月刊とれいん通巻100号は、1/87 12ミリ(HO1067)を松本謙一氏がぶち上げた号で知られますが、それと同時に上田交通別所線の特集号でもありました。
アイボリーと紺色のツートンカラーの渋い電車が気動車改造のサハを牽いて塩田平を走る姿の虜になったワタシは、83年の秋に初めて上田駅に降り立ったのでした。乗り換え駅の跨線橋は社線部分だけ狭く古く、物語のプロローグに相応しいものでした。
既に上田原の車庫には平面カエルが二匹顔を揃えて留めてありまして、気動車改造サハの運命は風前の灯。
それでも廃車留置のモハ4257を含め、一心にその姿を記録し、心に留め置いたのでした。
86年秋まで幾度が通ううちに前面に車号が入ったり、行き先サボも取り付けられましたが、やはりワタシはそういうものの無いスッキリした姿が好みです(意見には個人差があります)
当線の1500V昇圧と蒲原鉄道の部分廃止で、鉄道に関する興味を殆ど失ったワタシは、模型も撮り鉄も乗り鉄もやらず、ただ月刊誌を立ち読みするだけの安楽マニアに成り下がりました。なので豊橋鉄道の昇圧も琴電の新性能化も、蒲原鉄道の全線廃止にも立ち会えず後悔しています。
たまたま立ち寄ったオープンしたばかりのGM秋葉店でkitcheNの車体素材と衝撃的な出会いをして、鉄道模型に復帰したわけでして。
その後発売された同社の丸窓5250をベルニナ動力を入れて作りましたが、当時の腕ですので満足できるものではありませんでした。ワールド工芸のキットや、鉄コレも入手しまして、それなりに楽しみました。
今回たまたまkitcheNの車体素材を再び入手し、現在のテクニックと情熱でモデルにしたわけです。
車側表示灯は0.4ミリのドリルで穴を開けて、裏からエポキシ系接着剤をドライバーで押し込みました。まるでレンズのように見えて実感的です。
奥上の塗り分けも綺麗に出来ました。少々派手に見えたので、濃いグレーでウォッシングしてあります。
元旦に別所線を訪れて別所温泉の外湯に寄った帰り、21時過ぎにホームを離れ勾配を下って行ったのは、珍しく単行の5252でした。飴色のニスの車内に佇むのは私ひとり。上田に向かって走る丸窓を独り占めした至福の時間は忘れられません。