中小企業のES=人間性尊重経営のパイオニア/有限会社人事・労務 ES組織開発・人事制度改革ブログ

社員の幸せ、職場の幸せを基準に経営を、社風を変えたいと本気で思っている社長さん・人事担当者の方へのエールをあなたへ!

文化人類学的に見た「贈り物」と「商品」の違い

2019-10-18 17:46:02 | 経営全般
最近は社会環境やIT技術の変化で、「良い組織」のありかたも激変してきています。これまでの常識が通用しないような会社も多く出始めています。そんな中で、若手社長たちと話して出たキーワードの一つが「自然体」というもの。組織やそこで働く人も無理をしない、できるだけ正直に話す、情報は公開し皆で共有する、嫌なことはできるだけせずにやりたいことをやる、などです。そして、そのような若手社長の一人からよく読む本は、いわいる「経営指南書」といったものでなく、自然科学の本であったり、生物学のほんであったり、文化・芸術の本であったりすることが多いときいたことがあります。確かに大量生産、大量消費時代の組織の在り方、ビジネスのやりかたの成功事例をまとめたような経営書よりは、これからの時代、いかに自然と調和して組織をデザインしていくかを考えたほうがうまくいくのかもしれません。そんな中、興味深い本に出合いました。


「文化人類学の思考法」 松村圭一郎、中川理、石井美保 著 (世界思想社)

私自身、文化人類学という学問に対してほとんど知識がなかったのですが、簡単に言えば(あくまでも私の解釈)、その文化がどのような意味をもってできたかを具体的な事実や痕跡から検証していこうというもののようです。この検証がおもしろく、私たちが当たり前と思っていることがなぜ今当たり前となっているのか、たとえば、「なぜそれ自体には価値がない貨幣や紙幣、ましてや電子マネーに価値が生じているのか?」といったことを歴史をさかのぼりながら考えていきます。

私が特に興味をもったのは「贈り物」と「商品」の違いについて書かれていた箇所です。

「贈り物」は人と人とをつなげるのに対して、「商品」は作り手と売り手を無関係なものとして切り離す、のだそうです。確かに、私たちは商品を買うときはほとんどそれを誰が作ったのかなどは気にしません。逆に、贈り物をする時やされたときは、相手との距離がより近くなります。そして、贈り物は社会秩序の再生産を目指す長期的なサイクルにかかわるが、商品は、利潤を追求する個人の短期的交換サイクルにかかわる。例えば、親は子供に食事を用意しても子供からお金はとりません。



ただ、やがて子供は親の世話をしたり自分の子供に同じように世話をするようになります。一方、商品取引なら、その場で一番安く、いいものを買えればそれでいい。買う相手がどんな相手か関係ない。うーん、こう指摘されると確かに心豊か社会とは「贈与社会」だな、と思ってしまいます。

もちろん、今の資本主義のシステムを贈与だけの経済に戻すこともできませんし、そうなったら今の豊かな生活ができなくなります。私も今の商品豊かな生活を捨てたくありません。ただ、人間は長い歴史の中で「贈与社会」の中でつながりを強めてきたのかもしれません。これからの会社は、「たくさん作ってたくさん売ってたくさん儲ける」という考えよりも、中長期的に循環するような本当に必要なものを作り(あるいはサービスを提供し)、売り手と買い手の関係を強めていくような思考で商品づくりをしたほうがいいのかもしれません。

この本には次のようなことも書かれていました。
「贈与には与える義務、受け取る義務、お返しする義務の3つの義務がある。誰かから何かを受け取るというということは、その人の霊的な本質の何ものか、その人の魂の何ものかを受け取ることに他ならない。このようなものをずっと手元にとどめておくのは危険であろうし、命にかかわることになるかもしれない。ゲルマン語系の語源では『ギフト』は『毒』の意味があるらしい」

受け取り続けるだけの会社や人は、いつか毒にやられてしまうのかもしれません。

学生たちと渋沢資料館へ!日本の未来の働くを考える。

2019-08-06 21:01:01 | 経営全般
今年で11回目の日光街道徒歩行軍。
本番は11月。その下見に今回参加頂いた学生たちと今、一万円札で話題の渋沢栄一が晩年住んだという飛鳥山公園へ立ち寄る。



飛鳥山公園は、日光御成街道の調度、日本橋から2里(約8キロ)のあたりに位置をしており、今回一万円札で話題になる3年ほど前から毎年、ここに立ち寄ることにしている。
初日のメインのスポットでもある。



渋沢栄一といえば日本実業界の父、日本経済の近代化の基礎を築いた偉人だ。
高校生2人に大学生2人を含む総勢9人の参加。いつにもまして学生の参加率が高く、ボランティアメンバーの働く意識に大きな変化が起きているのか、私はそれが何かを知りたい。



90分ほど史料館を見て回った。毎年行くメンバーやその時の関心ごとによって入ってくる情報や感じ方が大きく変化するから不思議だ。
今回は、晩香盧、青淵文庫という建物に私は関心が行く。
渋沢栄一が、賓客をもてなした晩香盧。そして、論語や徳川慶喜の伝記資料の蒐集、普及、保存を目的とした青淵文庫。
渋沢栄一が愛した空間というものが建物、調度品そして窓辺から見える風景といった全体が時空を超えて問いかけてくる。そして、渋沢栄一が論語を愛し、師匠ある徳川慶喜への敬愛の深さを資料からだけでなく建物全体から伝わってくる。

さて、学生たちはどうだったのか、さぞかし退屈なのだろうと。渋沢栄一と言う人についてほとんど知識がない学生がどこまで関心を寄せてくれるか、何に気づきをもってくれるか、私自身興味がある。一通り見てまわったあと野外でのミーティング。
思い思いに感じたこと、気づきを語り合う。



その中の一人の高校生の問いかけが印象だった。彼女はいろいろな経緯からある種の死生観を持っており、もっと自由にそして自分の様々な出来事を自分にプラスに捉え、そこから自分の将来が生きていく意味がどこにあるのかを探り今、食べ物や農業と言うものに関心をもって弊団体のボランティアに参加したという。

渋沢栄一の若かりしころも尊皇攘夷という時代に翻弄されながら高ぶる思いを時代にぶつけ、世界にぶつけ明治の日本の近代化へ。ちょうど、折しも、先月は、渋沢栄一が中心となって手がけた官営富岡製糸場を見て回ったが日本がいかに危機感をもって近代化に努め新しい国の礎を築いていったかが伺えた。
それこそ、江戸から明治へのその当時の「日本の未来の働く」を自らの意志で形にしてきた人物だと言えるだろう。

高校生本人の自分への問いかけはまさに渋沢栄一が彼のほとばしる若かりし頃のエネルギーを単なるエゴで終わらせるのでなく様々な人たちとの出会い、ことに徳川慶喜との出会いや異国の偉人や海外での見聞といった直接体験から大きく変容していく渋沢栄一のあり方に心を動かされたようだ。
彼女のいささか達観していることもあるが、いつ人はなくなるかわからない、自分のやりたいことを精一杯やって生きていきたい。そして、周りの人を幸せにしたいという言葉はまさに渋沢栄一の論語と算盤の儲けた利益は皆の幸せのために使うという考えなのではないだろうか。

今回集まったメンバーは若い世代のほんの一部だが彼らは経験というものを大切にしている。ある学生は先生と話して経験というものがいかに大切かを話し合って参加したという。いくら勉強しても実際に体験したことしか人に語ることはできない。将来面接をしたときに経験していないことはすぐに相手に伝わってしまうから今回は自分が関心を持っていることを経験したいと思ってここに来たという。

渋沢栄一は、道徳と経営は合一すべきであるという。もともとの日本経済の始まりはそこにあった。そして、富岡製糸場を見学した折もまさに日本の近代化にかける思い、産業の模範となるべく労働者へのケアそして、渋沢栄一も史料館のなかでも説明書きがされていたが労使の協調会をつくるなど当時は、官民、労使共に今よりは、働くことへの気概がそこにはあったと思う。

私も含め日本の近代の「働く」の出発点はここにあったのだ。
その当時から180年、渋沢栄一の「会社、働く」の世界観は形骸化してしまっている。
若者の厭勤感は令和の時代に入りピークに達している。

渋沢栄一が夢見た日本の未来のはたらくの哲学は今こそ大切な日本の仕事観なのではないだろうか?
それが、
渋沢栄一が、後進の企業家を育成するために、経営哲学を語った談話録。論語の精神に基づいた道義に則った商売をし、儲けた利益はみなの幸せのために使う。
という哲学は、実は私達大人が、そして経営を担うもの自らが貶めているのではないだろうか?若者達の働く意欲の問題でなくこちら側に課題があるように思えてくるのだ。

今週8/8(木)には皆でオンラインの読書会をする。学生から経営者まで様々な立場のメンバーが集っての渋沢栄一を話材にしての読書会さらに深く皆へ問いかけてみたいと思う。


教養講座「読書会 TERAKOYA 」▼




「中小企業の退職金の見直し・設計・運用の実務」再改訂版 発刊!

2019-07-29 18:48:05 | 経営全般
ご好評いただいている「中小企業の退職金の見直し・設計・運用の実務」の再改訂版が発刊されました。



本書は、「退職金制度の設計方法や見直しの方法」や「各種退職金制度の特徴」だけではなく、退職金制度にかかせない「資金準備の方法」や「トラブルを防止する退職金規程の記載方法」を中心に、これまで記述されることの少なかった「役員退職金」や実務上必要な「税金計算の方法」まで、退職金制度の一通りを網羅しています。

これらに加え、再改訂版ではさらには多様な働き方や人手不足に対応するための短時間勤務正社員や契約社員、パートタイマーに対する退職金の戦略的な活用方法も示しています。

退職金制度をこれから導入しようとしている企業、現在の退職金制度を見直そうという企業、退職金制度の興味がある企業すべての方にご一読いただきたい書籍です。