もう、かなり前のことになるが、昨年11月14日付けの毎日新聞の文化欄に毎日出版文化賞特別賞を受賞された本としてタイトルの本が紹介されていた。
紹介文には作者の写真も掲載されており、まじめでさわやかな女性という印象で、現在英国に住んで著作活動をされているようだ。
新聞記事の紹介分のタイトルは「分断にどう向き合うか」となっており、
現在の英国における貧困や格差を扱った作品のようであった。
タイトルからの私の想像は「ブレイディさんの息子さんが日本人と英国人の混血で、差別されて気持ちがブルーで落ち込んでいる」という意味のように思えた。
作品を読むと、まさにそうした流れで英国における様々な問題(このことは少なからず日本でも起こっていることだろう)が読み取れる。
英国ではかなりはっきりとした上流階級と下流階級があるようで、水泳なんかでも上流階級の子供がほとんど上位を独占するらしい。
そうした階級社会の中で、今までカトリック系の小学校(上流階級の子が多い)に通っていた主人公が中学から「元底辺中学校」へ通いだし、いろいろな問題に遭遇するということである。
中でも、一番の問題はアイデンティティの問題。
英国では「チンク」(東洋人を軽蔑する言葉らしい)扱いされ、日本では「ガイジン」扱いされ、自分の居場所がないという問題だ。
みかこさんも英国で差別されるが、みかこさんは東洋人としても意識が強いので差別されてもあまりこたえないが、その子供になるとそうした帰属意識がイエローでもホワイトでもなくなる。
でも、同じような境遇の移民の友達とも親しくなり、音楽のバンドまで作る。
最後は、気持ちは「ブルーではなくグリーン(未熟、環境問題も含んでいる?)だ」と言っていたことが頼もしい。
この小説。小説というよりは、現代英国社会事情みたいな感じで、いろいろと知らない言葉の勉強にもなった。
たとえば、LGBTQ、アンダードッグ、IVF、FGM、マージライズド、ミッシングとラナウェイ
そうした中で、毎日新聞にも取り上げていたが
エンパシーという言葉は重要だと思う。(P73)
シンパシーは誰かの問題を気にかけること(共感といっても単なる同情的な消極的な感じ)だが、
エンパシーは小説の言葉を使えば、「自分で誰かの靴を履いてみること」すなわち、誰かの感情を理解する能力(感情移入)みたいだ。
単にかわいそうだという気持ちだけでなく、相手がこういう状況だから、こちらはこうしてあげようということにつなげる積極的な感情なんだろうと思う。
多様性が強まっていくこれからの社会において、こうした気持ちが大事になると思う。
なお、この本は図書館で借りて読んだのだが、最近の話題の本なので2か月待ちでやっと借りて読んだものである。私の後ろに15人待ちとのこと。
早く返さなければ。