醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  877号  白井一道

2018-10-11 16:25:37 | 随筆・小説


 「とことん共産党」をyou tubeで見た


 共産党宣伝番組に若手の保守論客といわれている東京工業大学教授中島岳志氏が出演していた。私は中島氏の著書を一冊も読んだことがない。ただこの番組を見た感想を書いてみたい。
 中島氏自ら話したことで知ったことがあった。師匠が東大教授であった西部邁だということ。反共の闘志のように思っていた福田恆存が「大東亜戦争」に反対していたということを知った。
 西部邁と言えば、60年安保、全学連の闘志として知られていた人物である。ブントの理論家の一人であった。当時の日本共産党系の学生たちからトロツキストと言われていた人々の指導者の一人であった。唐牛健太郎という輝かしい全学連委員長と一番仲が良かったのが西部邁だと彼自身が後に評論家佐高信との対談番組で述べていた。
 後に西部邁は保守の論客として論壇で活躍した。晩年の西部は現日本共産党書記局長小池晃氏と一緒にテレビ番組に出演し、共感し合ったようだ。
 西部邁、政治学者中島岳志氏らが主張する政策と現日本共産党の政策に共通のものがあるということを述べていた。日本共産党の政策に日本の保守派の主張が共感しているということのようだ。日本共産党の政策が保守的なものに変わってきているというのだ。それにもかかわらず中島岳志氏は日本共産党という党名を堅持していることを褒めていた。日本共産党には96年にわたる歴史がある。共産党という看板を背負って亡くなっていった方々からの教訓、制約があるから共産党という党名は堅持していってほしいということのようだ。このことを死者の制約と言う言葉で述べていた。
 歴史は一夜にして変わることはないということを中島岳志氏の話を聞いて思った。昔読んだ寺沢恒信著『弁証法的論理学試論』を思い出した。この中で変化には急激に一気に起こる変化と徐々に少しづつ変わっていく変化があると述べていた。例えばロシア革命のように一気に急激に社会が変わることがある一方封建社会は少しづつしか変わっていかない。このことを「ハゲ頭」を例に取って説明していた。一本一本頭から毛を抜いていけばいつかは禿頭になるが、禿頭になるのがいつのことなのかわからない。頭の髪の毛が何本になったら禿頭になったといえるのか不明であるが確実に髪の毛を一本づつ抜いて行けば禿頭になる。
 資本主義社会が永遠に続いていくとは考えられない。しかしいつ資本主義社会が崩壊するのか誰にもわからない。ただ確実に資本主義社会が崩壊に向かっていることは間違いない。パックスアメリカーナの時代は終わっている。1929年の大恐慌が資本主義崩壊の始まりじゃないかと私は考えている。いやそれとも第一次世界大戦、第二次世界大戦が資本主義崩壊の始まりだったのかもしれない。これらの悲劇の中で新しい社会がうごめき始めたといえるのかもしれない。大きな社会の変動と観点から見ると急激な社会の変化はないようだ。
 例えばロシア革命にしても世界は大きく変わったように見えても現在のロシア社会を見れば社会は大きく変わらなかったということが言えそうだ。フランス革命にしても世界は大きく変わったと言えると同時にそれほど社会は変わらなかった。少しづつしか社会は変わっていかないということを小池晃氏と中島岳志氏の話を聞いて感じた。
 日本共産党は死者からの制約、または死者の財産の上に少しづつ社会を変えていく方向に向かって歩んでいるということのようだ。そうでなければ小池晃氏が主宰する共産党宣伝番組に中島岳志氏が出演するはずがない。
 日本共産党がこのように少しづつ社会を変えていく方向に梶を切る上で大きな役割をしたのが不破哲三氏なのではないかと考えている。大変な理論家なんだなぁーと思ってしまう。
 小池晃さん、私は一面識もありませんが、野党共闘を実現するため、共産党アレルギーを日本国民からなくすためにリベラルな人をこれからますます「とことん共産党」に出演してもらい、これが今の本当の共産党ですと宣伝してほしいと思います。