「偏愛的数学」という名付け方に興味をおぼえて読んでみた。
原題は "Mathematical Amazements and Surprises: Fascinating Figures and Noteworthy Numbers" である。直訳すれば、「数学上の驚嘆と意外さ:魅惑的な図形と注目すべき数」という意味合いだ。「偏愛的数学」というネーミングは、本書を通読すると、う~ん、なるほどと感じいる。よくぞこれだけ、数字の取り扱い、様々な計算を通して、数字のもつ不可思議さを集めてきたな・・・というものだ。やはり、ちょっとマニアックな本である。本書は原本を2巻に分けたうちの1冊。「注目すべき数」つまり「驚異の数」の側面を取り扱っている。つまり、
第1章 数の性質と関係の驚異
第2章 算術の楽しさと奇妙さ
第3章 計算の輪
の3章分を訳出されている。
この本、各章の各節がそれぞれ一つの「数の驚異」として独立した読み物になっているので、どの節からでも読むことができて、おもしろい。ただ、前後で緩やかな関連項目になっているものがある。これまた、前後して読むことも可能である。
ピタゴラスの時代から、数秘術と呼ばれる占術の領域が開発されてきているようだが、この本はまったくそれとは無関係である。(「数秘術」のクリックでウィミペディアの項目に)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B0%E7%A7%98%E8%A1%93
しかし、この本を読み進めていると、「数」についての不可思議さがそういう分野を生み出していったというのも、心理的にはうなずける気がおきるほど、数の計算結果から出る一連の事実に「驚嘆」し、「意外」な感銘すら生じてくる。過去の歴史の中で、数の研究とともに、数に取り憑かれた人、マニアックな人々が沢山居たのだということに思いを馳せる。
数の表記方法は古代から様々な方法がある。マヤ人の方法(点と横棒)、エジプト人の方法(象形文字)、ローマ人(ローマ数字)等々。フィボナッチという名で知られるピサのレオナルドが、1202年に「Liber Abaci」という書物を著し、インド数字を紹介して以来、西洋文明では、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9という数字がつかれるようになったようだ。
本書ではこのインド数字、つまり我々が日常当たり前のように使っているこの0から9までの数字を組み合わしてできる数値をさまざまに計算してみることから産まれる驚嘆すべき結果を紹介している。ある意味では驚嘆事例の列挙本である。だから、どこから読んでも楽しめるのだ。
本書を読んで、その意外性を満喫していただくイントロとして、私が面白いなと思ったケースをいくつかご紹介して、驚嘆・意外の印象に代えてさせていただこう。本書はびっくりする事実に満ちている。本書を手に取って、ゆっくりとその驚異にはまったいただくとよい。本書に取り上がられている順で、いくつか列挙しよう。
1. 666という数の不思議さ p5-10
1) 1+2+3+4+5+・・・・・+34+35+36=666 1から36の自然数の総和
2) 最初の7つの素数(2,3,5,7,11,13,17)のそれぞれの2乗の総和は666
3) 666の47乗と666の51乗のそれぞれの数字根はどちらも666
数字根とは、「ある自然数を10進表記したときの各桁の数字の総和」のこと。
4) 666の2乗の各桁の数字を3乗した総和に、666の3乗の数字根を加算すると、666
5) 6を3回加算し、6の3乗を3回加算する、つまりそれら6つの数の総和は666
2. 7による整除性の法則 p16-18
与えられた数の最下位桁の数字を除去し、残った数から除去した数の2倍を引く。
その結果が7で割り切れるとき、そしてそのときに限り元の数は7で割り切れる。
判定を下すには結果がまだ大きすぎる場合は、この操作を何度でも繰り返すことができる。
例) 876547 は 7で割り切れるか?
876547 -14 = 87640
8764 - 0 = 8764
876 - 8 = 868
86 - 16 = 70 なので、元の数は7で割り切れる。
3. 完全数という名で呼ばれる数の存在 :真の約数の和が自分と等しい数 p40-42
例) 6 = 1+2+3
28 = 1+2+4+7+14
496 = 1+2+4+8+16+31+62+124+248
4. 好みの数 p69-70
a) 12345679 という数がある
b) 1から9までの数から1つ自分好みの数を撰ぶ
c) 選んだ数を9倍する。
d) 9倍した数をaの12345679に掛けて計算する。
すると、その結果はbで選んだ数字の並んだ結果となっている。
5. 89ループ 平方数字根の不思議 p114-122
a)勝手な数を一つ選ぶ
b)その各桁の数の平方の総和を計算する。この結果を平方数字根という。
c)この操作を繰り返す。
d)最終的には、1か89に到達し、そのループに入ってしまう。
例) ある数に5をとる。
5の2乗 25
2の2乗+5の2乗=4+25=29
2の2乗+9の2乗=4+81=85
8の2乗+5の2乗=64+25=89
結果の89で平方数字根を繰り返すと、89に戻ってくる。ループに入る。
同様に、例えばある数が、13、32だと、最終は1のループになる。
本書には、別の有名なループとして、インド人数学者カプレカーが1946年に発見した6174というカプレカーの定数、その変種、ウラム・コラッツのループ、数の巡回的ループ、1089のループなど、様々な「数の輪」を解説していく。実におもしろくて、不思議だ。
こんなマジック的な不思議さを知ると、きっと読んでみたくなるだろう。ここにはトリック、ごまかしはまったくない。全部ちゃんとした計算結果として出る事実ばかり。だからこそ、「驚嘆」し「意外さ」を感じるのだろう。あれっ、不思議! おもろい! 楽しい!
このほかに、第1章を「数秘術」を気楽な話題(p55-57)としてとりあげているのもおもしろい。第2章では「ところ変われば」という項で、算術計算方法が国によって違うことを説明している。合衆国、ドイツ、アジア、スウェーデン、ロシアをとりあげて、減算と乗算の方法を例示している(p91-97)。これまた、エッ!と驚き。日本の学校教育で習ったやり方がどこでも取られているやり方だと勝手に思い込んでいた。目から鱗・・・・である。その次の項目、「ネーピアの算木」も奇妙だけれどおもしろい。乗算「機械」の発明だ(p98-99)。また「覆面算」において、覆面算と虫喰い算のロジック解説をしてくれているのもなるほどと興味深い。
FORTY
TEN
+TEN
-------
SIXTY こんな覆面算の例についての解説も載っている。解けますか?
「あとがき」で、ハーバート・A.・ハウプトマンは、自分自身の数学への愛の始まりを述べたあと、「整数値ポンドの重みを持つ分銅だけを使って天秤で重さを測るとき、1ポンドからnポンドまで全部を測れるようにするには最少で何個の分銅が必要だろうか?」という課題を設定して、解説しているのもおもしろい。そのハウプトマンが末尾に「数学的驚異の金塊がぎっしり詰まったこの本」と賛辞を呈している。
ご一読ありがとうございます。
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ネットにここで取りあげられている項目が公開させているか、少し検索してみた。その結果をまとめておこう。
フィボナッチ数 :「12さんすう34数学5Go!」
フィボナッチ数を極める :「私の備忘録」
パスカルの三角形 :ウィキペディア
三角数 :ウィキペディア
完全数 :「私の備忘録」
自然数の加法回文性 :「数学者の密室」
約数の和、友愛数 :「数学者の密室」
角谷の予想 :「中学数学の基本問題」
ネイピアの計算棒(ネピアの計算棒 ネーピアの計算棒) :「これなあに?」
ネイピアの骨 :ウィキペディア
覆面算 :ウィキペディア
覆面算 :学ぶ教える.com
虫喰い・覆面算一覧 :クイズ大陸
覆面ソルバー Naoyuki Tamura氏
6174の不思議 西山豊氏
カプレカー変換 灘校 数学研究部
コラッツの問題 :ウィキペディア
数学に関する記事の一覧 :ウィキペディア
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原題は "Mathematical Amazements and Surprises: Fascinating Figures and Noteworthy Numbers" である。直訳すれば、「数学上の驚嘆と意外さ:魅惑的な図形と注目すべき数」という意味合いだ。「偏愛的数学」というネーミングは、本書を通読すると、う~ん、なるほどと感じいる。よくぞこれだけ、数字の取り扱い、様々な計算を通して、数字のもつ不可思議さを集めてきたな・・・というものだ。やはり、ちょっとマニアックな本である。本書は原本を2巻に分けたうちの1冊。「注目すべき数」つまり「驚異の数」の側面を取り扱っている。つまり、
第1章 数の性質と関係の驚異
第2章 算術の楽しさと奇妙さ
第3章 計算の輪
の3章分を訳出されている。
この本、各章の各節がそれぞれ一つの「数の驚異」として独立した読み物になっているので、どの節からでも読むことができて、おもしろい。ただ、前後で緩やかな関連項目になっているものがある。これまた、前後して読むことも可能である。
ピタゴラスの時代から、数秘術と呼ばれる占術の領域が開発されてきているようだが、この本はまったくそれとは無関係である。(「数秘術」のクリックでウィミペディアの項目に)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B0%E7%A7%98%E8%A1%93
しかし、この本を読み進めていると、「数」についての不可思議さがそういう分野を生み出していったというのも、心理的にはうなずける気がおきるほど、数の計算結果から出る一連の事実に「驚嘆」し、「意外」な感銘すら生じてくる。過去の歴史の中で、数の研究とともに、数に取り憑かれた人、マニアックな人々が沢山居たのだということに思いを馳せる。
数の表記方法は古代から様々な方法がある。マヤ人の方法(点と横棒)、エジプト人の方法(象形文字)、ローマ人(ローマ数字)等々。フィボナッチという名で知られるピサのレオナルドが、1202年に「Liber Abaci」という書物を著し、インド数字を紹介して以来、西洋文明では、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9という数字がつかれるようになったようだ。
本書ではこのインド数字、つまり我々が日常当たり前のように使っているこの0から9までの数字を組み合わしてできる数値をさまざまに計算してみることから産まれる驚嘆すべき結果を紹介している。ある意味では驚嘆事例の列挙本である。だから、どこから読んでも楽しめるのだ。
本書を読んで、その意外性を満喫していただくイントロとして、私が面白いなと思ったケースをいくつかご紹介して、驚嘆・意外の印象に代えてさせていただこう。本書はびっくりする事実に満ちている。本書を手に取って、ゆっくりとその驚異にはまったいただくとよい。本書に取り上がられている順で、いくつか列挙しよう。
1. 666という数の不思議さ p5-10
1) 1+2+3+4+5+・・・・・+34+35+36=666 1から36の自然数の総和
2) 最初の7つの素数(2,3,5,7,11,13,17)のそれぞれの2乗の総和は666
3) 666の47乗と666の51乗のそれぞれの数字根はどちらも666
数字根とは、「ある自然数を10進表記したときの各桁の数字の総和」のこと。
4) 666の2乗の各桁の数字を3乗した総和に、666の3乗の数字根を加算すると、666
5) 6を3回加算し、6の3乗を3回加算する、つまりそれら6つの数の総和は666
2. 7による整除性の法則 p16-18
与えられた数の最下位桁の数字を除去し、残った数から除去した数の2倍を引く。
その結果が7で割り切れるとき、そしてそのときに限り元の数は7で割り切れる。
判定を下すには結果がまだ大きすぎる場合は、この操作を何度でも繰り返すことができる。
例) 876547 は 7で割り切れるか?
876547 -14 = 87640
8764 - 0 = 8764
876 - 8 = 868
86 - 16 = 70 なので、元の数は7で割り切れる。
3. 完全数という名で呼ばれる数の存在 :真の約数の和が自分と等しい数 p40-42
例) 6 = 1+2+3
28 = 1+2+4+7+14
496 = 1+2+4+8+16+31+62+124+248
4. 好みの数 p69-70
a) 12345679 という数がある
b) 1から9までの数から1つ自分好みの数を撰ぶ
c) 選んだ数を9倍する。
d) 9倍した数をaの12345679に掛けて計算する。
すると、その結果はbで選んだ数字の並んだ結果となっている。
5. 89ループ 平方数字根の不思議 p114-122
a)勝手な数を一つ選ぶ
b)その各桁の数の平方の総和を計算する。この結果を平方数字根という。
c)この操作を繰り返す。
d)最終的には、1か89に到達し、そのループに入ってしまう。
例) ある数に5をとる。
5の2乗 25
2の2乗+5の2乗=4+25=29
2の2乗+9の2乗=4+81=85
8の2乗+5の2乗=64+25=89
結果の89で平方数字根を繰り返すと、89に戻ってくる。ループに入る。
同様に、例えばある数が、13、32だと、最終は1のループになる。
本書には、別の有名なループとして、インド人数学者カプレカーが1946年に発見した6174というカプレカーの定数、その変種、ウラム・コラッツのループ、数の巡回的ループ、1089のループなど、様々な「数の輪」を解説していく。実におもしろくて、不思議だ。
こんなマジック的な不思議さを知ると、きっと読んでみたくなるだろう。ここにはトリック、ごまかしはまったくない。全部ちゃんとした計算結果として出る事実ばかり。だからこそ、「驚嘆」し「意外さ」を感じるのだろう。あれっ、不思議! おもろい! 楽しい!
このほかに、第1章を「数秘術」を気楽な話題(p55-57)としてとりあげているのもおもしろい。第2章では「ところ変われば」という項で、算術計算方法が国によって違うことを説明している。合衆国、ドイツ、アジア、スウェーデン、ロシアをとりあげて、減算と乗算の方法を例示している(p91-97)。これまた、エッ!と驚き。日本の学校教育で習ったやり方がどこでも取られているやり方だと勝手に思い込んでいた。目から鱗・・・・である。その次の項目、「ネーピアの算木」も奇妙だけれどおもしろい。乗算「機械」の発明だ(p98-99)。また「覆面算」において、覆面算と虫喰い算のロジック解説をしてくれているのもなるほどと興味深い。
FORTY
TEN
+TEN
-------
SIXTY こんな覆面算の例についての解説も載っている。解けますか?
「あとがき」で、ハーバート・A.・ハウプトマンは、自分自身の数学への愛の始まりを述べたあと、「整数値ポンドの重みを持つ分銅だけを使って天秤で重さを測るとき、1ポンドからnポンドまで全部を測れるようにするには最少で何個の分銅が必要だろうか?」という課題を設定して、解説しているのもおもしろい。そのハウプトマンが末尾に「数学的驚異の金塊がぎっしり詰まったこの本」と賛辞を呈している。
ご一読ありがとうございます。
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フィボナッチ数 :「12さんすう34数学5Go!」
フィボナッチ数を極める :「私の備忘録」
パスカルの三角形 :ウィキペディア
三角数 :ウィキペディア
完全数 :「私の備忘録」
自然数の加法回文性 :「数学者の密室」
約数の和、友愛数 :「数学者の密室」
角谷の予想 :「中学数学の基本問題」
ネイピアの計算棒(ネピアの計算棒 ネーピアの計算棒) :「これなあに?」
ネイピアの骨 :ウィキペディア
覆面算 :ウィキペディア
覆面算 :学ぶ教える.com
虫喰い・覆面算一覧 :クイズ大陸
覆面ソルバー Naoyuki Tamura氏
6174の不思議 西山豊氏
カプレカー変換 灘校 数学研究部
コラッツの問題 :ウィキペディア
数学に関する記事の一覧 :ウィキペディア
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