久々に図書館へ本を借りに行きました。
目当てのものが貸し出し中だったので帰ろうとして
返却直後の本が並んだ棚を何気なく見ていたら
細川貂々の「ツレがウツになりまして」「その後のツレがウツになりまして」を発見。
思わず手にとって読んでみたら面白くて
借りてしまいました。
去年、NHKで高視聴率をとったドラマの原作です。
私もこのドラマは見てました。
主演が藤原紀香とネプチューンの原田泰造で
この時は原田泰造の演技の上手さに驚いたものでした。
他にも、おぎやはぎの小木さんや
バナナマンの設楽さんなどお笑いの人たちも出演してましたが
内容が内容だけにとてもシリアスな役柄でした。
小木さんなんか最初は誰かわかんなかったですから。
こちらの原作はマンガで
貂々さんの飄々としたタッチで描かれています。
ですからドラマほど深刻な感じではなく
ユーモアを交えて、ところどころ笑えるようになっています。
笑えるところがあるとは言え
うつ病になったツレさんと
ツレさんを支える貂々さんの生活はとても深刻で
「自分がうつ病になったらどうなるんだろうか」
「夫がうつ病になったら貂々さんのように支えていけるだろうか」と
自分自身に向き合って考え込んでしまいました。
エリートサラリーマンだったツレさんは
激務からストレスをため込み
ある日突然、真顔で
「死にたい」
と貂々さんに言います。
その時の貂々さんの気持ちたるや
想像するだけで胸が痛くなります。
明るくて
いつも前向きで
うつにはほど遠いと思われていたツレさん。
そのツレさんが発病して
貂々さんは初めて「うつは誰にでもなる可能性のある病気」だと知ります。
もう二度と元気な頃のツレさんは戻ってこないのだろうか。
いずれ治るよ、のんびりあせらず行きましょう。
貂々さんは自問自答しながら
手探りで看病していきます。
時にはブチ切れてツレさんの病状を悪化させることもありましたが
電車に乗れなくなったツレさんと3時間歩いて帰宅したり
一所懸命にうつ病を理解しようと努力します。
「うつ病にかぎらず
どんな病気でも
逃げてばかりいたら
治らないと思うんです」
これが貂々さんの結論です。
当たり前のことなんだけど、誰もが忘れがちな言葉。
うつ病と向き合った貂々さんだからこその、重みある言葉です。
この本は、貂々さんの一方通行ではなく
ツレさんのエッセイもたくさん挿まれています。
うつ病だった頃の心情が綴られていて
治った今では、その時はなぜあんなことを考えていたのかと疑問に思うそうです。
経験者の自分でさえそうなのだから
病人の周辺の人が理解したり、想像したりするのは困難だろう、と書いています。
この本を書くに当たって
貂々さんがツレさんの日記を見せてもらい
そこで初めて、ツレさんが自殺未遂していたことを知ってショックを受ける場面があります。
一番悲しい場面です。
「できないことは、無理しない」
「できないことは、あきらめちゃえば?」
貂々さんが、読者に向かって語っています。
また、貂々さんは
ツレさんのうつ病を
「うつ病って不思議なこと多いね。宇宙人のカゼみたい」と言って
うつ病を「宇宙カゼ」と呼びます。
うつ病特有の症状で
「もう治らないんだ。自分みたいなお荷物はいない方がいい」
と言う後ろ向き発言が出た時
貂々さんは
「病気がそう思わせてるんだよね。ちゃんと薬のんでる?」と言って
自分が厄介者なのではなく、病気がそう言わせてるんだと認識させなければならない、としています。
ここで変に同調したり
叱ったり
説教したりしてはダメなんだそうです。
「ガンバレ」は最禁句なんですって。
「がんばらなきゃ。でもどうやって?いったい何を?僕には無理だ…」となって
非常に落ち込んでしまうらしいです。
うつ病のことを書いた本はあるけど
うつ病患者の家族がどうすべきかの情報はない。
じゃあ自分たちの経験を書こう。
そしてうつ病をいろんな人に知ってもらおう。
貂々さんは何度も書き直し、泣いたりして
この本を描き上げました。
うつ病の人というより
うつ病患者の家族のための本かもしれません。
そしてもし自分が発病したら、という時のためにも
読んでおいた方がよい本でした。
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