
新田次郎 著。
山に関心がある人には余りにも有名で、多くの人が読んでいると思われる小説です。
妹から 「『孤高の人』って読んだ?」 と聞かれ、
そういえば、読もう読もうと思っていたのにまだ未読だった、と思い出し
今頃になってやっと読みました。
加藤文太郎という実在の登山家をモデルにし、登場人物の多くが実在だった人です。
大正から昭和にかけて、群れを好まず どこまでも単独で山を歩いた文太郎。
冬山に魅せられ、経験を重ねながら彼なりの知識や技術を磨いていきます。
変人扱いされ、彼の悪口を言う人は絶えませんでしたが
彼の健脚ぶりはやがて、山の世界で有名になっていきます。
結婚したあとの文太郎は 人が変わったように温厚で他人への接し方も変化しますが、
幸せは長くは続かず、彼は31歳という若さで冬山で遭難死します。
それも、あんなに嫌っていたパーティー登山で・・・
これは小説です。
実在のモデルはいますが、特に最後の山行での詳細はわかりません。
実際にはどんなやり取りがあって 何故あんなことになったのか、
私たちは著者の文章を頼りに想像することしかできません。
あそこでああしていれば・・・と読者には悔しい想いが残りますが、
きっと、最後の一瞬まで、文太郎は誠心誠意、山と向き合っていたに違いない。
もっと彼のことが知りたくなりました。