死体放置による腐敗臭は気にならないが…》「あのアパートはもうダメです」“特殊な不動産屋”から紹介された事故物件…契約時に起きた“不可解”すぎる出来事とは
不動産投資をやっていると、空き家で霊体験や超常現象のような出来事に出くわすことがよくあります。今回は東急東横線の某駅から徒歩20分ほどの場所にある、お値段なんと500万円の激安アパート(もちろん事故物件)と、そのアパートを封じるように建っているお稲荷さまのエピソードです。
【写真】この記事の写真を見る(2枚) ※この記事は実話ですが、物件を特定できないようスペックやエピソードなどを一部改変しています
腐乱死体を放置していたアパートが500万円
いつもデッドボールすれすれの物件を持ってきてくれる特殊な不動産屋さんから「東横線某駅の徒歩圏に500万円のアパートがあります」という情報が入ってきました。
某駅は渋谷にも横浜にも30分という好立地で、バスターミナルもある強い駅です。そんなところでアパートが500万円というのはにわかに信じがたいのですが、聞いてみるとやはり事故物件。しかも腐乱死体を夏のあいだ放置していました系とのこと。
ただし建物自体は築25年ほどと比較的新しく、40平米の1DKが2部屋ある好条件です。いくら強い駅でも駅徒歩20分のワンルームでは苦しいのですが、1DKなら賃貸需要があります。
これは見に行くしかない、ということで、不動産屋さんとリフォーム屋さんを伴って内見に行くことにしました。
崖にへばりつく異様なアパート
現場に着いてビックリ、そのアパートは高い崖にへばりつくように建っていました。アプローチも崖すれすれの細い私道を登っていく形で、車では近づけないどころか、自転車やスーツケースですら抱えていく必要があります。ぶっちゃけ、どうやって建てたのかもよくわかりません。
周辺は完全に住宅地で、崖の麓に小さな赤いお稲荷さまと、すぐ近くに古墳があるくらいです。ただ、おかしな気配は感じます。空気が張り詰めているというか、詰まっているというか、なんとも異様な息苦しさがあるのです。
死臭を吸い込まないようハンカチで口を抑えながら
細い崖道を登り、自分、不動産屋さん、そしてリフォーム屋さんで建物へと向かいました。特殊清掃は済んでいるのですが、それでも腐乱死体と聞いているので、死臭を吸い込まないようハンカチで口を抑えながらドアを開きます。
このアパートは1階と2階で1部屋ずつあり、腐乱死体が見つかったのは2階の居室になります。液状化したご遺体が床に染み込んでしまったらしく、居室部分の床は完全に撤去されていました。表面のフローリングを剥がしたとかではなく、梁の部分も含めて床そのものがなくなっているのです。
2階の床がないということは、当然1階の天井もありません。歴戦の勇者である不動産屋さんとリフォーム屋さんも、これにはちょっと驚いているようでした。
今の特殊清掃は本当にレベルが高い
写真はイメージ ©️iStock.com
このアパートは木造なので、ご遺体が染み込んでいたり、臭いが取れなかった部分は切り取られていました。そして、切り口には臭い止めのための青い塗料が塗り込まれています。建物の傷口から青い血が流れ出しているように見え、かなり異様な雰囲気です。
この切り取られた部分を継ぎ足して物件を再生できるか、さっそくリフォーム屋さんの社長に調べてもらうことにしました。社長が勇気を出して口をふさぐハンカチを外してみたところ、なんと臭いがまったくしないと言うのです。 私と不動産屋さんもおそるおそる呼吸してみたのですが、たしかにまったく臭いがしません。腐乱死体とひと夏を越した物件とは思えない無臭ぶりで、最近の特殊清掃はすごいね~とみんなで感心してしまいました。
調子にのって青い塗料の部分に顔を近づけでみましたが、それでもまったく死臭はありません。ちゃんとした業者さんが特殊清掃をすれば、大抵の物件なら臭いが取れてしまうのでしょう(ただしこれは木造だからであって、コンクリートに染み込んだ場合はまた話が違うようです)。
リフォーム屋の社長にざっと見積もりをしてもらったところ、天井と床の新設、完全に剥がされた壁クロスの張り替え、木部の補修と塗装、水回りの一部交換などで500万円ほどかかるとのこと。
利回りを計算してみましょう。まず本体価格が500万円、リフォーム代が500万円で1000万円です。
家賃相場としては1部屋6万円ほどですが、事故物件なので安く見積もって5万円と仮定します。2部屋あるので年間120万円です。
トータルすると12%という利回りになります。決して高いとは言えないのですが、近くの中古アパートが8%ほどで売られていることから、割安なのは間違いありません。満額(値切らず)の買付申込書を買いて不動産屋さんに渡し、購入の意志を伝えました。
麓のお稲荷さまにお参りすると…
満額なので特に問題なく買付も通り、翌週末に契約と決済を行うことになりました。これで自分も一棟アパートのオーナーです! 掘り出し物なのでニヤニヤが止まらないのですが、それでも人がお亡くなりになっている物件です。念のため、仲良しの神職さんに「なにかしたほうが良いか」と尋ねてみました。
現場の写真をメールしたところ、「私が行ってお祓いをしてもよいが、麓にお稲荷さまがあるのなら、まずそこに挨拶したほうが良い。日本酒と油揚げでもお供えして、いまからお世話になりますと、誠心誠意お伝えしてください」との返信がありました。
自分は信心深いほうなので、さっそく近くのスーパーでワンカップと油揚げを購入し、お稲荷さまにお供えして、アパート経営が上手くいくようにご挨拶しました。
そして物件から帰宅した途端、不動産屋さんから「あのアパートはもうダメです。契約は流しましょう」という驚きの電話が入ってきたのです…。
松本一族が怒っている!?
どういうことなのか不動産屋さんに聞いてみたところ、物件の周りの土地を押さえている松本一族(仮名)が、なぜか急に怒り出したとのこと。
周りの地主が怒ったところで売買には関係ないように思えるのですが、アパートへ向かう小さな私道も、物件につながっているガス管・水道管も、全てが松本一族の土地を通っており、松本一族を怒らせると事実上ゲームオーバーなのです。
物件に出入りするだけであれば囲繞地通行権(他人の土地を通って出入りできる権利)を主張できるのですが、地中配管の整備などは所有者の承諾がないと難しいため、何かあった場合のリスクを考えると引き返すのが賢明だとのことで、やむなくキャンセルで了解しました。
どうして松本一族は豹変したのか
配管や私道が松本一族の土地を通っているというのは事前に知っていましたし、松本一族とは通行料の交渉も終え、なんならリフォーム屋さんに駐車場を使わせてくれるという申し出までいただいていたので、とても良好な関係だと思っていました。そこから態度が豹変したので、まさに青天の霹靂です。
不動産屋さんにも理由がまったくわからないようで、わかるのは「私がお稲荷さまをお参りした直後に電話がかかってきた」ということだけです。
改めて物件周りの住宅地図を見てみると、大半の家の名前が「松本」になっていました。おそらくですが、周りの松本一族の誰かが、お稲荷さまに供え物をする私の姿を見ていたのでしょう。それが怒りを招いたとしか考えられません。
先述の神主さんにこの件を話すと「神様にきちんと礼を尽くしてこうなったのだから、これはお稲荷さまが助けてくれたと考えるべきだ」とのこと。たしかに、買ってから松本一族と揉めていたらと思うとゾッとします。
アパートはそれから…
その後の話を不動産屋さんに聞いてみたところ、このアパートは数週間後に別の買い手がついたようです。そして事件(?)からしばらく経った今日、グーグルマップでこのアパートの様子を見てみました。
アパート自体はそのまま建っているのですが、なぜか隣の家の屋根にブルーシートがかかっていました。そしてアパートの住所で検索してみても、賃貸ポータルサイトに情報が出てきません。
このお稲荷さまについても調べてみたのですが、御祭神や由緒などは一切不明でした。ただ神社仏閣歩きをしている人のブログに少しだけ記述があり「周辺の土地の形状から、元々は屋敷稲荷(個人宅に勧請された神様)であったと考えられる。その後に屋敷部分が取り壊され、単体のお稲荷さんになったのであろう」ということでした。
それが松本一族の邸宅であったのかまでは、わからなかったのですが、お家探しや不動産投資ではこうした不可解なトラブルに遭遇してしまうこともしばしばあるもの。この一件以来、内見の際に神社仏閣を見かけたら、必ず訪問するようになりました。
あらいちゅー