今日のシネマ
1983年 スペイン映画
1957年秋、15歳の少女、エストレリャは、父がもう帰ってこないと予感する。
ただ父と一緒にいるのが嬉しかった幼い頃には、彼の過去にも内戦にも考えは及ばなかった。
だんだんと離れていった父との最後の記憶は、初聖体拝受式でのダンス。
南には何があるのか・・・・。
名優オメロ・アントヌッティを迎え、少女の目を通して暗いスペインの歴史を描く、ビクトル・エリセ監督の珠玉の秀作。(映画com.より)
「ミツバチのささやき」 からエリセ監督の他の作品も観たくてリストに入れていました。
まず、無音のオープニングクレジットから始まり
そのまま、真っ暗な映像に突入し、犬の声、そして何かが起きている気配、と
徐々に暗闇に目が慣れていくみたいに光が増していく感じ・・・
この冒頭シーンで釘付けです。
こんなに光を上手に使った映画、今まであったでしょうか。
それは最後まで秀抜で、主人公の少女、エストレリャの心の中と比例しているように感じました。
「ミツバチ・・・」同様、スペインの当時の状況を理解していると
もっと深いところまで共鳴できたのかもしれません。
エル・スール とは 「南」 という意味。
父が捨てた地で 今度は娘が再出発するわけですね。
説明がこんなに少ない映画なのに この家族のそれぞれの想いを受け止めることができるのは
それだけ描写が巧みである、ってことなんでしょう。
エンターテインメイト性の高い映画で、感動の間をドカンドカンと満たした後、
芸術性の高い作品でその隙間を埋め尽くす・・
なんて贅沢なんだ。