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〈イーロン・マスクがアメリカを壊す〉政府効率化省の“越権行為”が破壊する三権分立と法の支配、民主主義はもうないのか
2/24(月) 5:02配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/4fbfb19d8e9113948dd4303cddbf75639368938d
2/24(月) 5:02配信
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Wedge(ウェッジ)
(dvids)
イーロン・マスクの率いる米政府効率化省は、行政府による権力奪取を隠蔽するものでもあると、2025年2月11日付のフィナンシャル・タイムズ紙 が強く批判している。
先週、イーロン・マスクは、米連邦政府の官僚制度を攻撃する自らのプロジェクトを「人民の革命」と呼んだ。しかし実際は、トランプ大統領に支持された行政府による権力奪取のように思える。連邦政府機関の廃止、資金提供の凍結、政府職員への辞職の強要等は単なるリストラをはるかに超え、憲法が保障する三権分立と力の均衡を変えようとするものだ。
確かに米国の官僚組織の一部は肥大し非効率で近代化が必要だ。官僚組織を改革するには抜本的な取り組みが必要な場合も多い。しかし、そこには詳細な計画、透明性、そして監督も必要だが、現在のトランプ政権からはこれら全てが欠落している。
マスクの率いる政府効率化省は議会が設置したものではなく、行政命令で創られた曖昧な機関だ。シューマー上院少数党院内総務は、同機関には支出を決定する、あるいはプログラムを停止する権限はなく、まして省庁を丸ごと閉鎖する権限などないと言っている。
マスク・チームの20代のプログラマーたちは、節約案件を探し出し、財務省、国務省、保健福祉省等に侵入し、予算400億ドルの国際開発庁は事実上閉鎖され、何万もの公務員が解雇や停職に追い込まれた。政府効率化省のスタッフは機密情報から政府職員の個人情報まで膨大なデータにアクセスし、プライバシーや国家安全保障上のリスクが生じている。
この効率化を目指すとされる動きは、政府機構を破壊すると共に、その優先課題を押し通し、反対派を無力化すべく行政府の権限を強化することを隠蔽するために利用されているように思える。
政府効率化省による決済システムをコンロールしようする動きも、トランプ政権による連邦政府の供与や融資を凍結する試みと一致する。両方とも、議会が承認した支出を大統領が拒否することを違法とした1974年の法律に挑戦し、力の均衡を立法府から行政府側に傾けようとする動きのように思える。
議会が無気力な今、憲法秩序を守るのは裁判所の役割だが、トランプ政権が矢継ぎ早に繰り出す命令や活動は、民主主義活動家や裁判官が事態について行くのを難しくしている。ヴァンス副大統領は、大統領による公務員解雇の動きを止めようとした裁判所の判決を大統領は無視できる、と示唆した。他のポピュリスト政権と同様、トランプ政権は自分たちの意図や計画を邪魔したとして裁判官たちをも非難する可能性がある。
* * *
大統領令の一部差し止めの可能性
このフィナンシャル・タイムズ紙の社説は、的を射た良い社説である。イーロン・マスクが率いる政府効率化省(DOGE)がやっていることには、多くの問題がある。連邦政府機関の廃止、資金供与の凍結、政府職員への辞職の強要などは単なるリストラをはるかに超えて、憲法が定める三権分立と力の均衡を変えようとするものであるとの指摘は、妥当な指摘であろう。
米国の国家歳出を決める予算権限は、憲法上、議会に与えられており、議会が承認した支出を大統領が拒否することは違法である。シューマー上院院内総務が、政府効率化省に政府支出を決めたり、プログラムを停止したりする権限はなく、ましてや省庁を丸ごと閉鎖する権限などないと述べたことが、この社説に引用されているが、その通りである。
トランプが矢継ぎ早に繰り出す命令の中には、国籍付与についての出生地主義の廃止など、憲法上の問題があり、差し止めになっているものがあるが、今後そういうケースが頻発するように思われる。また、関税措置についても恣意的に発表されているが、関税はいくつかのラウンドで相互引き下げがなされてきたのであって、それに違反すると米国が訴えられるケースも頻発するのではないか。
三権分立は危機に
このDOGEをめぐる騒動は、三権分立や法の支配という民主主義の根幹にある理念を否定する大きな問題であり、危機意識を持って考える必要があろう。そうしないと、トランプとイーロン・マスクが、米国を大統領が議会や裁判所に優位に立つ、チェック・バランスがない非民主主義的な国家にしてしまう危険があるように思われる。
優れたデマゴーグとそれに説得される選挙民の組み合わせが民主主義をダメにした例は、ワイマール共和国のように、これまでにもあったことを考える必要がある。
岡崎研究所
このフィナンシャル・タイムズ紙の社説は、的を射た良い社説である。イーロン・マスクが率いる政府効率化省(DOGE)がやっていることには、多くの問題がある。連邦政府機関の廃止、資金供与の凍結、政府職員への辞職の強要などは単なるリストラをはるかに超えて、憲法が定める三権分立と力の均衡を変えようとするものであるとの指摘は、妥当な指摘であろう。
米国の国家歳出を決める予算権限は、憲法上、議会に与えられており、議会が承認した支出を大統領が拒否することは違法である。シューマー上院院内総務が、政府効率化省に政府支出を決めたり、プログラムを停止したりする権限はなく、ましてや省庁を丸ごと閉鎖する権限などないと述べたことが、この社説に引用されているが、その通りである。
トランプが矢継ぎ早に繰り出す命令の中には、国籍付与についての出生地主義の廃止など、憲法上の問題があり、差し止めになっているものがあるが、今後そういうケースが頻発するように思われる。また、関税措置についても恣意的に発表されているが、関税はいくつかのラウンドで相互引き下げがなされてきたのであって、それに違反すると米国が訴えられるケースも頻発するのではないか。
三権分立は危機に
このDOGEをめぐる騒動は、三権分立や法の支配という民主主義の根幹にある理念を否定する大きな問題であり、危機意識を持って考える必要があろう。そうしないと、トランプとイーロン・マスクが、米国を大統領が議会や裁判所に優位に立つ、チェック・バランスがない非民主主義的な国家にしてしまう危険があるように思われる。
優れたデマゴーグとそれに説得される選挙民の組み合わせが民主主義をダメにした例は、ワイマール共和国のように、これまでにもあったことを考える必要がある。
岡崎研究所