日本ユーラシア協会広島支部のブログ

本支部は、日本ユーラシア地域(旧ソ連邦)諸国民の相互の理解と親善をはかり、世界平和に寄与することを目的とする。

加納先生より

2011-09-25 08:15:56 | 日記
加納先生より

松田博嗣 様

ご返事有難うございます。
先程、富山空港に着きホテルで23日のシンポジウムP.P.Fileを見直しています。
前便でシンポジウム概要は添付ファイルをご覧下さいと言いましたが、このMLは添付を受け付けなかったので失礼を致しました。
仰る様に一般市民相手に環境科学リテラシーを謳うことは、自分自身が広範囲に勉強しなくてはならず大変です。
しかし、シンポジウム講演題目に恥じない様に、今こそしっかりと定着させなければと云う思いを強くしています。
原発問題一つをとっても、高木学校や「科学・人間・社会」誌等の以前からの指摘を活かせていません。

これも仰る様に「近代文明を根源的に検討することも大事」ですが、卑近な例で「京都五山の送り火に供する、被災者のメッセージが託された松板」の使用拒否、「昨日の愛知県花火大会での福島製花火」の使用拒否、等の悲しくなる様な差別と身勝手を諌めるのも環境科学リテラシー実践かと考えます。
これらも視点に入れて、23日にはお話出来ればと想っています。
今後とも宜しくお願い致します。    加納誠

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3月11日以来、環境識字の内容も大幅に変わりつつあると痛感しています。 
また加納さんの地道なご活躍に感心しています。
環境汚染物質と一口に言っても、放射能物質は別けて考え対応すべきですね。
私は20年ほど前、廃棄物処理場が近所に出来るといって市民の反対運動に参加したことがあります。
その後、立派な処理場が作られてかなり解決しました。 化学結合で結ばれた物質を分解する技術は格段に進歩したようです。

ですが、原子核結合で結ばれた放射能物質を分解することは容易ではありません。 物理学的には一応学んでいても、1eV と1MeV との違いの恐ろしさを原子力発電事故で思い知らされました。
原子力発電は軍事と直結しており、情報公開は困難で、平和利用が無謀であることを思い知らされました。 
また、原子力発電はたとえ事故がないとしても、コスト的に割高であるとの最近の報道もあります。
近代文明を根源的に検討することも大事ですが、一般市民もついて行ける程度の知識や運動を追求する方がより大事ではないかと考えています。
松田 博嗣(Hirotsugu Matsuda)
e-mail: hirotugu324@ybb.ne.jp
----- Original Message -----

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勝木様、猪野様、松田様・各位 :

有意義なご意見を有難うございます。
数十年に渉る親友、猪野修治氏の歯に衣着せぬ論述を何時も羨ましく読んでいた”御用学者”の加納です。
間もなく開催される物理学会領域13シンポジウムの準備(添付ファイル)をしながら、勝木さん、松田さんのご意見も興味を持って読ませて頂きまし た。
この4月からは一応”自由の身”に成ったのですが、毎月の様に横浜から山口県、山陽小野田市、宇部市に戻り、諮問委員会やNPO理事会、講演会を こなしています。

そこで思うのは、市民や学生達が、今、「本当のことが知りたい」「今後、起こり得る様々な事柄に対してどう判断したら良いか」「政府批判、原子力 村批判よりも、今、役に立つ知識を」と言った切実な要望を持っていることです。彼等は、公務員でもあり日立・東芝・三菱・中部電力社員でもあり、 しっかりとし
た裏付けの基が無くしては、私の環境科学リテラシーは伝わらないと想うのです。
勿論、政府批判、原子力村批判も入れるのですが、常に思っていることは、科学
史を辿り物理学を基にした環境科学リテラシーを訴えたいと言うことで す。其
のための源泉が、領域13を含む環境物理分野での発表であり討論で在って欲しい
と思っています。

頭をよぎるのは、非平衡系熱力学、開放系熱力学、定常開放系熱力学、 「開か
れた能動定常系」 熱力学、 要素還元主義的な方法論か らの脱却、物質循環の
追求と実践、等など、数え上げればきりが有りません。道楽で遣っている有機循
環農法等と揶揄されながら、一生掛ってもつかめ ない命題を追っているドン・
キホーテを自認しています。

そう言う訳で、勝木さんの言われた以下のことは特にその通りと想いました。

「噛み合った討論を成り立たせると寝た子が起きる恐れがあるので、討論のない
状況を原発推進を進める国・業界が意図的に作り出してきたといえま す。 この
状況は、反原発・原発推進批判派にとっても不幸なことでした。対立者との深い
レベルでの討論を展開して、自分達の理論を深め高める機会が持て なかったか
らです。 原発推進派の人たちにとっても、自分達の認識を深め、見識を高める
という面から見て、不幸なことであったと思います。」

有難うございました。       地球環境緑蔭塾   加納誠

--- 松田様・各位       新戦時09(2011)/09/13     勝木 渥 拝復
私は ”まともな” 原発推進派の人が、原発推進路線を変えようとしない理由が理解できます。現代工業社会の存続を前提とするかぎり、それを支えるに足る電力はどのような質を 持たねばならないかが、自然科学的ないし物質科学的に限定され、原子力発電・火力発電・大型水力発電に限定せざるを得ないからです。
日本の原発推進派は、政治・経済・社会的面から(物質科学的な理解抜きに)原発の必要性を認識しているだけのように思えますが。 私が、最も筋の通った原発礼賛の議論として読んだのは、4半世紀以上前の1983年にハンガリーの故マルクス・ジョェルジュらがバラトン湖畔で開 いた物理教育の国際セミナーEntropy in the School (小・中・高校でのエントロピーの授業)での、第13論文、 Hard energy - soft energy (view of economy)/ Louis Timbal-Duclaux,/ Information and Communication Division, Dept.Equipment,Electricite de France です。 表題からは,エコロジストのエネルギー論議という印象を受けますが、著者の所属がフランスの電力公社であることから予期されるように,原子力発電 を手放しで礼賛する立場に立った論文です。 その立場からの論点は非常によく整理され,議論は明快です。 実は「物理教育」分野のMLでこの論文について紹介したことがありますが、そこに書いたことを人名等は隠し、[peim]内での細かな遣り取りは 省略して以下に書きます。 松田さんの提起された問題への噛み合った議論になり得ているかどうか、自信はありませんが、参考までに。
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[peim 1347] (11.05.11) 0さんの[peim:1338]とKさんの[peim:1331]に触発されて、以下の意見を述べようと思います。 (1) Kさんは[peim 1331]で《……1950年代終わりには 原子力発電会社の技術者とそれを支持する工学系の人たちと 物理の人たちが直接議論を交わしました。……その 後は推進賛成派は賛成派のなかだけで 反対派はその中だけで討論してきて今日に至ったという面があります。》と書いておられます。それに応えるも のになり得るかどうかわかりませんが、一つの材料として、次のことをお知らせします。 私は、極めて強固な反原発派であると自覚しますが、私がとても感心して読んだ、筋金入りの原発推進派の議論があります。それは、1983年5月に ハンガリーのバラトン湖畔で開かれた ”Entropy in the School (小・中・高校でのエントロピー教育)” をテーマとする研究会で フランス電力公社(Electricite de France)の設備部門広報課の ティンバル-デュクロ(Louis Timbal-Duclaux) という人が報告した“Hard energy - soft energy (view of economy)” という表題の論文です。 表題からは、エコロジストのエネルギー論議のような印象を受けますが、著者の所属がフランス電力公社であることからも予期されるように、原子力発 電を手放しで礼賛する立場に立った論文です。原子力発電の安全性への問題意識は全くなく、放射性廃棄物の発生に伴う問題についても全く触れられて おりません。 しかし、かれは現在の工業社会を支えるために必要な電力エネルギーが持つべき性質について、そのエネルギーの質と時間的・空間的密度の見地から詳 しく分析し、必要な条件を満たしうるものは原子力発電と火力発電と大型水力発電であること、そして、その中でも原子力発電がぬきんでてすぐれてい ることを非常な説得力をもって示しました。私は、原子力に対するかれの信念を全身全霊の力を込めて、一つの論文として仕上げたものがこの論文であ ると、この論文を読んで感じました。 そこには、"自然エネルギー" がなぜ代替エネルギーとして機能し得ないかの説得力のある議論も展開されています。
こういう次第で、原子力発電礼賛の立場からの論点は非常によく整理され、議論は明解であり、そのレベルは生半可なエコロジストの “自然エネルギー” 礼賛の議論を遙かに抜きん出ていると私には感ぜられました。 “Entropy in the School” の報告書は上智大学の笠耐さんのところに届いていましたが、私は当時の修士課程の院生と一緒にその報告書を詳しく読み込み、その紹介を「物理教育研究会 (APEJ)」の会報『物理教育通信』に何回かに分けて連載しましたが、とくに上記の “Hard energy - soft energy (view of economy)” は、私たちが読み込んでつかんだ内容を(かなりの部分は全訳に近い形で)紹介しました(『物理教育通信』44号 pp.55-64, 1986)。 ながながと書きましたが、もし興味・関心がおありでしたら、『物理教育通信』44号に載っ たこの論文の紹介内容を、添付文書で希望者のメールアドレスあてに送ることができます。 (2) このティンバル-デュクロの論文に比べると、日本の原発推進派の議論は、極めてお粗末だと感ぜられます。 1970年代初期の原発推進派は、原発に関して放射性廃棄物の排出を原発のアキレス腱であると認識し(核融合発電では放射性廃棄物の排出はないと の前提で)原発は核融合発電実現までの過渡期の技術であると位置づけていました。すぐにも(あるいはかなり近い時期に)実現すると期待していた核 融合発電が、ほとんど無限のかなたへ遠のいてしまった現在では、このような位置づけは消え去り、温暖化問題を奇貨として、原発推進派は原子力発電 は(CO2を発生しないから)クリーンな発電であると宣伝するに至っています。私はここに日本の原発推進派の学問的・道徳的堕落を感じます。 (3)また、その後の原発推進派の議論の進め方は、電力会社と政府のなれ合いとそれへのマスコミの迎合に基づいて、「寝た子を起こすな」とばかりに反原 発派や原発推進批判派からの問題提起にまともに答えようとはせず、そんな起こりそうにないことへの用心を先行させたら原発の作りようがないという ようなことを、保安の責任を持つ政府の機関の責任者である専門家の学者が臆面もなく公言するような状況でした。つまり、噛み合った討論を成り立た せると寝た子が起きる恐れがあるので、討論のない状況を原発推進を進める国・業界が意図的に作り出してきたといえます。 この状況は、反原発・原発推進批判派にとっても不幸なことでした。対立者との深いレベルでの討論を展開して、自分達の理論を深め高める機会が持て なかったからです。 原発推進派の人たちにとっても、自分達の認識を深め、見識を高めるという面から見て、不幸なことであったと思います。 (4) 私には、0-メール [peim 1338]にあった《国民の原子力や放射線に関する知識不足が問題なのであって、理解が進めば原子力発電は推進できるのだという思い込み》をもった《原発 推進派の原子力工学の専門家》は上記の典型であるように私には思えます。 この人の見識は、『(東京)朝日新聞』11/04/12 付夕刊に載った「小学校上級向けのDVD副読本」の示す見識と相通じていると思います。その記事は、《(要旨)資源エネルギー庁が小学校高学年向けの副教 材として「ひらけ!エネルギーのとびら」という副教材を作ったが、その中に原発の代表として福島第1原発をとりあげ、それが絶対安全であることを 述べている部分があったので、「今の状況では子どもたちに見せることはどうか、という判断で配布を中止した」というものでした。 (5) もちろん、日本の原発推進派の中にも、きちんとした見識に基づいた意見を持っている人もいます。私がたまたま知る機会のあった『(大阪)朝日新 聞』10/01/13付の「私の視点」欄に、《エコ発電、「低品質」のつけは国民へ 》という意見を載せた、元北海道電力室蘭支店長の伊東仁という人です。この人の意見は(1)で触れたティンバル-デュクロの議論の結論的要点と一致するも のがあると私は感じました。 この人の見解も、もし興味・関心がおありでしたら、希望者のメールアドレスあてに送ることができます。 (6) 私は(1)や(5)で原発推進派の筋の通った見解の存在に触れ、興味ある方には送ります、と述べましたが、もちろん、だから原発推進派の意見に賛 同しましょうと言いたいわけではありません。むしろ、かれらの見解に接することを通じて、私の中にあった、今後の社会のあり方についての端緒的な 視点・意識と、私の中に深く根付いている反原発の立場とがしっかり結びついて、ある社会が脱原発の社会でありうるためには、その社会はどんなものでなければならないか、端緒的な意識が根拠をもつ確信に高まるということを自覚し得たのです。 匆々敬具
------------------------- 勝木 渥 <akatsuki-tanusa@nifty.com> 206-0036
 東京都多摩市中沢2-11-3-102


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加納 誠 Makoto KANO
地球環境緑蔭塾 Earth System Ryokuin-juku
〒226-0015:横浜市緑区三保町1577-1 Tel&Fax: 045-934-1129
1577-1 Miho-Cho, Midori-Ku, Yokohama 226-0015, Japan
山口支部 〒756-0817: 山陽小野田市小野田4837-1 Tel&Fax: 0836-39-3320
E-Mail: 1129makotokano@gmail.com  URL: http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/~mkano/
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