スウェーデン映画の一つの類型として、頑固一徹な人間が新たな生活に挑むことにより、心の氷を溶かしていくストーリーがある。
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結婚生活40年、家事を完璧にこなすことを存在の証としていた63歳の主婦。夫の急病により長年の浮気が発覚。スーツケースひとつ持って、未知の生活に挑んでいく。
深刻なドラマではない。
だが、ヒロインがボソッと語る言葉が哲学的。曰く
『人の弱さは、大きな家具の周りの埃のようなもの。普段は一拭きすれば済む。しかし家具を動かさなくてはならなくなった時、家具の下にはごっそり埃が溜まっている』
家事歴40年、例えも主婦ならでは。
人生において為すことがなくなり、
自殺をしかかっている独居老人(やはり頑固者)の再生を描く、4年前公開の『幸せなひとりぼっち』も思い出される。
どちらも安心して観られるスウェーデン作品だが、シュールでとても難解な作品群もある。彼の国の映画は二極化している様相。