半島口蹄疫

　宮崎県で口蹄疫の発生が確認されたのは昨年の４月２０日のことだ。その数か月前、韓国で口蹄疫が発生していた。韓国の口蹄疫は宮崎の口蹄疫がおさまらない６月には終息しており、韓国の徹底した防疫体制を褒め、それに比べて日本は、という報道も多かった。日本では８月末あたりにようやくすべての検査が陰性となり、終息宣言を出した。その後、１１月になって韓国で口蹄疫が再発し、今もって終息していない。殺処分になった牛や豚はすでに２１０万頭もいるという。韓国の全頭数の約１５％に上るというからおそろしい。

　同じ半島にあって伝染しないはずはないと思っていたが、どうやら思った通り北朝鮮でも昨年末つまり２～３週間前、口蹄疫の発生が確認されていたらしい。韓国のように最新の機器と薬品を使って徹底的に防疫してもなお防ぎきれない口蹄疫を、物資が乏しい北朝鮮が抑えることができるとはとても考えられない。おそらくここ数か月のうちに北朝鮮全土で口蹄疫の感染被害が広がるだろう。冬の最も寒い時期と重なる。それでなくとも食料品不足の北朝鮮国民は寒くひもじい冬を越さなくてはならない。

　もしかすると感染は中国にも広がるかもしれない。中国に広がった口蹄疫を中国側が対策する間、北朝鮮への支援がおろそかになると、北朝鮮はさらに厳しい状況に追いやられるだろう。しかも春が来て暖かくなっても口蹄疫で死んだ牛や豚の死骸の処分は終わっていないことが予想される。春から初夏にかけて新しい伝染病の発生すら懸念される。後継者問題で韓国に砲撃までせざるを得なかった北朝鮮が、国家として国民の生活を最低限保障することができない事態が今年やってこないとも限らない。
　
　飢餓と病気に苦しむ多くの国民を前にして、北朝鮮の軍隊がどのような行動を取るか、韓国と米露の軍隊は北朝鮮の軍隊にどのような行動を取らせるように動くか。中国はあくまで盾を失うことを嫌がる動きをするだろう。その中国に刺激されて破滅的な動きをせず、最小限の痛みだけで朝鮮半島の本来あるべき姿に復帰する道を取ってくれればよいが。
　
　朝鮮半島が統一された場合、極端に貧しい北朝鮮側の人々を救済するため、若干は国力の低下もあるだろう。しかし、統一されたことによるメリットはすぐに現れる。現在の韓国の人口が５千万人程度、北朝鮮の人口が２千４百万人程度。７千万人の困難に立ち向かう前向きな国民を有する国家が新たに誕生することになる。２０世紀にアジアに突き刺さった大きな棘が抜けるようなものだ。

　たかが口蹄疫だけでそこまで行くものか、とも思うが、そうなりそうな時流というものがある。ちょうどアジアが変わって行く時期、変わらなければいけない時期に来ているように思う。北東から南西へ、いずれインドへ、そして時期が来れば変化はアフリカに移って行くだろう。面白い時代だ。情報が多すぎて取捨選択するのに疲れてしまうきらいはあるが、目を開いてじっくり世界を眺めていくべきだろう。


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