コロナ相場に貯金すべてを投じた会社員、乱高下にギャンブラーの血が…
新型コロナウイルスの蔓延で、世界経済はリーマンショック以来の同時株安に見舞われている。眠れない日々を過ごしている投資家も多いだろうが、この相場を“一攫千金チャンス”と考えるツワモノたちもいる。行き着く先は天国か地獄か。決死の覚悟でコロナ相場に突撃した30代サラリーマンギャンブラーの結末は――。
600万円分の株を空売り…
「うちもご他聞に漏れず在宅勤務になっています。そもそも出社しようが営業職なんで、お客さんのところに伺えないんです。家にいたってやることもなくヒマ。で、ぼけっとニュースを見ていると、相場がえらいことになっているでしょ。実は2年ほど前、株でえらい目にあったことがあってしばらくやめていたんですけど、あの乱高下を見ていたらうずうずしちゃって……」
こう話すのは、都内在住の会社員・吉村将さん(35・仮)である。先日、「コロナ騒動を横目に片道1000円の韓国カジノ旅、場内はマスク姿の日本人だらけ…」の記事に登場したあの御仁だ。吉村さんの貯金額は300万円。その大半にあたる200万円を証券口座に移し、“参戦”を決意したのは3月2日の月曜日だった。 「2月28日の金曜日に806円安の2万1142円をつけていました。コロナ騒動はまだ続く、もうちょい下がるだろうと思って、信用取引で約600万円分、空売りすることから始めました。銘柄は、送料問題で炎上していた楽天、1単元の株価が高く値動きの激しい任天堂、あとは仁川のパラダイスシティの運営もしてるセガサミーホールディングスの3つです。セガサミーは日頃お世話になっている企業ですが、カジノも閑古鳥でしょうしね」
ところがこの日、日銀が1002億円の指数連動型上場投資信託受益権(ETF)買い入れを実施。一時500円超の下落を見せた日経平均は一転して急上昇し、終わってみれば前日比201円高の2万1344円という結果になってしまった。 「いま思えば、このまま売り越しておけばよかったんですが、この時は慌てて損切りに走っちゃったんです。軽い気持ちで始めた結果が、たった1日で20万のマイナス。これで終われるわけないでしょう。虎の子の100万円を追加入金し、今度も約600万円分を同じ3銘柄の買いに入りました」
吉村さんの読み通り、その日の夜、NYダウは1294ドル高の大幅反発となった。 「こりゃ取り返すどころかプラ転だな。儲かったら久しぶりに吉原でも行くか。そんな気分でニヤニヤしながら翌朝、証券アプリを開きました。が、なぜか思ったように上がらないんです。取得価格が悪かったのでちょっと上がっただけならマイナスの状態でした。翌日は17円高、翌々日は229円高といま一つ上がりきらない。10万円の含み損を抱えたまま、ぐっとこらえて持ち越すしかない状況でした」
売り」に入れば日銀の市場介入…
吉村さんの口座のキャプチャ画面。見事に裏をかかれっぱなしだ…(画面は3月9日時点)
すると、休日前の6日の金曜日、市場は開くと同時に株価は下降。 「前日のダウが1000ドル近く下げたこともあり、朝から下げが止まりませんでした。顔面蒼白になって、買い玉は諦めて損切り。一転、取引枠を全て売り玉に切り替えました。この時点でトータルの負けは50万円。半分でもいいから取り返したい、そんな一心でチャートを睨み続けました」
しかし、そんな吉村さんを嘲笑うかのように売りに入ると、日銀が再度1002億円の介入。株価は再び上がり調子に転じるのである。 「慌てて利確に走り、何とか10万円だけ利益を確保しました。この時はもう疲れ果てていました。馬鹿なことをした、株なんかに手を出すんじゃんかった……。が、後悔の淵に立っていたその時、ふっと耳元でささやく声が聞こえてきたのです。『買いだ!』『ここが底値だぞ!』。そうだ、ここだ! まだ見えぬこのビッグウェーブに乗りすべての悩みを解決するのだ。私は全軍突撃で買いを決断したのです」 賽は投げられた。あとは座してチャートと向き合うだけである。が、引けにかけて日経平均は再び値下がり始め、580円減の2万749円で取引を終了。 「不安な週末を過ごし、明けて月曜日、地獄はやってきました」
前夜、ダウ市場は原油価格の暴落も相まって、制度が始まって以来初めてのサーキットブレーカーが発動。取引が一時中断という前代未聞の事態に陥っていた。 「市場が開くや否や、ピューンと急降下です。私の大事な貯金も減り続けていきます。コロナ感染拡大のニュースに呼応するかのようにズルズルと下がり続け、引けは1051円安の1万9698円に。信用取引は6か月間、持ち玉をキープできますから、どれだけ含み損が拡大しても、株価が戻るのを待てば負けることはありません。だから、夏が来たらコロナなんてなくなってるって、必死に自分を励まし続けたんですが……」
11日夜、投資家が期待していたトランプ大統領の経済政策の具体案がまとまらず、ダウ市場では失望売りが加速する。 「翌12日の日本市場もその流れを受け継いで全面安に。ここで心がポキっと折れました。もうここらでよかろう。マイナスは100万円に達していましたが、無心で損切りしました。死人が出ていたっておかしくない相場です。むしろ100万円で済んで良かったと思おうと。が、あきらめきれず、最後の勝負と思って600万円分の売りに入り、30万だけは取り返すことに成功しました。ここで終戦。もう怖くて触れません。友人は500万円の含み損を抱えながら『コロナと心中する』とまだ踏ん張っています」
ウイルスより恐ろしいコロナ相場。あなたもやってみる?