小水力発電
イームル工業株式会社 営業部 専任部長 長谷川通夫氏 - インタビュー ...
http://eco.goo.ne.jp/business/keiei/keyperson/57-1.html 小水力発電には60年の歴史がある
──御社は、国内有数の水力発電の専門メーカーとして、大手重電メーカーが手がけない小規模の水力発電を、戦後まもない頃から手がけつづけていらっしゃいますね。
当社を創立した織田史郎は、オリンピックで日本初の金メダルを獲得した三段跳びの織田幹男の兄なんですが、この織田史郎が、戦争で疲弊した中国地方の農山村にも電気を供給し、食糧の増産に役立てたいという情熱を持って、広島電気(現 中国電力)の在職中に培った技術や人脈を活かして、昭和22年ごろから農山村の無電化地域向けに小水力発電設備の供給に打ち込んできたんです。二十数年間でおよそ100カ所建設しましたが、このうち50数カ所は今も現役で稼働しているんですよ。
──イームル工業という社名だけを見ると、外資系企業のように思えました。
「イームル(EAML)」は、Electric(電気)、Agriculture(農業)、Machine(機械)、Life(生活)の頭文字を並べた造語です。AgricultureのAが含まれているところが味噌で、創業当初は農山村の振興を目的として発電所をつくっていたということですね。
──そういう発電施設の出力規模は。
平均すれば100~200kWといったところです。これは当時の過疎地の農山村では100世帯分相当の電力をまかなえる発電規模でした。
──小規模の発電所の多くは、戦後全国で多数建設されたようですが、大規模ダムの増加によって、次々に廃止されたとか。御社が手がけられた発電所が、まだ50数カ所も現役で活躍しているというのは驚きですね。
単独式といって、自ら配電もするタイプは設備が老朽化したり、採算面から大規模発電に太刀打ちできずに撤退していますが、出力した電気を電力会社に買い取ってもらえる連係式は、売電した収益を維持管理等に充てることができ、いまも運転を続けています。
もちろん私どもでも製造コストの自動化を進めたりして、小規模水力発電の経済性を高める努力を続けてきたわけですが。[写真]水車試験室 製造・加工工程
──ずっと小水力の灯をたやさずに来て、ここにきて、電力会社に再生エネルギーの調達を義務付けたRPS法(再生可能エネルギー促進法)の対象として、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などと並ぶ新エネルギーのひとつとして、がぜん小水力発電が注目されはじめましたね。
新エネルギーとはいえ、すでに長い歴史があるわけです(笑)。川の本流はそのままにして、流れの一部をバイパスに導き、落差を利用して水圧で発電するタイプが一般的ですが、大規模なダムを建設しないため、環境破壊が少なく、景観にもさほど影響を及ぼさない。また24時間、昼夜を問わず発電できますからアワーを稼げ、太陽光発電や風力発電などと比べて設備の利用効率が高く、CO2も発生させません。
最近では河川水を利用したもののほかに、工業用水や上下水道、農業用水を利用するもの、鉄鋼や化学工場などの冷却水の余剰圧力を利用したプラント内への建設も盛んになってきました。
[写真]工場内用水のエネルギー回収のためのマイクロ水車発電機設置例