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「学校に無理して行かなくてもいいよ」→親に不登校を放置された子どもの行く末は?

2024年11月22日 09時05分55秒 | 教育のこと

「学校に無理して行かなくてもいいよ」→親に不登校を放置された子どもの行く末は? 





写真はイメージです Photo:PIXTA
© ダイヤモンド・オンライン


小・中学校時代に不登校を経験した子どもたちの多くが高校に進学しており、学校にもっと行っていればよかったと思っていることを考えると、不登校になった時点で早々に学校復帰を諦めずに、まずは学校への復帰を全力で支援することが重要なのではないだろうか。


「嫌だったら無理して学校に行かなくてよい」と考える大人が増えている。しかし、不登校児の中には、実は登校を望んでいる子どもや、登校しなかったことを後悔している子どもも多いのだという。不登校状態を安易に放置することで、成人後の引きこもり問題にもつながるなど、かなり深刻な問題を引き起こすおそれもある。本稿は榎本博明『学校 行きたくない 不登校とどう向き合うか』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。


文部科学省の方向転換が


不登校を増加させた?


 このところ不登校に関しては、無理に学校に通わなくてもいいのではないか、という意見もみられるようになってきた。


 かつては不登校への対応としては、校門までの登校、放課後の登校、保健室などの別室登校など、工夫をしながら学校に戻れるように支援していくのが一般的だった。もちろん今でもそうした支援が主流ではあるが、何も無理をして学校に戻らせなくてもいいのでは、と考える人も出てきている。


 それには、学校が個人の個性に対応した教育ができていないなど、一斉教育に対する批判に代表されるように、学校に対する不信感が根底にあるように思われる。



 だが、きっかけとしては、2016年に文部科学省により「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が公布され、この法律に則って不登校の児童生徒の教育機会の確保を推進するために、2017年に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」が公表されたことがあげられる。


 その基本指針では、「不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮」する必要があるとし、また支援に際しては「登校という結果のみを目標」にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的にとらえて、社会的に自立することを目指す必要があるとしている。


 そして、不登校の児童生徒が教育を受けられるように、教育支援センターや特例校、夜間中学などの設置の促進を訴えている。


 不登校の子どもたちに多様な教育機会を保障するのは大事なことである。だが、このような文部科学省の方針転換が不登校を増加させているとの指摘もある。


 無理して学校に行かなくてもよいと考える親が増えていることは以前から指摘されてきたし、そうした文部科学省の方針転換がこのところの不登校の急増をもたらしているのかどうかはわからない。


 だが、無理して学校に行かなくてもよいのではないか、という保護者がさらに増えるきっかけになったといえそうである。


学校に行かなかったことを


後悔している不登校児たち


 不登校の児童生徒の人数が増加し続けているだけでなく、成人後のひきこもりも増えており、2019年の内閣府による調査では、15歳から39歳よりも、40歳から64歳の中高年のひきこもりの方が多いことがわかり、深刻な社会問題とみなされるようになった。その後もひきこもりは増えており、2022年に内閣府により実施された調査では、15歳から64歳のひきこもり人数は約146万人と推定されている。


 このように不登校から成人後のひきこもりへの移行が懸念されるため、安易に、学校に行かなくていいとも言い難い状況になってきている。



 小・中学校時代に不登校を経験した子どもたちの多くが高校に進学しており、学校にもっと行っていればよかったと思っていることを考えると、不登校になった時点で早々に学校復帰を諦めずに、まずは学校への復帰を全力で支援することが重要なのではないだろうか。


 たとえば、文部科学省が2021年に実施した、前年度に不登校であった小学6年生と中学2年生を対象とした「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」によれば、学校を多く休んだことに対して、小学6年生では、「もっと登校すればよかったと思っている」という者が25.2%であるのに対して、「登校しなかったことは、自分にとってよかったと思う」という者が12.8%というように、不登校を後悔している者の比率が不登校を肯定している者の比率の2倍となっている。


 中学2年生にいたっては、「もっと登校すればよかったと思っている」という者が30.3%であるのに対して、「登校しなかったことは、自分にとってよかったと思う」という者が10.3%というように、不登校を後悔している者の比率が不登校を肯定している者の比率の3倍となっている。


 このような不登校経験者を対象とした調査データからも、不登校に陥った際には、まずは第一に学校への復帰に向けて支援すべきであろう。


「学校に行きたくない」生徒の


8割以上が高校には進学している


 また、文部科学省による「不登校に関する実態調査~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査」では、中学3年生在籍時に不登校であった生徒に対して5年後に追跡調査を行っている。





『学校 行きたくない 不登校とどう向き合うか』 (榎本博明、平凡社新書)
© ダイヤモンド・オンライン

 その結果をみると、不登校だった生徒の85.1%が高校に進学している。さらに大学・短大・高専に進学した者も22.8%となっている。こうしたデータをみると、たとえ中学生時に不登校であっても、その後ほとんどの者が高校に進学していることがわかる。


 学校に通うことを軽視する風潮があるが、このような不登校経験者の意識やその後の進路についてのデータをみると、学校に行かなくてもいいと安易に考えるのは早計であるといってよいだろう。







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