遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『ガイアの法則 [Ⅱ] 』  千賀一生  ヒカルランド

2012-09-17 13:33:13 | レビュー
 本書は『ガイアの法則[Ⅰ] 』の続編になっている。巻末に「本書はファンタジーであり、すべてフィクションです。」と明記されているので、やはりファンタジーとしては認識しまず読み進めた。ファンタジーであっても様々な意味合いで、大変興味深い問題の書であることは間違いない。
 『ガイアの法則[Ⅰ] 』ではファンタジーと断って書き始めていた。本書に著者自身の断り書きはない。前書ではシュメールの最高神官が語る一つの法則性を、著者がより具体的に解説するという形で、その意味するところを読者に理解せしめるような展開だった。最高神官の言説に対して、著者の解説部分がかなりのウェイトを占めていた。
 それに対して、本書の特徴はシュメールの最高神官が語る内容がほとんどであり、著書はその言説に感想やその思いを付記するという形式にウエイトが変化している。そして前書『ガイアの法則[Ⅰ] 』の内容が前提になっている。本書では神官の発言と著者の疑問が連動してテーマが展開されている。各所で前書に関連する部分が若干補足説明されているが、前書を読んでいなければ法則に関わるキーワードを十分に理解した上で読み進めることは難しいと思う。まあ、みずからのスピリチュアル性とフィーリングで読み進めればよいという読者には、本書での補足説明だけで一向に支障はないかもしれない。
 
 本書の論点は、東経135度に位置する我が国、「日本列島の中心が新周期の脈動点となる」ということについて、シュメールの最高神官がどのような内容を著者に語ったのかを詳細に伝えるという形式だ。つまり、宇宙のスピンリズムにうまく日本が乗るためには、何に気づき、何を変えて行かねばならないか、ということを縷々語っている。「世界を変える本質的な力とは何か」である。
 著者は意識的に前書では極力日本に関する情報を省いてまとめたという。それは最高神官の「伝えた情報の中には、日本の未来に関する情報が数多く含まれていた」(p19)からだと。そこでパート2として本書がまとめられたという設定である。「しかし、ある意味では、日本に関する情報こそ、彼が私を通して日本人に伝えたかったその中心情報でもあった」(p20)のだからと。これは導入部の記述としては、読者を引きつける。

 本書の副題は「中枢日本人は[アメノウズメ]の体現者となる」だ。また本書は次の7章から構成されている。(章番号は数字だけで表記)
 1 シュメール神官から日本人へ /2 陰陽の法則 /3 時空の法則
 4 ガイア文明へのプログラム /5 古代叡智の復活が新文明を誕生させる
 6 性と死の秘密 /7 愛と性に秘められた人間存在

 読みながら、何故?と考えてみる。その根拠説明が付けられていると思えない箇所がいくつもある。しかしその内容が論理の展開に重要な役割を果たしているのだ。これは、ファンタジーだから許されることなのだろうか。
*新たに興る地球文明の中心エリアは、東経135度から東に1.4度以内と説明されている。この1.4度以内という数値の根拠はどこにあるのだろうか?  p29
*西経37度前後が男性性極線、東経143度前後が女性性極線だとされている。なぜそう言えるのか? この経度が何を根拠に決められたのか? p91
*「宇宙は現象を現す本質リズムとしては1/16のリズムをもつ一方、結果的領域における相互作用のリズムとしては1/12のリズムを形成しやすい性質を持っている」(p71)と記されている。前書で本質リズムの点は具体的な説明があった。1/12リズムの関連づけは記憶が無い。「結果的領域における相互作用のリズム」とは何を意味するのか? 突然にこの表現が出てきているように思う。
*なぜ長期父性周期から始まり、長期母性周期に転換するのか? また、なぜ対立周期に始まり融合周期に転換するという順序なのか? 人間行動現象の経験則の当てはめと予測による設定なのか。 p73
*「円形心理は、他者への依存性を完全に超えるがゆえに真の共感性を産み出すのだ」(p164)とある。円形心理が共感性を生みやすいというのは体験的に感じるところがある。しかし、「他者への依存を完全に超える」となぜ言えるのだろうか?
*本書には、p221に『国生み神話 日本のはじめと淡路島』からの引用地図が掲載されている。この地図は、淡路島の諭鶴羽神社を中心に描かれた図である。だが、このページでの見出し行には、「淡路島の伊弉諾神宮を中心にした太陽運行図」と記されている。ネット検索で調べると、神社と神宮はそれぞれ存在する。ならば、なぜ説明を加えずに、伊弉諾神宮と変更する必要があるのか。諭鶴羽神社として引用すればそれでよいと思うのだが・・・・
*「現段階のこの地球上でも、全生命の内、99.9%以上の生命には、寿命というものが存在していない」(p232)と断定的に書かれている。これって、どのようなデータで立証されているのだろうか?

 本書は宇宙をスピンするものとしてとらえ、そのスピンリズムがすべてを方向づけているとする。そして、円宇宙観を論じているように受け止めた。第5章では「あなた方が魂とよぶスピリットの働き」を論じている。その本質論議は私には今一つしっくりと理解できない。当方にスピリチュアル性が未成熟だからだろうか。ふと、幾何学における点の定義を連想した。
 第6章では、「一元性の性の実現」「男性性と女性性」の統合が論じられている。ここの言説はかなりシンボリックな感じである。
 第7章では、神官の回りに8人の少女たちが巫女として登場する。本書の中では一番ファンタジックな記述の章になっている。性の宇宙原理が論じられていく。「あけわたしの次元」という概念はなかなか興味深い。「新しい時代は、女性たちの、自身の性質への真の目覚めから始まるのだ」と記す。(p336)
 第6章、第7章は、特に日本人に対してというより、論理は一般論として論じられているように受け止めた。そこに日本人が採りあげられている程度であるように思う。

 本書を読み進めるうちに、語り部であるシュメールの最高神官という設定に面白さを感じるようになった。古代シュメールの神官がなぜ、日露戦争の史実を知っていて、芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」という句を引用して説明できるのか。神官は不滅の存在なのか、宇宙のスピリットが神官の姿を化身として借りているだけということなのか。スピリットは地球と人間の全史を知っている。これだからこそ、フアンタジーなのか。神官は著者自身の自己投影なのかもしれない。そんな感じ。実に面白い設定だ。

 一方で、本書の文脈にとらわれずに興味深い観察あるいは哲理と思える記述がある。私にとって印象深い記述を引用する。
*いつの時代でも、そうした先駆的人物を理解できる人は、はじめはほんのひとにぎりにすぎず、認知できない者たちは自己投影でしか彼らを認識できないため、真の指導者ほどあなた方の社会では誤解や非難に遭うことが多い。過去のすべての調和文明は、ひとつの例外もなく、そうした自己犠牲的指導者によってその実現が図られた。 p84
*直線性と円性、あるいは垂直性と水平性の二つのパターンが、人類の創造性の本質にあるのだ。  p96
*観念的頭脳領域はあなた方の表層的意識領域でしかなく、人間の本質に最も近い領域は、宇宙自体につながる体感領域にある。空間とつながれば、あなた方はそれだけで完全なる存在なのだ。  p111
*人と人とが向かい合い、直線的な関係にある時、相手と自分という、相対観念が形成されやすい。・・・・人々が円的空間を形成させる時、相対観念よりも人間のより本質の共鳴的性質を増幅ざせやすくなる。・・・・隣に座る人々はみな同一対象へと向かう共感者として意識される。   p153
*直線的シンボリズムは、相対的世界認知であり、円形シンボリズムは、絶対的世界認知だ。   p157
*現在の各国の国旗の選択のほとんどには、その民族の潜在意識の総和がシンボリックに表れている。  p165
*一を極めることによって全体性を学ぶ、これは、あなた方の閉ざされた超感覚を開く道なのだ。  p199
*言語による情報は、人々に様々な知識を提供するが、それ以上に、言語の裏にある潜在的思想性を伝染させる力がある。潜在的思想性は、顕在レベルの思考とは異なり、それに気付くことなく、世界観や人間観、異性観を変容させる。知識は消え去っても、そうして入り込んだ潜在的刷り込みは、容易に消えることはなく、刷り込まれたフィルターを通してしか他人や異性を認識できなくなる。  p333
*陰陽を超えるためには、陰陽を真に成就させ、流動させなくてはならない。 p345

 本書末尾で、著者は自分が見た夢の解釈を記している。
 「夢の意味することは、刷り込み観念の真の除去のためには、本書を知識を得るために読んでも意味がなく。錬磨の目的で活用できるかどうかであり、繰り返し体で把握する習い事のように体感しながら読むことが必要というメッセージではないだろうか。」と記す。意味深長な記述である。
 錬磨の目的に使用するためには、その内容が合理的論理的に認知できること、知識として理解でき受容できてこそ、錬磨の目的で活用しようと感じるのではないのかと私は感じている。
 この追記の意図についてのご判断は、本書を読んでから手放しで賛同かどうか、ご判断されるとよいのではないだろうか。賛否いずれにしろ興味深い一書であることは間違いない。 


ご一読ありがとうございます。

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 本書で気になる語句、関心を抱いた語句を検索してみた。派生で入手した情報を合わせて一覧にまとめておきたい。

アメノウズメ :ウィキペディア
籠目  :ウィキペディア
日本とヘブライの共通点(簡単にリストアップ)
終焉の鳥とダビデ紋

伊弉諾神宮 :ウィキペディア
淡路島 
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諭鶴羽山  :ウィキペディア
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