命が助かるという保証はどこにもない…現役医師が「がん検診は受けるだけムダ」と考えるワケ
12/19(月) 13:17配信2022
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tsalko
がん検診は受けたほうがいいのだろうか。医師で作家の久坂部羊さんは「受けたからといって命が助かるわけでもない。がん検診にあるメリットとデメリットをもっと知るべきだ」という――。(第2回)
【図版】厚生労働省が勧めている5つのがん検診(厚生労働省ホームページより) ※本稿は、久坂部羊『寿命が尽きる2年前』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■厚労省が推進するがん検診は受けるべきか
現在、厚労省が推進しているがん検診は、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸(けい)がんの5種類です(男性は3種類)。
厚労省のHPには次のようにあります。
『国民の2人に1人が“がん”になり、3人に1人が“がん”で亡くなっています。しかし、皆様ががん検診を受けることで、がんによる死亡を今よりも減らすことができます。厚生労働省では、がん検診の受診率を50%以上とすることを目標に、がん検診を推進しています』(2022年「政策について」より) 実施母体は市町村で、ほとんどのところで費用の多くを公費で負担しています。根拠となる法律は、「健康増進法」(2003年施行)です。
余談ですが、この法律は、健康の維持増進を国民の義務と定めています。一方、憲法では、健康な生活は国民の権利としています。健康は義務なのか権利なのか、どっちやねんと法律の専門家に聞きたくなります。
■「異常なし」に安心してはいけない
何事にもよい面と悪い面があるように、がん検診にもメリットとデメリットがあります。
メリットは、がんの早期発見で命が助かる人がいるということです。
デメリットは、がんではないのに、「疑い」を指摘され、不必要な検査で時間とお金と体力を無駄にさせられ、無用のストレスを受けることです。公費の無駄もあります。検査被曝による発がんの危険性もあります。
また、検診で異常なしという結果が出たため、安心してしまって、症状があるのに病院を受診せず、手遅れになる危険性もあります。
もちろん、検診での見落としもあり、逆に放っておいても命に関わらないがんを見つけて、手術せざるを得なくなる過剰診断の危険もあります。
また、細胞レベルでがんが発生していても、最低でも5mmくらいの大きさにならないと発見されないので、検診で見つからなかったからといって、がんがないとは言い切れないこともあります。
<略>
■5種類に対する物足りなさ
がん検診も健康診断同様、心配を減らすために行うものですが、上の5種の検診だけ受けていれば安心なのでしょうか。がんはほかにもたくさんあります。
特に、5年生存率の低いすい臓がんや食道がん、胆のう・胆道がん、肝臓がん、卵巣がん、腎盂(じんう)尿管がん、甲状腺未分化がんなどは、調べなくてもいいのでしょうか。ほかにも、腎臓がん、膀胱がん、肛門がん、喉頭がんに咽頭がん、舌がん、前立腺がん、白血病に悪性リンパ腫、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、子宮肉腫、網膜芽細胞腫、脳腫瘍に脊髄腫瘍、縦隔腫瘍などもあります。
それらをいっさい無視して、厚労省が推進する5種のがん検診は、なんだか調べやすいものだけ調べるつまみ食いのようにも思えます。つまみ食いでは、もちろんお腹を満たすこと(がんに対する安心)はできません。
厚労省や医師会などは、がん検診を行うことで、確実にがんによる死亡者数が減ると言いますが、死亡者を減らすことだけを目的とするなら、5種類だけでなくすべてのがんについて、検診をすれば確実に減るでしょう。
しかし、それはあまりに手間と経費がかかりすぎ、受診者の負担も大きくなります。つまりは費用対効果を考慮して、右の5種類(しつこいようですが男性は3種類)に決めたのでしょう。
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