雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

タッチ操作・マニュアル操作

2014年10月03日 | エッセイ

 タッチ操作 マニュアル操作


 私の勤務先の駐車場は細長く、出入りが難しいので来場した運転の苦手な女性に代わっていろんな車種の車を運転する機会がある。私自身はもう30年以上オートマチック車を運転しているので、ときどき遭遇するマニュアル車を動かす際は、クラッチを踏むのを忘れて、たいてい2回はエンストしてしまう。勤務先の駐車場は狭い上に傾斜があってシフトチェンジだけでも難儀しているのに、いきなりの坂道発進はハードルが高過ぎるのだ。
 しかしそれは運転技術の慣れ不慣れだけの問題である。
 かつては他人の車でもカギを預かれば、しかるべき場所にカギ穴があり、カギを回せばエンジンがかかる。サイドブレーキもペダル操作か手でレバーを戻すかの方法をとれば解除できる。
 ところが最近の車は、まずドアキーの解錠からして、いろんな方式がある。まあ、それはカギに(だいだいキーと言いながら所謂カギの形状をした金属が全くないものさえある)錠前が閉まった状態の図と空いた状態の図がついたボタンがそれぞれあるので、多少時間はかかるが一人でも理解できる。
 次に運転席に乗り込み、エンジンをかけようとするのだが、その段階でおじさんは再び戸惑ってしまう。カギ穴がハンドルの右側根元の本来の位置にない。いやカギ穴そのものが無い場合もある。カギが近くに置いて、所定のスイッチを押すとエンジンがかかる仕組みとなっている。
 サイドブレーキも、馴染みの形状は見当たらず、探しまわってやっと中程のボタンスイッチが並んだ中に埋もれているのを発見したりする。だから最近は他人の車を動かす際は、実際に動き出す迄に時間がかかってしまうことが多い。
 私が普段乗っている車は、カギを回してドアを開け、ハンドルの右側根元のカギ穴に金属のキーを差し込み、回せばエンジンがかかり、サイドブレーキはレバーをがっくんと戻す、昔ながらの操作をすればよい。サイドブレーキが効いているか、解除されているかはレバーを見るか触れば一目瞭然だし、「ブレーキを確かに引きました」という手応えがあるのが安心だ。
 実は私はもう一台車を所有していて、こちらは専ら家人が乗っているのだが、これがまたいろいろハイテクのついた最近の車で私は月に1、2回しか運転しないので、エンジンをかけるだけでも毎回もたついてしまう情けない有様だ。まだ夜間や雨の日に一人で運転するのは不安だし、テレビはもちろん、オーディオを操作して運転中にBGMを聞いたことさえもない。
 そしてカーエアコン。気の短い私は、風力の段階を最強にし、冷房なら温度のレバーを最低温度に設定し、スイッチを入れた途端に「ガーッ」と音がするマニュアル操作のエアコンでないとイライラしてしまう。オートのエアコンだとスイッチを入れてもしばらくは室温を計測したりされているのかは知らないが、あの時間差が待てないのだ。だから以前乗っていたカローラフィルダーでは、標準装備のオートエアコンをマニュアル仕様に変更してもらった位だ。
 暑くなったら温度設定のレバーをより低温を示す濃い青い表示の方に下げ、寒い時は逆に、風力も4段階のツマミ式のスイッチを急ぐ時は、最強力に、落ち着いたら最低レベルに回せばよい。運転席の肌感覚ですばやく調整できるのでエアコンの動作にストレスを感じることはない。
 車と同様、音楽を聴くオーディオ関係もおじさんに理解できるのはCDやMDまで。その後に普及した様々な記憶媒体を使ったオーディオ機器には理解が及ばないし手が出ない。だいたいあんな小さなチップにどうやって膨大な量の楽曲を記憶できているのだろう。その点、LPレコードやテープは、曲の進み具合などもだいたいは目視出来る。特にカセットレコーダーで大切な録音するときはテープが回る様子が目視出来て安心できた。
 先日、情報番組で私の理解の及ばない最近の録音機で、わざわざテープが回っている様子を液晶画面で表示する商品が発売されたと知った。それを知って「やっぱりね」と私はほくそ笑んだのだった。
(2014.10.3)


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