長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

鯨統一郎著【九つの殺人メルヘン】

2010-10-08 08:56:19 | 本と雑誌

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九話の連作ミステリ集です。
有栖川有栖著【マジックミラー】の九つの密室に挑んでいるみたいですが、北森鴻が描いたビアバー香菜里屋シリーズの、パロディ的な小説のようにも感じました。
ビアバーならぬ日本酒バーが舞台。
様々な銘柄の日本酒がワイングラスに注がれ出てきますよ♪
店のマスター島は名探偵ならぬ、ただの呑ん平さん。
お客と一緒になって酒を呷り、あげく酔いつぶれて床に崩れ落ちるつわもの?なのです。
常連客のひとり工藤は、間抜けな推理をして、真犯人をなかなか逮捕できないおバカな刑事。
もうひとりの常連客山内は犯罪心理学者で、店では何故かミネラルウォーターばかり飲んでいる、変わり者で情報通の薀蓄男。
みな42歳の厄年トリオ。山内のヤ・工藤のクド・島のシ・・ヤクドシ!
そこに颯爽と登場するは深窓の令嬢然とした、女子大生の桜川東(はる)子。
彼女は実は大変な酒豪にして名探偵だったのです。
ヘボ刑事工藤が手こずる事件を、店で一升瓶を軽く開ける間に解決してしまうのです。
大学でメルフェンを専攻する彼女は、童話になぞらえて謎解きしていきます。
ちょっとアホらしいところもありますが、第九話には意外な結末が待ち受けていました。
軽目の本格ミステリがお好みの方に推薦します。
作中で出される肴はなかなか美味そうです♪
著者は覆面作家で詳細未公開ですが、何故か国学院大学文学部国文学科卒業だけは公表。
恐らくマスコミ関係者で、昭和30年代生まれの世代と勝手に推測しています。
一休さんや空海を名探偵にしてみたり、森鴎外を現代にタイムスリップさせたり、反対に現代の女子高生を明治維新の時代にタイムスリップさせたりと、一風変わったアプローチでのミステリを手がけています。
(けったいな小説を書いているとも言う?)
デビュー作【邪馬台国はどこですか?】では、独特の歴史観で歴史上の謎を解釈していきますが、これも居酒屋談義での連作ミステリ形式です。
ほどなく訪れるであろう秋の夜長の暇つぶしに最適です。


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