伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

政策総務常任委員会視察を視察を記事にしました。2回目はサッカースタジアムに関して。

2019年01月30日 | 視察
 政策総務常任委員会は、1月23日から25日までの日程で、長崎市の公共施設マネジメントの取り組み、北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」の建設経緯や運営管理の状況を視察しました。2回目は、北九州スタジアムについてです。
 本稿は、一部加筆しています。



ホームチームがJ3でも厳しい運営・北九州スタジアム
夢実現は現実を変えてこそ



 本市では、いわきFCがJリーグ入りを目指していることを踏まえ、本紙既報のようにスタジアムを中心にしたまちづくりに関する可能性調査が続いています。


■ミクスタ整備

 視察した北九州市では、地元のサッカーチームがJリーグに昇格する可能性が高くなったことを踏まえ北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」(以下、ミクスタ)が建設され、2017年2月から運用されています。



 スタジアムの整備は、地元のサッカー協会とラグビー協会の要請を受けたもので、市スポーツ振興審議会の「Jリーグ規格を満たした球技場は優先的に整備すべき」との提言をもとに進められました。

 ミクスタはPFI(※)により建設・運営され、設計・建設に約99億円(うち30億円は、totoくじ助成金)管理・運営に15年間で約15億円、合計約115億円の事業費となっています。

 グランドは天然芝、15,300人(2万人以上に拡張可能)収容の観客席、小倉駅から徒歩7分の小倉港に面した民有地に立地しています。


ミクニワールドスタジアム北九州パンフレットから抜粋



■きびしい財政状況

 ミクスタの財政状況は厳しい。

 グランドの利用は年間100日を目標とし、実績は106日で194,000人の利用者となっていますが、収入はネーミングライツ(3年間で1億円)を含め年間5,000万円にとどまります。

 一方支出は、指定管理料1億円と借地料5000万円で合計約1億5000万円。収支差で約1億円の赤字となり、その分は一般財源から補てんされています。

 公共施設を収支だけで語るわけにはいきません。しかし、ミクスタはそもそもJリーグ入りをめざすチーム「ギラヴァンツ北九州」のホームとなることが前提です。収支のありようはしっかり検証が必要です。


運命共同体

 算段が狂った要因の一つは、ギラヴァンツのJ2からJ3への降格です。ミクスタの運用開始とJ3降格が重なり、観客動員数は1年目1試合約6,000人、2年目で約4,500人にとどまりました。

 観客動員数は施設の収入に直結します。プロスポーツで入場料を徴収する場合の施設使用料は、規定料金の3倍に加え入場料を含む総収入の4%とされています。

 例えば入場料を平均2,000円として年間15試合がほぼ満席の15,000人だったと仮定すると、規定料金と4%分の1,800万円が確保されますが、4,500人では360万円にとどまってしまいます。

 もう一つは、大規模なコンサート等の会場として使いにくいという事情があります。理由の一つは観客席が少ないため採算が難しい。加えて、近隣の福岡市に大規模な施設が多数あり、あえて北九州で開催する必要がないという事情があります。


視察する政策総務常任委員


 こうした状況の中、施設を管理・運営する指定管理者と市は施設の利用を増やす思案をめぐらせています。市民体育際等の市民スポーツでのグラウンドの活用、また会議室の利用なども推奨し、結婚式やウェディングフォト撮影に施設が活用された例もあります。しかし十分に活用を広げることはできていないようです。

 同市は、ミクスタ運用後1年間の経済効果を、チケットや交通費等の直接効果で8億円、間接効果で3億7,000万円と見込んでいます。ギラヴァンツの観客動員数の減少は、この経済効果も尻すぼみさせてしまいます。ミクスタとギラヴァンツは運命共同体なのです。


■Jリーグは先の先

 本市を見た場合、いわきFCが、今後、目標とするJリーグ入りを果たすためには、①東北社会人リーグ1部で優勝、②各地域の1部リーグ優勝チームによる全国地域サッカーチャンピオンズリーグで2位までに入りJFLに昇格、③JFLで4位までに入りかつJリーグ百年構想クラブに認定されたチームのうち上位2クラブであること――を満たして、やっとJ3に加入することができます。

 また、Jリーグ入りしたとしても、一筋縄でいかないことは、人口約94万人、新幹線の利便性が高い北九州市で活動するギラヴァンツとミクスタの例が示しています。


ミクニワールドスタジアム北九州パンフレットから抜粋



■前提は市民合意

 政策常任委員会は昨年、サガン鳥栖のホーム「鳥栖スタジアム」を視察しています。当時委員だった渡辺議員は報告で、サガンがJ1に昇格し、同市と周辺自治体の連携で支援を強めたことで、観客動員数が3000人程度から1万人以上になったと書いています。

 夢を実現するには、並々ならぬ努力が必要だということでしょう。

こうしたことから、本市がスタジアム事業を検討する際に、最も必要なのは、サッカー競技への市民の理解と、スタジアム整備への市民の理解にあります

 本紙2217号でもお知らせしたように、事業の前提として市民的合意を何よりも大切にすることを求めていきたいと思います。

※PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)=民間に公共施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法の一つ。

○お詫びと訂正=最初に掲載した記事で、運用が始まった時期を2017年4月としていましたが、2017年2月に訂正しました。


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