【12月20日投稿分】
読者の若者が「住職さん、『虎は死して皮を留め、人は死して名を残す』という言葉があるでしょ。名を残すにも色々、様々表し方がありますが、例えば、信長公、秀吉公、家康公の性質を表した言葉で、『鳴かぬなら(殺してしまえ、泣かせてみせよう、鳴くまで待とう)ホトトギス』というものが。が、これは、江戸時代に広まったものと。一説では、家康公が最も気が短かったのではないか、との説も。これは、世に広めた人の思惑も、何となくありそうで。因みに、信長公の身長は約170センチ、秀吉公は約150センチ、家康公は約155センチ、秀頼公は195センチくらいだったとの事。先日『どうする家康』が終わったばかりなので、まあ、必要のない情報ですが。さて、その真偽はともかくとして、松下幸之助さんは『鳴かぬなら、それもまたよし、ホトトギス』と。明石家さんまさんは『鳴かぬなら、俺が喋るぞ、ホトトギス』と。お2人共に味のある、らしい表現、をされてますよね。住職は、後世に残っている人の評価を表す言葉で『これはいい表現だな』と感銘を受けたものって、何かありますか」と。
対し、拙僧「先日ね、偶然に目に入った言葉なんだが、現代劇、時代劇を問わず『日本1の切られ役、殺され役』を演じてこられた事から「5万回切られた男」の異名を持つ大部屋俳優、もうお亡くなりになったが、福本清三さんというお方がおられてね。君、知ってるかい」「もちろんです」「その福本清三さんを『5万人の最期を演じた男』と表現された人がおられたらしくて、どこのどなただかは知らないが。この表現の仕方は、素晴らしいと思ったね。『福本さんが5万回切られた』ではなく、『福本さんが5万人、1人1人の人生の最期を演じた』と表現を。これは、福本さんの格を数段、引き上げてくれた言葉だよね」と。
続けて、拙僧「福本清三さんといえば、どうしても、トムクルーズさんや渡辺謙さんと共に出演された『ラストサムライ』が思い返されるんだが。長年、大部屋俳優としてコツコツ積み上げてこられた努力(精進)が、晩年、見事に開花を。拙僧も福本さんは、何故だか知らないが、気になっていた俳優さんの1人だったので、本当に嬉しかったね。『ラストサムライ』出演の後に、引退を考えられていた時、福本さんに映画で大きな仕事の依頼が入ってきたらしい。その同時期に、大部屋俳優としての『切られ役』の仕事の依頼も。福本さんは迷わず、切られ役の仕事を選択されたと。『切られ役でご飯を食べさせてもらってきたので、最後は、切られ役で終わらせたい』と言われたとか。恩を忘れない生き方が出来る人は、ほんと、魅力的(かっこいい)と思いますね」と、この読者の若者に。
これは余談ですが、先日、東京から拙僧の法話のファン、と言われる70代女性がわざわざお寺(北九州)に来られまして、2時間ほど色々と話をした後に、その女性が「住職さん、実は、私の主人は57歳でこの世を立って逝ったんですよね。立ち日の朝、食事をしながら主人が『有難うな。ここまで働いてこれたも、家が建てられたも、子供達が人並みに育ったも、みんな、お前さんのお陰だわ。考えたら、俺は何もしとらん。もし、万が一、俺が先立って、知り合い達から、ご主人は、いい人だったですよね、と声を掛けられたとしたら、そうした声は全て、俺からお前さんへの、有難うの言葉、だと受け取ってくれ』と。その数時間後、主人は電車を待っていた時に、突然の心筋梗塞で。そんな言葉を残して、ずるいですよね。でも、ほんとに、いい主人でした」と。年末に降って湧いた様に、こんなよか話が入って来ましたので、読者の皆様にご紹介を。いや〜、夫婦っていいですね。
次回の投稿法話は、12月25日になります。
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