繰り返して紙とする。

 市長が体験したのは「溜め漉き」だ。牛乳パックを利用したはがき作りでよく使われている手法だが、協力隊員の説明と援助を受けながら3回かな、上手に漉きあげていた。




 和紙関係の視察終了後は、遠野オートキャンプ場であかり展に使う小型行燈づくりを手伝った。
 作業そのものは、行燈の明かりとなる小型ライトの土台に白い紙を張って下地を作る作業だ。下地の上に色和紙を張り、色とりどりの行燈にしていく。




 行燈づくりは、9月30日にいわき湯本高校遠野校舎で実施した行燈づくりの時から始めた。
 あかり展は、高校の生徒たちの参加も得ながら必要な個数を用意する計画だったが、より多くの協力を得てより多くの台数を製作することを目指した。制作指導をする先生の関係もあると思うが、生徒たちの行燈づくりの授業に合わせて、同校舎の別室で地元遠野の方々や保存会のメンバーが集まり行燈づくりに取り組んだ。



 この日体験して、行燈づくりの大変さに気づいた。遠野和紙に、切り取った着物の端切れの模様を張り付ける笠製作は、模様の細やかさによって作業の大変さが変わる。細かい模様は、切り取りも、貼り付けも気を抜けず、時間がかかるのだ。

 笠ではない、灯りの機械部分をきれいに作り上げる第一歩が、白い紙をはりつける下地張りとなるが、この作業はどうやっても、1台当たり40分はかかる。必要な台数確保を考えると製作のペースアップが必要そうなので、できる範囲で行燈づくりをすることにした。

 今日の作業は、2時間で2台。3台分の材料を持ち帰った。
 がんばって製作しなければと思う。


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