まあ、色々あってこの半年以上ほとんで書いていなかったが、久しぶりに書いてみようという気になったので、書いておくことにする。
「また、東野圭吾!?」っていう声が聞こえてきそうだが、本日書いておこうとする『手紙』という作品は今まで読んだ東野圭吾のミステリー的な要素がほとんどなく、社会派という感じの作品だ。(ミステリーとしては、最後の兄の手紙の内容だろう)
あらすじを簡単に書いておくと、「貧しい兄弟がいて、兄が弟を大学に行かせてあげたくて、ある金持ちの家に強盗に入り、衝動的に殺人をおかしてしまう。その後、兄は長い服役に入る一方、弟は苦学して働いても兄のことがわかると会社にいられなくなったり、金持ちの恋人ができても兄のことがわかると親に反対されうまくいかなくなったり、やっと結婚しても妻や子供が無視されたりという感じでどうしようもなくなる」展開だ。
こう書くと、なんだか、そのへんにありそうな駄作に思われるかもしれないが、人間が抱く「殺人者の兄弟」というレッテルがいかに人生を狂わせていくのか、それはどうしようもないことなのかという表面的な「差別はよくない」ということを越えたところにあるもう一つの真実を描こうとする意欲作だと思える。
兄の書く手紙がもつ意味は何か?弟はそれをどう感じたのか?被害者の息子はどう感じたのか?弟の妻はどう感じたのか?
そして、自分ならどうするか?全く、重いテーマを淡々と書いた傑作といえよう。
まだ読んだことのない方は、一度、読んでみてほしい。
古本屋で買った189円(本当は590円+消費税、文春文庫)は本当に価値があったなあ。