千葉県内の国道沿いにある”なんでも買います”という看板を掲げた千葉鑑定団という店に、凜田莉子が出張鑑定する。そこで依頼された鑑定の品の一つが一枚のトレーディング・カードだった。莉子の眉間に皺が寄る。なぜなら、フォース・オブ・ウィルのシリーズのカードなのだが、鑑定した「ファイアエレメント」というのはそのシリーズには含まれていないカードだったのだ。
莉子の即座の実験分析で個人の手製による贋作と判明する。18歳の働いている成富賢也という子が売りに来たという。働いているということから、本人の身分証と印鑑だけで取引できたのだった。
「精巧な海賊版の一種と考えると、放置できませんね。私が調べます」と千葉鑑定団の店員に莉子は言う。店員はその調査費用のことを気にかけたが、「自己責任で働きますから。鑑定家として新たな知識を得られるなら、それがなによりの報酬です」と屈託のない笑みを浮かべて莉子は答えたのだ。
成富賢也の家を訪ねた莉子は本人からその経緯を聞き、賢也が無意識のうちに事件に巻き込まれていることを莉子は察知する。賢也の話を手がかりに、莉子の推理が働き、賢也に被害が及ばぬ前に、カードの贋作者を突き止めて、莉子は彼に対峙する。そして賢也への将来の被害が及ぶ根をまずは断ち切ってやることができる。
この事件そのものがメインの事件への導入となっていて、けっこうなるほどと思うケースである。贋作者は錦織秀樹といい、一見少年っぽく見える人物。18歳とみられても違和感のない男であるが、実は28歳。だが彼の正体は警視庁が古物商や鑑定業者に配布したチラシに載っている「贋作者A17号」だと莉子は見抜く。素性もあきらかでないため指名手配には至らないが謎の人物として、リストに載っていたのだ。
莉子は警察への通報を控えるからには、未成年には保護者。結婚前なら婚約者。家族に真実を知らせておく必要があると、きっぱり錦織に告げる。その結果、そこに現れたのは牧瀬恵玲梨という婚約者だった。
婚約者のいる錦織を、再犯に及ばないという確約で警察への通報をしないと莉子は決めた。この錦織から、彼があの雨森華蓮の弟子だったことを知らされる。
錦織の仕事を斡旋できるかがんばってみると莉子は彼らに告げた。そして恵玲梨に「喧嘩しないでくださいね、道を踏み外さない限りは、失敗があっても温かく見守ってあげてください。きっと成功する人なんだから」と莉子は励ますのだった。
警察に通報しない、仕事の斡旋にトライしてみるという莉子の取った選択肢が、とんでもない事件に莉子を巻き込んで行くことになる。
錦織英樹と恵玲梨が同棲するアパートの部屋にツアーへの招待状が届いたのだ。中国の実業家で資産家の周正天の代理人、史部公嗣という人物からの「海外芸術能力選定ツアー」への招待状だった。錦織はそれが莉子の約束していた仕事の斡旋に関連するものと受け止めてしまう。そして、その招待状を受けて集合場所に出向くのだ。
恵玲梨は、昨日会ったばかりの莉子なので、翌日のそのツアーへの招待には一抹の不安を抱く。結果的に、招待状の指示に従って出かけた錦織からの連絡が途絶えてしまう。
警察に失踪届をだすことも出来ない。「贋作者A17号」なのだから。恵玲梨が莉子に相談することから、この不可思議な海外ツァーの出来事が始まるのだ。
錦織の所在を追跡する為に、莉子と恵玲梨はそのツアーの行方を追うことになる。それも莉子は自己負担で、万能鑑定士Qの店を閉じて。なんと地中海3ヶ月の追跡旅行が始まってしまう。
このストーリーは、「周正天主催 海外芸術能力選定ツアー プログラム」という参加者に腕を競わせる、一種ゲームじみた企画の展開と、それを追跡し、このツアーの真の狙いの謎解きに迫っていく莉子の推理劇として展開する。実に奇妙でおもしろい発想が盛り込まれた海外転々いかさま劇である。そこに参加した人々はすねに傷を持つ贋作者ばかりという集団だったのだ。
ツアーは地中海に展開しているメディタラニアン航空の旅客機のコースすべてを利用できるという範囲において、最初の第1チェックポイントを参加者の中の地図係が自由に決めた後、チェックポイントに決められたルールに従い、次の目的地を航路図を使ってルールの範囲で自由に地図係が選んでいくという奇抜なものである。次はどこが目的地に選ばれるかは未知数なのだ。そして、その目的地では、指定された人物の頭部を、粘土を材料にした彫塑で作品として仕上げるというものなのだ。それをある場所に居る周正天が評価採点して連絡してくるという。そして最低点の参加者がその場で脱落するという方式の能力選定なのだった。
その詳細と展開プロセスは本書をお楽しみいただくとして、どの目的地にいくことになったかを記しておこう。莉子と恵玲梨は入手した情報から推理を駆使して、その目的地を追跡しながら、このツアーの真の狙いに気づいていくという趣向である。
日本→バルセロナ→サルディーニャ島→アレクサンドリア→アテネ→アテネ→ティラナ→モロッコという見た目には出鱈目なコースを行くツアーになるのだ。アテネが2回なのはルールに従ってアテネから辿ってアテネに戻ったという次第。
ところがこのルールにも緻密なしかけが施されていたということなのだ。莉子がその謎を解くことになる。というおもしろい展開である。
ご一読ありがとうございます。
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本書で関心を抱いた事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
英BBCが最新の科学技術を駆使してイエス・キリストの顔を復元
BBC unveils hi-tech Jesus BBC NEWS
From science and computers, a new face of Jesus
By Jeordan Legon CNN
ツタンカーメン王の顔復元、3チームが競演 2005.5.13 WIRED NEWS
Putting a Face on King Tut Wired Nwes 2005.5.11
クレオパトラの墓まもなく発見か、頭部彫像など見つかる :「AFP BB NEWS」
ファラオ像発見、クレオパトラの墓か? :「NATIONAL GEOGRAPHIC」
クレオパトラ7世 :ウィキペディア
ニコラウス・コペルニクス :ウィキペディア
NICOLAI COPERNICI MUSAEUM FROMBORCENSE ホームページ
伊達正宗 :ウィキペディア
伊達正宗の肖像画 仙台市博物館 :「仙台市」
石田三成 → 石田家の事 :「京都妙心寺 壽聖院」
石田三成 :ウィキペディア
石田三成公の復元像 :「クリス・グレン オフィシャルサイト」
卑弥呼 :ウィキペディア
大阪府立弥生文化博物館 ホームページ
大阪府立弥生文化博物館 :「邪馬台国大研究」
博物館に展示の卑弥呼の人形の写真が掲載されている。
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
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(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
万能鑑定士Qに関心を向け、読み進めてきたシリーズは次のものです。
こちらもお読みいただけると、うれしいです。
『万能鑑定士Qの攻略本』 角川文庫編集部/編 松岡圭祐事務所/監修
『万能鑑定士Qの短編集 Ⅰ』
☆推理劇シリーズ
『万能鑑定士Qの推理劇 Ⅰ』
『万能鑑定士Qの推理劇 Ⅱ』
『万能鑑定士Qの推理劇 Ⅳ』
☆事件簿シリーズは全作品分の印象記を掲載しています。
『万能鑑定士Q』(単行本) ← 文庫本ではⅠとⅡに分冊された。
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅲ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅳ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅴ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅵ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅶ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅷ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅸ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅹ』
『万能鑑定士Qの事件簿 ⅩⅠ』
『万能鑑定士Qの事件簿 ⅩⅡ』
莉子の即座の実験分析で個人の手製による贋作と判明する。18歳の働いている成富賢也という子が売りに来たという。働いているということから、本人の身分証と印鑑だけで取引できたのだった。
「精巧な海賊版の一種と考えると、放置できませんね。私が調べます」と千葉鑑定団の店員に莉子は言う。店員はその調査費用のことを気にかけたが、「自己責任で働きますから。鑑定家として新たな知識を得られるなら、それがなによりの報酬です」と屈託のない笑みを浮かべて莉子は答えたのだ。
成富賢也の家を訪ねた莉子は本人からその経緯を聞き、賢也が無意識のうちに事件に巻き込まれていることを莉子は察知する。賢也の話を手がかりに、莉子の推理が働き、賢也に被害が及ばぬ前に、カードの贋作者を突き止めて、莉子は彼に対峙する。そして賢也への将来の被害が及ぶ根をまずは断ち切ってやることができる。
この事件そのものがメインの事件への導入となっていて、けっこうなるほどと思うケースである。贋作者は錦織秀樹といい、一見少年っぽく見える人物。18歳とみられても違和感のない男であるが、実は28歳。だが彼の正体は警視庁が古物商や鑑定業者に配布したチラシに載っている「贋作者A17号」だと莉子は見抜く。素性もあきらかでないため指名手配には至らないが謎の人物として、リストに載っていたのだ。
莉子は警察への通報を控えるからには、未成年には保護者。結婚前なら婚約者。家族に真実を知らせておく必要があると、きっぱり錦織に告げる。その結果、そこに現れたのは牧瀬恵玲梨という婚約者だった。
婚約者のいる錦織を、再犯に及ばないという確約で警察への通報をしないと莉子は決めた。この錦織から、彼があの雨森華蓮の弟子だったことを知らされる。
錦織の仕事を斡旋できるかがんばってみると莉子は彼らに告げた。そして恵玲梨に「喧嘩しないでくださいね、道を踏み外さない限りは、失敗があっても温かく見守ってあげてください。きっと成功する人なんだから」と莉子は励ますのだった。
警察に通報しない、仕事の斡旋にトライしてみるという莉子の取った選択肢が、とんでもない事件に莉子を巻き込んで行くことになる。
錦織英樹と恵玲梨が同棲するアパートの部屋にツアーへの招待状が届いたのだ。中国の実業家で資産家の周正天の代理人、史部公嗣という人物からの「海外芸術能力選定ツアー」への招待状だった。錦織はそれが莉子の約束していた仕事の斡旋に関連するものと受け止めてしまう。そして、その招待状を受けて集合場所に出向くのだ。
恵玲梨は、昨日会ったばかりの莉子なので、翌日のそのツアーへの招待には一抹の不安を抱く。結果的に、招待状の指示に従って出かけた錦織からの連絡が途絶えてしまう。
警察に失踪届をだすことも出来ない。「贋作者A17号」なのだから。恵玲梨が莉子に相談することから、この不可思議な海外ツァーの出来事が始まるのだ。
錦織の所在を追跡する為に、莉子と恵玲梨はそのツアーの行方を追うことになる。それも莉子は自己負担で、万能鑑定士Qの店を閉じて。なんと地中海3ヶ月の追跡旅行が始まってしまう。
このストーリーは、「周正天主催 海外芸術能力選定ツアー プログラム」という参加者に腕を競わせる、一種ゲームじみた企画の展開と、それを追跡し、このツアーの真の狙いの謎解きに迫っていく莉子の推理劇として展開する。実に奇妙でおもしろい発想が盛り込まれた海外転々いかさま劇である。そこに参加した人々はすねに傷を持つ贋作者ばかりという集団だったのだ。
ツアーは地中海に展開しているメディタラニアン航空の旅客機のコースすべてを利用できるという範囲において、最初の第1チェックポイントを参加者の中の地図係が自由に決めた後、チェックポイントに決められたルールに従い、次の目的地を航路図を使ってルールの範囲で自由に地図係が選んでいくという奇抜なものである。次はどこが目的地に選ばれるかは未知数なのだ。そして、その目的地では、指定された人物の頭部を、粘土を材料にした彫塑で作品として仕上げるというものなのだ。それをある場所に居る周正天が評価採点して連絡してくるという。そして最低点の参加者がその場で脱落するという方式の能力選定なのだった。
その詳細と展開プロセスは本書をお楽しみいただくとして、どの目的地にいくことになったかを記しておこう。莉子と恵玲梨は入手した情報から推理を駆使して、その目的地を追跡しながら、このツアーの真の狙いに気づいていくという趣向である。
日本→バルセロナ→サルディーニャ島→アレクサンドリア→アテネ→アテネ→ティラナ→モロッコという見た目には出鱈目なコースを行くツアーになるのだ。アテネが2回なのはルールに従ってアテネから辿ってアテネに戻ったという次第。
ところがこのルールにも緻密なしかけが施されていたということなのだ。莉子がその謎を解くことになる。というおもしろい展開である。
ご一読ありがとうございます。
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本書で関心を抱いた事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
英BBCが最新の科学技術を駆使してイエス・キリストの顔を復元
BBC unveils hi-tech Jesus BBC NEWS
From science and computers, a new face of Jesus
By Jeordan Legon CNN
ツタンカーメン王の顔復元、3チームが競演 2005.5.13 WIRED NEWS
Putting a Face on King Tut Wired Nwes 2005.5.11
クレオパトラの墓まもなく発見か、頭部彫像など見つかる :「AFP BB NEWS」
ファラオ像発見、クレオパトラの墓か? :「NATIONAL GEOGRAPHIC」
クレオパトラ7世 :ウィキペディア
ニコラウス・コペルニクス :ウィキペディア
NICOLAI COPERNICI MUSAEUM FROMBORCENSE ホームページ
伊達正宗 :ウィキペディア
伊達正宗の肖像画 仙台市博物館 :「仙台市」
石田三成 → 石田家の事 :「京都妙心寺 壽聖院」
石田三成 :ウィキペディア
石田三成公の復元像 :「クリス・グレン オフィシャルサイト」
卑弥呼 :ウィキペディア
大阪府立弥生文化博物館 ホームページ
大阪府立弥生文化博物館 :「邪馬台国大研究」
博物館に展示の卑弥呼の人形の写真が掲載されている。
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その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
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万能鑑定士Qに関心を向け、読み進めてきたシリーズは次のものです。
こちらもお読みいただけると、うれしいです。
『万能鑑定士Qの攻略本』 角川文庫編集部/編 松岡圭祐事務所/監修
『万能鑑定士Qの短編集 Ⅰ』
☆推理劇シリーズ
『万能鑑定士Qの推理劇 Ⅰ』
『万能鑑定士Qの推理劇 Ⅱ』
『万能鑑定士Qの推理劇 Ⅳ』
☆事件簿シリーズは全作品分の印象記を掲載しています。
『万能鑑定士Q』(単行本) ← 文庫本ではⅠとⅡに分冊された。
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅲ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅳ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅴ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅵ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅶ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅷ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅸ』
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅹ』
『万能鑑定士Qの事件簿 ⅩⅠ』
『万能鑑定士Qの事件簿 ⅩⅡ』