「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。
―ごめんね、歳三。
―母様?
記憶の中の母は、いつも泣いていた。
何故彼女が泣いているのか、幼い自分にはわからなかった。
―必ず、迎えに行くからね。
母はそう言って、自分の前から姿を消した。
「若様、起きて下さい!」
「う~ん・・」
「今日は、大事な用があるのでしょう!」
「あぁ、わかったよ・・」
従者である斎藤一に叩き起こされ、土方歳三は渋々と寝床の中から這い出た。
「もぅ、御髪が乱れておりますよ!」
「別にいいだろ。」
「いけません!」
一は乱れた髪のまま出かけようとする主を制し、彼を鏡の前に座らせると、彼の髪を整えた。
「髪なんて、適当に流しておいていいんだよ。」
「嘆かわしい・・天下の皇太子様とあろうお方が・・」
「今は、その身分は捨てた。俺ぁ、しがない良家の坊ちゃんだ。」
「歳三様・・」
「さてと、行くか!」
「はい!」
屋敷から出た歳三と一は、打毬大会へと向かった。
「姫様、こちらにいらっしゃったのですね!」
「小梅(シャオメイ)、勝手に何処かへ行ってしまってごめんなさいね。」
「いいえ。それよりも、姫様は参加されないのですか?」
「ええ。」
「千鶴様はお綺麗なのですから、もっと自信をお持ちになって頂かないと!」
「わたしは、今のままでいいの。」
「姫様・・」
小梅の目から見ても、主である千鶴は天女のように美しい。
それなのに、当の本人がその美しさに気づこうとしないのは―
「あら、あなたも来ていたのね?」
「麗蘭・・」
「あなたって、いつ見ても陰気臭いわね。」
千鶴の腹違いの妹・麗蘭は、そう言うと千鶴の服を見て笑った。
「相変わらず、貧相だわ。」
「まぁ、あなたは、“顔だけ”がいいものね。」
「なっ・・」
「小梅、行くわよ。」
顔を赤くして喚く義妹を無視すると、千鶴はその場から去った。
千鶴と麗蘭は、母親が違う。
千鶴の母親は、彼女が三歳の時に亡くなった。
後妻として入って来た継母の麗春は、先妻の娘である千鶴を邪険にした。
その所為なのか、千鶴は自己肯定感が低いまま育った。
それ故、彼女は己の美しさに気づかず、ひっそりと継母と義妹に虐げられる暮らしを送っていた。
打毬大会は、歳三率いる青組と、麗春の息子・麗秋率いる黒組の戦いが白熱していた。
「どちらが勝つのかしら?」
「黒組に決まっているわ!」
「あら、青組よ!」
麗秋は、苛立ちながら自分の従者に何かを囁いた。
すると、歳三の馬が突然暴れ出した。
「まぁ、一体どうしたのかしら?」
周囲が騒然とする中、歳三は落馬しないよう、必死に手綱を握り締めていた。
その時、一人の少女が歳三の前に現れた。
「何て命知らずな・・」
「一体、何を・・」
その少女―千鶴は馬に何かを囁くと、馬は暴れていたのが嘘のようにすっかりと大人しくなった。
「助けてくれて、ありがとう。お前ぇ、名は?」
「名乗る程の者ではございません。」
千鶴はそう言って歳三に向かって頭を下げると、その場から去った。
これが、歳三と千鶴の運命の出逢いだった。
「やっと見つけた、トシさん・・愛しい僕の兄上。」
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―ごめんね、歳三。
―母様?
記憶の中の母は、いつも泣いていた。
何故彼女が泣いているのか、幼い自分にはわからなかった。
―必ず、迎えに行くからね。
母はそう言って、自分の前から姿を消した。
「若様、起きて下さい!」
「う~ん・・」
「今日は、大事な用があるのでしょう!」
「あぁ、わかったよ・・」
従者である斎藤一に叩き起こされ、土方歳三は渋々と寝床の中から這い出た。
「もぅ、御髪が乱れておりますよ!」
「別にいいだろ。」
「いけません!」
一は乱れた髪のまま出かけようとする主を制し、彼を鏡の前に座らせると、彼の髪を整えた。
「髪なんて、適当に流しておいていいんだよ。」
「嘆かわしい・・天下の皇太子様とあろうお方が・・」
「今は、その身分は捨てた。俺ぁ、しがない良家の坊ちゃんだ。」
「歳三様・・」
「さてと、行くか!」
「はい!」
屋敷から出た歳三と一は、打毬大会へと向かった。
「姫様、こちらにいらっしゃったのですね!」
「小梅(シャオメイ)、勝手に何処かへ行ってしまってごめんなさいね。」
「いいえ。それよりも、姫様は参加されないのですか?」
「ええ。」
「千鶴様はお綺麗なのですから、もっと自信をお持ちになって頂かないと!」
「わたしは、今のままでいいの。」
「姫様・・」
小梅の目から見ても、主である千鶴は天女のように美しい。
それなのに、当の本人がその美しさに気づこうとしないのは―
「あら、あなたも来ていたのね?」
「麗蘭・・」
「あなたって、いつ見ても陰気臭いわね。」
千鶴の腹違いの妹・麗蘭は、そう言うと千鶴の服を見て笑った。
「相変わらず、貧相だわ。」
「まぁ、あなたは、“顔だけ”がいいものね。」
「なっ・・」
「小梅、行くわよ。」
顔を赤くして喚く義妹を無視すると、千鶴はその場から去った。
千鶴と麗蘭は、母親が違う。
千鶴の母親は、彼女が三歳の時に亡くなった。
後妻として入って来た継母の麗春は、先妻の娘である千鶴を邪険にした。
その所為なのか、千鶴は自己肯定感が低いまま育った。
それ故、彼女は己の美しさに気づかず、ひっそりと継母と義妹に虐げられる暮らしを送っていた。
打毬大会は、歳三率いる青組と、麗春の息子・麗秋率いる黒組の戦いが白熱していた。
「どちらが勝つのかしら?」
「黒組に決まっているわ!」
「あら、青組よ!」
麗秋は、苛立ちながら自分の従者に何かを囁いた。
すると、歳三の馬が突然暴れ出した。
「まぁ、一体どうしたのかしら?」
周囲が騒然とする中、歳三は落馬しないよう、必死に手綱を握り締めていた。
その時、一人の少女が歳三の前に現れた。
「何て命知らずな・・」
「一体、何を・・」
その少女―千鶴は馬に何かを囁くと、馬は暴れていたのが嘘のようにすっかりと大人しくなった。
「助けてくれて、ありがとう。お前ぇ、名は?」
「名乗る程の者ではございません。」
千鶴はそう言って歳三に向かって頭を下げると、その場から去った。
これが、歳三と千鶴の運命の出逢いだった。
「やっと見つけた、トシさん・・愛しい僕の兄上。」