【1月15日投稿分】
4日前の1月11日の夜中2時のこと、今年還暦になる男性(写真店社長)が入浴中、安らかな表情で他界を。わが寺ではこの様な突然死、これで何人目かな。この様な事が起こる度に、特に若い人達に「40代前後で朝、死んでいたが、わが寺では6人。この6人は皆、過労死。死因は皆、心不全。会社は、歯車が壊れたら、別の歯車に入れ替えるだけ。仕事が忙しくて休めないのなら、別の何かをセーブ(酒、煙草、遊び)しなきゃ。何もかんもじゃ、若いからって、流石に体が悲鳴を上げるよ。自分だけは死なん、と思っとろ。明日の命を約束されている人間なんて、誰1人もおらんよ」と彼らに。
故人のご家族から連絡を受け、急いで北九州から大分県へ。枕経、通夜、葬式の中で、最も大事なのは、枕経。ご臨終と言われて、約8時間は耳が聞こえとる。「あなたは死んだんだよ。向こうに行く準備をしなっせ」と故人に知らせるが、枕経にて。今でこそ、それ(8時間)が検証されておりますが、昔の住職さん達は、臨終後に8時間、耳が聞こえとる事など、知る由も。恐らく「早く故人に、死んだ事を知らせにゃ」の思いから、夜中でも、どんなに遠くでも、駆け付けて行ったものと。枕経は故人の為、通夜、葬式は、どちらかといえば、残った人間の為に勤めるもの。お世話になった故人に対する御礼報謝の法要が、通夜、葬儀ですもんね。だから、しなくてもいい、というものではない。
故人の家に伺うと、母親(82歳)と遠方から偶々正月帰省で里帰りをしていた、故人の息子(次男)さんの2人が。長男さんと故人の奥さんは、この日(他界日)は朝から、成人式の記念写真撮影の仕事があるので、朝も早い内から仕事場で準備を。故人の母親が拙僧に「孫(故人の長男)が私に『父さん(故人)が以前、俺に、住職(拙僧の事)さんの父上は他界前、住職(拙僧)さんに、親が死んだくらいで、仕事を休むな。檀家さんに迷惑を掛ける事はならん。お寺は檀家さんの事を1番に考えなきゃならん、と言ったそうだよ、と教えてくれたんだ。だから、俺も仕事(お客さん)を優先する。その方が父さん(故人)も喜ぶと思うから』と。息子は子供達にそんな話をしていたみたいで。これは、驚きでした。住職(拙僧の事)の法話は聞いてないと思っていたんですが、聞いてたんですね」と。
その次男(故人の子供)さんに「拙僧は、41歳の時に父親(行年73歳)を失ったが、その時点で数千万の借金を背負わされた。背負わされたは、ちょっと違うか。ボロボロのお寺を建て直した借金だもんね。その時、何より助かったは、妻が男気のある女性だった事かな。『パパ、先の事は考えず、1日、1日、懸命に勤めていけば、その内に何とかなるよ』と拙僧に。ギャーギャー騒ぎ立てる女性だったら、大変だったと思うが、そうじゃなかったからね。まあ、何にせよ、懸命にやれば、何とかなるもんだ。何とかならんでも、それなりに納得出来るもんだ」と、故人の息子(次男)さんに。
更に、拙僧「今思えば、親が早く亡くなったお陰で、甘えが吹っ飛び、仕事に対し、真剣に取り組む事が出来た。気付いたら、何とか形だけは、様(住職という姿)になっていったかな。徳川二代将軍の秀忠公が『大名達は、わしを上様、上様と立ててはくれるが、心は皆、駿府(家康公在所、今の静岡県)の方に向いておる。が、10年も上様、上様と呼ばれ続ければ、それなりの姿になるものだ』と。本人(秀忠公)さんはそう言うけれど、秀忠公の10年は、相当な試練だったと思うよ。枝葉の先は、風当たりは強いもの。家康公も『天下を取るは、至難の業。が、天下を守り続けるは、もっと難しい』と言われたとか。君達(故人の息子2人)も10年後に、何故、父親がこんなに早く旅立って逝ったのか、その意味(答え)を知る事が出来る様に、懸命に日々の精進に勤しみ、大きくなれや」と。
この故人の戒名は『継承院写道英真居士位』と授けました。故人の名は『英樹』で『父親から代を受け継ぎ、この道(写真店)一筋で一生を』から、この様な戒名を。拙僧の俗名は『山本博文』ですが『山本博文位』では、どんな人だったのか、さっぱりです。わが寺の過去帳を見ると、使われている漢字から、職業、人柄、死因、などが読み取れる戒名が数多に。戒名はその家にとって、何よりの資料に。子孫にとって戒名は、100年前の祖先を知る事が出来る、つまり、ロマンですよね。昨今では、戒名などいらん、という人がいますが、確かに、あまりにも戒名料が高額になり過ぎている寺院も。わが寺では戒名料は無料ですが、お寺によっては、その戒名料のおかげで運営が成り立っている寺院も少なからず。ある大きな宗団では、年収が、年収ですよ、10万円以下というが宗団全体の1割、年収が50万円以下というが宗団全体の4割と。日本全体で77000ヶ寺ある内、既に20000ヶ寺以上が、廃寺(住職不在)に。近い将来、50000ヶ寺が廃寺になるとの事。『坊主丸儲け』と言われる様な裕福な寺院は、恐らく一握りもないでしょうね。
さて、戒名と言えば、本来、存命中にもらうもの。わが寺の檀家の爺様(90代)から「住職よ、わしに戒名くれ」と頼まれたので「爺様の生き様から授ける事になるけど、それでいいかい」と返すと、伴侶の婆様が「住職さん、ご遠慮なく、思うがままに」と。そこで拙僧、なればと『天寿院好色一代居士位』と付けると、爺様絶句、婆様大笑い。すると爺様が「これじゃ、今後100年『この先祖さん、よっぽど女性好きだったのか、それとも、英雄色を好む、の大人物だったのか、どっちかだな』と、数多の子孫の笑い者になるわい。住職よ、何とかならんかい」と焦り顔で。「じゃ、爺様。恐らく死ぬまで、あと数年はあるだろうから、今から婆様をより一層大事にするかい。するなら『天寿院伴侶一筋居士位』に変えてやってもいいけどね」と言うと「そうする。絶対に」と、爺様が安心した顔で。
拙僧は住職の仕事で、何が好きかと言えば、戒名を授ける事ですかね。戒名さんは、その人の人生の記録(生きた証)になりますもんね。また、戒名授戒と共に、葬式も好きかな。故人の『人間世界を修了した卒業式』ですもんね、葬式は。一生という旅を歩き終えた人の最後に立ち会える仕事など、誰でも出来るという仕事じゃないですもんね。この戒名の話と、葬儀何たるかの話を、この度61歳で他界された男性の通夜、葬儀で、約450人(通夜、葬儀、合わせて)の会葬者さん達に。現在、インフルエンザ大流行の最中に、450人の会葬者とは、凄いでしょ。故人にお世話になった人達は、どんな状況であろうと工夫して、御礼報謝(葬儀)に足を運んで来られますもんね。葬儀の会葬者数を見れば、その人(故人)の人間性(人となり)が一目瞭然、1発でわかります。
【付録】
拙僧はこれまでに法話の本を3冊、世に出して頂きました。そのご縁がきっかけとなり、テレビ(約半年、週1回)、ラジオ、新聞、雑誌などや、教育委員会、学校、幼稚園、病院、老人ホーム、デイサービス、町内会老人の集い、倫理法人会、他宗寺院、葬儀斎場、社員研修などへの講演(北九州在住の拙僧が、遠方では九州南部、関西、関東、北陸、東北まで)にも呼んで頂き、方々で法話交流を。あらゆる話とまでは言えませんが、様々なジャンルである程度(仏教仏事系の他にも、癒し系、漫談系、人生系、目から鱗系、子育て系など)の話が。何かのお役に立ちそうでしたら、時間調整の許す限り、集いの大小問わず(参加者数人でも)足を運ばせて頂きますので、お気軽に、facebook、X、Instagram のメール(コメント欄)で、お声を掛けてくださいませ。勿論、この様なお話でいいなら、でございますが。拙僧も今年で62歳。これより先の残された時間を、1人でも多くの人のお役に立てれば、との思いです。『今、自分に出来る事を、今やる』ですね。
約10年間でSNSに投稿した3000話の長短法話を下記で読む事が出来ます。
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拙僧が持つグループ「出会うは運命、出会ってからは努力、最後は感謝」
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【追伸】尚「法話が長い」と不快感を示されておられる方々には、大変心苦しく申し訳ないので、拙僧の法話が目に入らない様に『ブロック』をさせてもらっております。楽しみにされている方々もおられますので、ご理解頂きまして、それでどうか、ご容赦くださいませ。
次回の投稿法話は、1月20日になります。添付写真は、左は家康公、右は秀忠公。
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