トランプ氏再選に立ちはだかる新型コロナ危機、経済とパンデミックの板挟みに
AFP=時事】新型コロナウイルスによる経済悪化と再選に向けた選挙キャンペーンでの苦戦に悩まされているドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が、自国民に明確なメッセージを伝えることができないでいる──。
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経済への影響はあるものの、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を食い止めるため、ようやく対人距離の確保など拡大防止策に本腰を入れ始めたトランプ氏。しかし、それと並行して封鎖措置を緩和する可能性についても示唆している。
トランプ氏は22日、ツイッター(Twitter)で、「われわれはどうするのか決断する!」と強調し、23日にも同じ内容で再び投稿した。
医療物資の供給が混乱状態にあり、米議会が経済対策の難しい調整を迫られるなかでのトランプ氏のこうした最近の言動は、米国が必死に対策を模索していること浮き彫りにするものだ。
■変わる立場と混乱
政治経験がなかったトランプ氏は、大統領就任後は本能による決定と不動産業界の強気なスタイルを政治の世界に持ち込んだ。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大のような問題の発生は就任後初めてのことだ。これまでのような強引に押し切るスタイルは通用せず、トランプ氏が「見えない敵」と呼ぶ新型ウイルスに対して、その影響力をあまり行使できていない。
コロナをめぐってはこれまでのところ、その態度や考えを二転三転とさせ、社会に混乱をもたらしているトランプ氏。当初は、拡大するウイルス感染を一蹴するような態度を取っていたが、その後は自らをウイルスとの戦争における「戦時下の大統領」と称するようにもなった。また、中国の対応を繰り返し称賛していたその態度も、最近では新型コロナウイルスのことを「中国ウイルス」と呼び、中国に批判的だ。
さらに22日には、自国民に対して「孤独で切り離されているように感じている(だろう)」「われわれは一致団結する」と語りかけ、まとめ役のごとく振る舞った。しかし翌23日には、ツイッターで「急進左派」に対する攻撃を再開し、ウイルス危機と不法移民阻止という自身の強硬政策を結び付けた。
選挙という時限爆弾
コロナ問題の陰に隠れてしまってはいるものの、経済や政治の混乱も、トランプ氏にとっては大統領選に向けての時限爆弾だ。
新型コロナウイルスによる集団感染のリスクについて保健当局は、今後の見通し──いつ収束するのか、そもそも収束するのか、夏以降も続くのか──は分からないとしている。
一方、経済専門家の間でも、米経済の事実上の閉鎖状態の影響がいつまで続くのか、またその影響はどれほど深刻なのということをめぐって意見の一致はみられない。
確実なのは11月3日に大統領選が行われ、トランプ氏が民主党の大統領候補となると見込まれるジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領と戦うことになるということだけだ。
新型コロナウイルスの流行とそれに続く一連の対策は、トランプ氏の選挙戦スローガン「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」を吹き飛ばし、歴史的株高と失業率の低さを誇っていたトランプ氏の成果さえも破壊した。
こうした状況のなか、保守派の間では、思い切った新型コロナウイルス対策が利益よりも損害をもたらすことになるタイミングを見定めようとする動きも見え始めている。
その一方で、対人距離の確保と自己隔離を今よりも厳しくすべきだと警告する人もいる。米公衆衛生局のジェローム・アダムス(Jerome Adams)長官はその一人だ。
同氏は23日、米CBSの番組で「好転する前に悪化するだろう。われわれはすべての人に事態が深刻であることを理解してもらう必要がある」と述べている。
トランプ氏は、「大統領選」「パンデミックの阻止」「世界一の経済力の復活」という問題の板挟みになっているが、いまだにどの方向に進むべきかを見いだせてはいない。