◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

今日の秀句/12月21日~12月31日

2024-12-21 19:32:13 | Weblog
12月31日(1句)

★猟犬の山懐を駆けにけり/小口泰與
「狩」「猟犬」は冬の季語。自然ゆたかな山懐を駆けまわる猟犬の躍動感ある姿が目に見えるように詠まれている。(髙橋正子)

12月30日(1句)

★着衣ごと皆洗濯に煤おさめ/桑本栄太郎
年末の大掃除は、かなり徹底して、身支度もそれなりにして、徹底して掃除をする家庭も多い。掃除が終わると、着ているもの一切合切を洗濯する。さっぱりと汚れを落として新年を迎えたい。その心持。(髙橋正子)

12月29日(1句)

★あけぼのの沼にやすらう真鴨かな/小口泰與
餌を食べに出かける前の曙の刻。沼にはしずかに安らう真鴨の姿が見られる。
曙の沼の静けさ、安息の水鳥の姿に、眺める者の心が安らぐ。(髙橋正子)

12月28日(1句)

★安けくて雪の浅間を拝みける/小口泰與
「安けくて」の気持ちがあれば、自然に「拝みける」になるのが人の心だと思う。静かにもどっしりと聳える雪の浅間山の美しさに畏敬の念さえ湧く。(髙橋正子)

12月27日(1句)

★稚けなきいろはもみじの落葉踏む/桑本栄太郎
「稚けなき」と言いたい気持ちになるのが、いろはもみじの葉の姿。降り積もる落葉はやむを得ず踏んでいくが、稚いものをふんでいるような罪悪感も湧く。赤ん坊の手を「もみじのような手」と呼んだ大正世代の女性たちがいた。(髙橋正子)

12月26日(1句)

★冬空を隠す大樹や城址跡/上島祥子
城跡には冬空を隠すほとの大樹が残っている。城はなくなっているが、大樹の樹齢はどれくらいだろうか。堂々たる姿。この句の良さは、詠み手が対象に向き合う姿勢の良さである。まっすぐである。(髙橋正子) 

12月25日(1句)

★冬の野に水青々と遊水池/廣田洋一
冬の野に遊水池があるのが、うれしい。冬の野に水が「青々と」している。この煌めくような青さに人は魅了される。(髙橋正子)

12月24日(1句)

★俳句一句慎ましく添え賀状書く/廣田洋一
賀状には、一言自分の近況を書き添えたりするが、端に一句を「慎ましく」そえたりする。大きく書かないのである。このあたりに心遣いが偲ばれる賀状である。(髙橋正子)

12月23日(2句)

★冬晴れや鳶は十迄数えたり/上島祥子
「鳶は十迄数えたり」は、鳶がピーヒョロと十回鳴く意味。「十」は実際「十」でなくても、そのくらいの数を言葉の彩で「十」と言うことがある。冬晴れの青空に鳶が鳴きながらゆったりと舞う姿が詠まれている。(髙橋正子)

★新宿見ゆ冬空澄める謙信平/土橋みよ
謙信平は栃木市にあって、そこからは関東が一望できると言う。名前の由来は下の※に示したことによるのであるが、「冬空澄める」に作者の気持ちの晴れやかさが読めて気持ちがいい。(髙橋正子)

※謙信平:戦国時代の頃、関東平定を競い対立した越後の上杉謙信と、小田原の北条氏康は、当時の大中寺住職虎溪和尚(こけいおしょう)の斡旋により、永祿11年(1568)9月、大中寺において和議を結んだ。
そのあと、上杉謙信は太平山に登り、兵馬の訓練を行い太平山上から南の関東平野を見渡し、あまりの広さに目を見張ったという故事から謙信平の地名が生まれたといわれる。 (栃木市観光協会ホームページより)

12月22日(1句)

★雲低く但馬は雪と思う午後/多田有花
兵庫県でも有花さんが住んでいる瀬戸内側と北部の但馬は1000m級の山を境に気候がちがってくる。瀬戸内側に雲が低く垂れると北部の但馬は雪だろうと思う午後である。情緒ある但馬の景色が目に浮かぶ。(髙橋正子)

12月21日(1句)

★霜夜なり玄関の戸を開け放ち/弓削和人
霜夜は霜が降るほどに寒い夜のこと。風もなく静かで空気が澄んでいる。日本には霜夜に玄関を開ける風習がある。いまでは、住宅環境の変化でこのような風習を知らない人も多いだろう。これは、霜除けのため。霜が玄関の扉に付着するのを防ぐため、また換気のため、また、静かで美しい霜夜の景色や雰囲気を楽しむためである。
この句はこれをそのまま詠んだ句だが、美しい霜夜の自然との一体感が感じられる。(髙橋正子)

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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お礼 (多田有花)
2024-12-23 12:19:14
正子先生
「雲低く但馬は雪と思う午後」を12月22日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
寒波の襲来で、西日本でも寒い日が続き各地で雪になっているようです。
姫路では雪は降っていませんが、北をみると雲がたれこめて脊梁山脈を覆っており、峠の向こうは雪だろうなあと思いました。
返信する
お礼 (上島祥子)
2024-12-24 12:47:12
正子先生
23日の秀区に「冬晴れや鳶は十迄数えたり」をお選びくださり、また星の評価有難うございます。
新しい岐阜市役所には展望デッキが有り、晴れた日は長良川から木曽の山々まで広い景色が見渡せます。空が広く鳶が自由に舞っている様子をしばし見ていました。
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御礼 (廣田洋一)
2024-12-25 08:31:15
高橋正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
12月24日の「俳句一句慎ましく添え賀状書く」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
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お礼 (土橋みよ)
2024-12-25 08:50:37
高橋正子先生
ご指摘・添削していただき有難うございます。
一つずつ勉強して参りたいと存じます。
こちらにおいでの時にはご案内できます。
返信する
御礼 (廣田洋一)
2024-12-26 18:17:05
高橋正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
12月25日の「冬の野に水青々と遊水池」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
返信する
お礼 (上島祥子)
2024-12-27 23:50:11
26日の秀句に「冬空を隠す大樹や城址跡」を選んで頂き有難うございました。丁寧な句評を頂き有難うございました。岐阜城址の公園に行きました。
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御礼 (桑本栄太郎)
2024-12-28 16:58:05
高橋正子先生
12月27日の今日の秀句に「稚けなきいろはもみじの落葉踏む」の句をお選び頂き、嬉しい過分なるご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
京都の住まいのある周囲には、楓(もみじ)はいろはもみじが多く、近在の道路にはいろは紅葉の落葉ばかりです。踏んで通れば何やら可哀そうな感覚になります。
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御礼 (小口泰與)
2024-12-30 08:41:32
高橋正子先生
(雪の浅間)の句を12月28日の秀句にお取り上げ頂き、正子先生には素晴らしい句評をいただき有難う御座います。
今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
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御礼 (小口泰與)
2024-12-31 09:03:37
高橋正子先生
(真鴨)の句を12月29日の秀句にお取り上げ頂き,その上正子先生には嬉しい句評を頂き有難う御座いました。
また、一年間親切丁寧にご指導を賜わり厚く御礼を申し上げます。
来年もよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
有難う御座いました。
返信する
御礼 (桑本栄太郎)
2024-12-31 14:59:44
高橋正子先生
12月30日の今日の秀句に「着衣ごと皆洗濯に煤おさめ」の句をお選び頂き、嬉しい過分なるご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
年末掃除も一度に行えば大変なので、28日29日30日と場所を分けて行いました。頭に手ぬぐいを巻き、ナイロンのウインドブレーカーにマスク姿です。終われば着衣はズボンも含め、皆洗いました。
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