10月23日(日) 晴
ルーズヴェルト・ゲーム
プロ野球日本シリーズがいよいよ始まりました。赤ヘル軍団相変わらず元気が良いようです。大谷君も2塁送球をカットするのを忘れてしまったのが敗因かもしれませんね。まぁこう言う点の取られ方をするとだいたい先が見えてしまいます。見ている方もあまりスカッとしません。
野球好きで有名なアメリカ第32代大統領のフランクリン・ルーズヴェルトさんが野球で一番面白い試合は8:7の試合だと言ったそうですが、それを題名にした池井戸潤氏の小説を読み終えました。最後になって自然と涙が出て来て素敵な物語を読み終えた充実感でした。
この小説はリーマンショック後の生産調整を余儀なくされた中堅の部品会社の直面した危機と苦悩と共に企業野球部の危機と苦悩が交差しながら様々な立場の人を通してハラハラ、イライラさせて進行して行きます。
企業経営を取り巻くどろどろとした人間模様が危機に直面して苦悩する新社長、厳しいことを言い表面づらの悪いが人生を達観した役員、邪魔者を排除するため様々な奸計に走るライバル企業とそれを取り巻く取引企業を通して実にリアルに描かれています。
その一方で会社の野球部も存続の危機に直面し、存続に奔走する部長、マネージャー、新任の科学的分析をする監督、ベテラン・若手の選手たちを通して心の葛藤、ライバル企業へ有力選手を引き抜いて移った前監督に対する闘志がリアルです。
まさに自分もこの会社の一員になったように自分だったらどう対処しようかなどとのめり込んでしまいます。人を単なる数字やコストとしてしか見ない人物たちへの嫌悪感の中で人が人であるが故の結末に胸を打たれます。
この小説は下町ロケットを彷彿させる爽快感や満足感があり、自分は好きです。
まぁ池井戸順氏の作品は江戸川乱歩賞の「果つる底なき」やあの半沢直樹の原作「オレたちバブル入行組」あるいは「七つの会議」などちょっとハードボイルドタッチのものと「下町ロケット」や「ルーズヴェルト・ゲーム」のような爽快な読後感のものがあり、自分はどちらかと言うと後者の好みなのです。もっともどちらも正しい物の見方が報われると言う点では似ているかもしれませんが自分には爽快になってあとに残らない後者が良いと言うことです。
読書の秋です。世の中には読み切れないぐらいに出版物が蔓延しており、とても読み切れるものではありませんが多少の縁があった本を読んでみるのも良いかもしれませんね。とかく人は自分の好みだけを言い張ったり、自分の役にたちそうだからなどと言った理由で本を選んでしまいがちです。いろいろな物に興味を持って気に入った物に絞り込んで行くし、またある時は方向を変えてみると言ったことでしょうか。まぁ人にどうこう言える人間でもありませんが。