▲体育の日は、久しぶりに娘を訪ねて鹿児島に行った。桜島は何度見ても迫力がある.
古豪のエール交換~九州地区高校野球熊本大会決勝戦
私は運動が苦手で、小さい頃から少年誰しもが経験する草野球をした思い出はほとんど無い。グローブは一度買ってもらったような記憶があるが、元巨人軍監督の堀内さんが新人投手で活躍した頃、投球後に野球帽が傾くのをまねていた思い出と、サードを守っていて、飛んで来たライナーが目を閉じながらバンザイしたグローブに玉の方から飛び込んでアウトをとり、喝采を浴びた思い出の二つ。
スポーツ観戦は大好きで、以前は巨人のファンで毎晩のように熱心にプロ野球のテレビ観戦をしていた。しかし球団によるファンの気持ちを無視したような(少なくとも私はそう感じました)運営に私は嫌気が差して、サッカーにJリーグが誕生してからは、ほとんどプロ野球を視ることが無くなった。最近は、サッカー日本代表の試合はもちろん、日本選手が出場するヨーロッパの国内リーグ戦までも楽しみにテレビ観戦し、サッカーJ2のロアッソ熊本の応援に競技場まで時々足を運ぶ程、サッカーがメインとなっている。大相撲も以前のようには視なくなってしまいました。
ところが、実は私がサッカーよりも一番熱くなるのは高校野球だ。
高校野球と言えば=甲子園だが、私は特に甲子園が好きなのではなく、甲子園を目指す、地元熊本の大会、それも母校である済々黌野球部の試合が大好きなのである。県内の公式戦があれば、日曜日の試合等日程が合えば、まず他の用事を延期してでも観戦、生の応援に球場まででかける。
公式戦は組み合わせ抽選会の段階から注目し、済々黌の試合がある日は、仕事の休憩時間にネットの試合速報をチェックしたりする。試合のある日は、何だか朝からソワソワドキドキし、あきらかに平常心ではない自分を感じる位だ。
先日の日曜日(10月14日)には、その念願の済々黌の試合の応援に行った。
九州地区高校野球熊本大会。所謂「秋の熊本大会」と言われ、上位2校は九州大会に出場権を得て、さらに九州大会で活躍しベスト4に残れば、春の甲子園にと、結果が結びつく重要な大会だ。
今年の夏に甲子園に出場し1勝をあげたレギュラーの内、3人を残す済々黌の新チームは、甲子園でも好投を見せたエース大竹と好調な打撃陣の活躍で順当に勝ち上がり、前日の準決勝で九州大会出場の切符を手に入れ、その日、熊本工業との決勝戦を迎えた。
熊工と言えば、九学と並んで甲子園常連の強豪校だ。他の県内のチームとはレベルが群を抜いている。嘗ては古豪と並び称された我が済々黌は、近年残念ながら両校とは大きく水をあけられてしまった。
しかし、今回は違う。大きな壁となって何度も甲子園出場を阻まれた熊工に今回は勝てるかもしれない。私は勇んででかけた。
それから他にも私が楽しみだったのは、両校の応援団によるエールの交換だ。
熊工なら応援団がいて、正式なエールの交換があるはずだ。私的には、ブラスバンドの伴奏付きで大声で校歌が歌えるだけでも十分喜びなのだが。
相当古い話だが、私が現役高校生だった頃は、多くのチームに応援団があり、必ずエールの交換が行われていた。しかも1回と7回、試合終了後と三度行う。
今回の決勝戦では、まず先攻の済々黌が1回表に。応援団長が済々黌の生徒に向かって指揮をとり校歌の一番を歌った後、「フレー、フレー済々黌!」と自校を応援。次に熊工の応援席に団長が向き直りゆっくりとした動作で「押忍」と腰を折って頭を下げた後に、「フレー、フレー熊工!」と相手にエールを贈るのだ。
すると、1回の裏の熊工の攻撃のときに、熊工の応援団長と生徒達は、校歌の一番を歌った後、「フレー、フレー熊工!」とやり、次に済々黌の応援席に向かって押忍と挨拶した後に、「フレー、フレー済々黌!」と私達にエールを贈り返すのだ。7回の表裏は同様に、試合後は勝った熊工の方からエールの交換があり、この日は伝統の作法にのっとった応援合戦も見事だった。
何度経験しても胸が熱くなる気持ちの良い応援の伝統だ。
ところが、最近ではほとんどの高校に応援団が無く、あっても野球部の補欠が臨時でする「にわかの応援団」のようで、応援のマナーがなっていない。自分達が勝った試合の場合など、試合後のエールを交換するどころか、喜びのあまりか、こちらが校歌を歌っている時に騒いだり、エールを贈っているときにもあきらかに聞いていなかったりする。自分達の校歌さえ歌うこともない。
常々このことを嘆かわしく感じていたから、伝統の通りに三度のエールを交換した熊工戦はそれだけでうれしかった。
試合は、残念ながら済々黌のエース大竹君が嘘のように熊工打線に打ち込まれ(初回トップバッターにいきなりランニングホームランを打たれました)、また好調の打撃も完封されてしまった。6対0の完敗でした。準決勝の両校の試合ぶりをラジオで聞いていた私は済々黌が勝つと信じていたのだが‥‥。新レギュラーの経験の無さが出た試合ではないでしょうか。
まあ、負けても九州大会出場は決まっているのだから、この日の結果は彼らにとっていい経験になったのではないかと、前向きに考えています。
試合後、足早に球場を出たところで、応援に来ていた背の高い熊工の制服姿の生徒が私を見てニコニコと会釈するので、「ん?」と思ったら、小さな頃から知っている上天草の実家の近所の子どもでした。向こうからあいさつしてくれたことが、とてもうれしくかった。
そのこともあり、そして三度のエールを交わすことも出来て、試合に負けた悔しさより、むしろ爽やかな気持ちになった。
済々黌の応援団長の試合後の挨拶の「九州大会の決勝で熊工と戦って次は勝つ」という話も「元気を振るう」済々黌らしさが出ていて良かった。
(2012.10.15)
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