双眼鏡を手にした老人が、私に話しかけてきました。老人といっても私よりは若い。
「今日は何種類ぐらい来てますか?」
「………?」
私は質問の意味も分かりませんでした。
「8種類ぐらいかなあ」
彼自身の自問自答でした。
私はやっと、問いかけの内容を察することができました。
彼は鴨の種類を訊ねたのです。
「さっき聞いたところでは、7種類らしいですよ」
知ったかぶりで答えたら、
「いや、今日は8っは来てますよ]と、老人は8種類にこだわっております。
「8種類ですかあ?」
私にはどっちでもいいので、中途半端に受けていたら、
「あれはマガモ、その横の2羽がカルガモで、それそれスーッと行ったのがオナガですよ」
確かに7~8種類の名前を教えてくれました。
話し相手を捜していた風情です。つまり、私はカモにされたのでした。
しかし、決して不愉快ではありません。彼の気持ちは分かっているつもりです。
その老人は、私の話題には素っ気ない返事でした。
「この山茶花は、なんという種類ですかねえ?」という私の問いに、
「こんなのは何処にでもありますよ!」
とりつく島もない返事でした。
それでいて、木の上の小鳥の声を聞きながら、今度は小鳥の説明に入りました。
ありがたいことでした。
別の探鳥ポイントへ、私を案内したい申し出がありました。丁重にお断りしました。
今日の写真は、その時の山茶花です。その老人には興味のなかった花ですが、可愛い花ですので、見てやってください。
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